第63筆 北の大陸、再建せん
あの闇に呑まれてしまった日を狂神化とディートリヒ様は呼び俺は一週間かけて大陸を修復した。
絵の具をぶちまける機能は使えなかった。
理由は100年前までのものならば使用可能でそれを越えると使えないらしい。ウィズムに解析を進めてもらったら俺の実力不足だとか。うぅ、悔しい。
かつて闊歩していた
ミューリエの初めての魔力切れは二日酔い後の頭痛が押し寄せたらしい。
一応、二人合わせると魔力総量は兆を越えるんだけどそれでも魔力切れを起こす塔は凄まじいものがある。
塔を創るエネルギーは創世の力といって、神々の七割が住まう世界、神悠淵界の長たる
一つの世界を創る時、一回だけ貸与されるものらしく、どんなものも創れるとか。
……? じゃあさ、俺はなぜ創世の力なしで創れるんだこれ? この
答えてくれませんか、ディートリヒ様。
俺が最後の修復部分を具現化ペンキで塗りつぶした所を悠然と高見の見物を決め込み、紅茶を啜るディートリヒ様は突然吹き出した。
え、なんで吹いたの?
「ぶふぉーー!? 知るかよ! シンは異質過ぎるとしか俺は言いようがないわ!
そもそも創世の力は
へぇー、そうだったのか!
まぁ、天照様の報告待ちますか。あれほど焦らされているんだ。俺にはそれを快感と感じる性癖は残念ながらない。
「ディートリヒさんよ、俺様には気になることがあってな、創世神ガルザンさんでどんな神よ? 」
「オロチ殿、そのお方は創世の力を使うことが何時でも許されている一柱だ。しかし、どこでその
「俺がかつて救済したドレグマという世界の石碑にその名前があった。」
「なるほど。ガルザン氏は数々の世界を創った一柱だから、石碑に名前があってもおかしくない。」
オロチさんの疑問点が解けて良かったと思う。
神々の世界、神悠淵界かぁ。どんなところなのか気になる。
「シン、この旅の後に紹介状を送っておこう。あそこは一番勇者の斡旋が盛んな所だ。」
「楽しみにしておきます。もう一泊して出立しようか、皆。」
「そうだね。」
「おう。」
「賛成! 」
「同じくですぞ。」
「明日で9月ですよ、シンさま。」
「そうなのか? 早いものだな。ここに転移したのって確か5月頃じゃなかったっけ? 」
「その通りです。そして9月から11月までエルツ歴500年記念祭があります! 」
祭か。しかも今年が500年丁度とは大規模になりそうだ。
「それについては六聖神からも祝福を一つあげる予定だ。俺からは隠密のローブを渡そうと思っている。」
「それは一体? 」
「そうだな、姿を消して行動出来るローブでこれを装備しているときは武器も姿を消す。」
うわぁ、めっちゃ暗殺向きやん。
自分も姿を消してその使う武器も姿を消すから末恐ろしい代物だ。
「でも魔力の痕跡が残るのでは? 」
ミューリエの鋭い質問。
全ての魔法は魔力の痕跡が残る為、魔法を使った暗殺は難しいだろう。
「魔力を使わない構造にする予定だ。」
「盗まれたら終わりじゃないですか……。」
「問題ない。所有者を選ぶ機能を付ける。」
「じゃあ、本当に必要な人の元へと届くと。」
「そういうことだ。他の六聖神たちもユニークなものを考えたらしい。」
きゅうぅ~。ルゥが大きな腹鳴を起こし、話が中断された。あまりにも大きな音だったので、皆の視線が集まる。
「その話を長くなる~? ルゥはお腹ペコペコだよ~。」
「ごめん、ルゥ。それでは夕食にしましょう。ディートリヒ様は好き嫌いは御座いますか? 」
「嫌いなものはない。辛いものとキノコが好きだ。」
カレーライスとか良いかもしれない。
データベースを参照にスパイスを調合して林檎とチョコレート、蜂蜜を隠し味に入れる。
具材は鋭牙猪の余りと
サラダはレイピアカジキの余りを使ってツナを製作し、ツナマヨサラダに。マヨネーズがないエリュトリオンにとっては革命的だとディートリヒ様は絶賛した。
