第23筆 温泉女子会と煩悩男子会 (改稿)
「はぁ、いい湯ですねー。」
「人工の身体なのに肌に馴染みますね。」
「ミューリエお姉ちゃん、ウィズムお姉ちゃん。温泉最高だね~♪」
今、私たちはウィレンツ=ズムロ温泉にいる。あのアジトの跡地から温泉施設にしたあの場所だ。今日は私たちが出るまで貸し切りにしてもらっている。
「結局、ウィズムちゃんがマグマを出してある意味正解だったかも? だって美肌の湯だもの。」
「そうですか~。喜んでいただけて有り難いです。ミューリエさまのおっぱい大きいですね。もみゅもみゅ。」
ルゥも興味津々で触ってきた。ぁ、そこは駄目……。
「もうー! くすぐったい~! やめてー、二人とも~! 」
「どうやったらこんな大きくなるんですか?」
「ルゥも大きくなるのかな?」
だからもみもみし続けてないで~。くすぐったいの~。
「普通に大きくなったけどね? 大丈夫、二人も大きくなるよ! 私だって揉み返してあげる! とぉーー! 」
「あははは、くすぐったいです、ミューリエさま。」
「くすぐったいよぉ~! 」
───────────────────────
そんな声が女湯から聞こえてくる。
この温泉を造るのも大変だった。内風呂と露天風呂を造り、中は昭和の温泉のような内装にしつつ、街の外観に倣い、落ち着いた色合いの塗装をしてカラフルにした。
日本お馴染みの内風呂の富士山画より何か馴染みあるものあるかなと思ったら世界樹を思い付いたのでウィズムからホログラム画像を見せてもらいながら描いた。絵が上手い人間として生まれて得をした。こんな大仕事、滅多にない。
温泉を引っ張ってくるのも大変でドワーフの職人さんを召集して一緒に造った。
そして、今俺ら男湯衆は聞き耳をそばだてて衝立の隙間から見えないか覗こうとした。煩悩全開だ。出でよ、エロ博士!
だが、あえなくウィズムから電磁波を飛ばされ俺とオロチさんは早速苦痛地獄に陥れられた。
厳しいなぁ、オロチさんよ。変態の道は長く険しいですな!
おうとも! 何としてでも覗こうじゃねえかシン!
『ウギャアァァァ!! 頭蓋骨が三回目のひび割れを起こすうぅーー!! 』
また高嶺の花にたどり着けなかった。あぁ、険しい絶壁よ。
あ、いかんいかん。一緒に入ってるリヴォーリウスさんが苦笑し、アルルがドン引きしている。
良い子は変態になれよ!
「ウギャアァァァ!!」ウィズム……許さん、許さんぞ!
良い子は純愛しろよ! 変態よりも真っ直ぐ突っ込めよ?
あ、これなら電磁波のビリビリはないよな…「ぎゃああぁぁぁ! 」 何でやるんだよ!?
「ウィズムは中々厳しいな!フハハハハ! 」
珍しくオロチさんが笑ってる。俺も思わず苦笑し、アルルとリヴォーリウスさんと笑いあった。
「シンさま。男ってバカですね(笑)。」
「ああいう所がシンくんの可愛いところなの。」
「まだよくわかんない~。」
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「ぷはぁ、お風呂上がりのいちごミルクは最高!」
つい、腰に片手を添えて飲んでしまった。つい、やってしまうんだよな~。
あ、これ?召喚したやつです。
あの電磁波って脳の覚醒率が上がるんだったよな。なんかふよふよ浮いている粒みたいなものがあるなぁ。今まで見えなかったのに。
「シンさま、見えるようになったんですね。それは大気中の魔力です。エリュトリオンのヒトたちは脳の覚醒度が基本20%です。地球人はなぜか類を見ないほど低いんです。
電磁波を目の前に通過させますね。」
目の前に黄色いジグザグした光が通過した。
「これが電磁波か?」
「そうです。α波を通過させました。それに痛みを追加しているのがウィズムエディションです。」
「痛みは余計だから削除してくれ!」
「駄目です。40%覚醒すれば電磁波を操れるようになりますから我慢してください。邪神との戦闘も余裕になるでしょう。」
「わかったよ。魔力が見えるようになったのは嬉しいことだ。」
「そろそろ出発しよう。」
「えっ、あと一泊くらい良いじゃないですか?」
「そういって駄々をこねて一週間、原因は誰だ?」
「ボクです。」
「アルル、リヴォーリウスさん、オロチさん、ミューリエ、ルゥ。そろそろ出発します。」
「出発ですか。寂しくなりますね。これを渡しておきましょう。ボルケニア家の紋章でありウェディケットを象徴するものです。我が家は双剣の名手が多いのです。法皇謁見の際に御使い下さい。」
横顔の猫、その下に波のマークと一番後ろに双剣が彫られた大きめのメダルだった。物々交換のようにすかさず連絡・転送用ネックレスをプレゼントした。
「ありがとうございます。北に進めば良いんですよね?」
「そうです。この先に森と山があり、かつて邪神が入れた亀裂があります。そこに吊り橋がかかっていると聞きました。その先にシュルハ法皇国があります。」
「それでは行って参ります。」
「頑張ってなーシン兄~!、皆~! 」
俺たちは銭湯を後にし、出発したのだった。
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