副菜はトルテン茸とフォルピ茸のハーブソテーを製作。
環境が復活したので茸やハーブがふんだんに取れた。ハーブによっては魔力回復をするものもあるらしい。今回はマルギア草、ペーテ草、クンテの実を利用した。トルテン茸はミルテン茸という毒キノコがあり、模様が二重か一重かで判断するそうだ。
二重なのがトルテン茸らしい。肉厚で食べ応えがあり、フォルピ茸はえのきに似た茸で、これも毒キノコがあって、波紋様のキノコはでパブス茸で、円の渦がある方がフォルピ茸だそうだ。
あ、もう良いって? すみません、このくらいにしておきます。
スープはかぼちゃのポタージュスープを。
かぼちゃはイサクさんが持っていたかぼちゃの種から栽培され、現在ではポピュラーな野菜の一つだとか。名称はイサクかぼちゃというらしい。
そのままの名称である。
一時間ほどで完成したフルコースを多いに喜んだのはディートリヒ様とルゥだった。
「このカレーライスとやらが特に旨い! 地球人はこのようなハイクオリティな料理を食べているのか! 」
「んま~い♪ 」
二人はあっという間になくなり、直ぐにおかわりを催促した。
はいはい、シンお婆ちゃんの料理、たんとお食べ。
ぐほっ!? ウィズムが笑いながら脳内電撃を送りつけてきた。マジ痛いから勘弁! お婆ちゃん悪い召喚術師じゃないよ~ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!
ウィズムから受けた脳内雷撃でまた脳の覚醒度が上がり原子が見えるようになってしまった。
しかもスキルなしで
後いくつかのピースを集めると自分の体を弄って若返ったり、姿の変化、透明化が出来るようになるらしい。
俺の推測だが、六聖神の試練が終わったら完全な神になれるのかもしれない。俺の普段の体は
お風呂にも入ってそろそろ寝ようかな……。野宿じゃなくても良いか……。ディートリヒ様の城を造り忘れていたから漆黒のシックなデザインの城を建てよう。
──出来た。もう23時だ。寝室も作っておいたのでそろそろ寝よう。
◇
翌朝、食堂で皆と一緒にご飯を食べていると誰かの声が聞こえた。(数キロ先からだが、昨日の脳内雷撃の影響で五感が著しく上昇した。)
『イクスァさん、本当に此処ですか? 』
『シン殿は特殊な召喚術を使うと聞いている。』
どんな人だろうか。新しい魔導具を作ってみよう。
朝食を早々に済ませ、来客が来ると伝える。
俺の太陽の紋章が刻まれたもので球体。隠蔽魔法なるものがあるそうで太陽の目を透明化させる。
こっそり飛ばして様子を見る。
『でも、イクスァさん、つい先日まで城なんて無かったですし、ましてや邪神の眷属の魔物もいないではありませんか? 』
弓矢を背負った女性がイクスァさんと呼ばれた若い男性に声をかける。
『私が従魔契約を組んだ鳥に見てもらったが、かつてあったディートリヒ様の城を再建したようだね。二週間かけて8500年前の姿を戻したのだ。敵にしたくないお方だ。
いくら壊そうが召喚術で元に戻され、対する者は冥土へと送る秘技を使う。』
『ひえぇぇ……。怖いです。殺されるじゃないですか……。』
『ラティ、シン様は優しい方だそうだ。ただ、女性には弱いらしい。』
俺は現在、ミューリエ一筋だ。女性には弱いが人並みだ。
『狙われないですよね? 』
狙わないし、困ったなぁ。俺から出迎えるか。
太陽の目を戻して城門を開く。
「ようこそ、ラティさん、イクスァさん。」
「え!? なんで来るのがわかったんですか!? 」
俺が直々に出迎えたのと気付いていたことに二人は驚愕して、足が止まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます