第5筆 シャルトュワ村へ (改稿)
シャルトュワの村へ向かうことにした俺たちは道中、スライムやゴブリンを倒しながら走った。
夜になるとスケルトンが土から這い上がり、村の門も閉まるそうだ。
スライムを倒す度、ミューリエからあのキラキラした目で睨まれた。睨んでいる顔も可愛いな、そう怒らんでくれ。
ゴブリンはというと緑っぽい肌をした人間の子供程の身長、だらしない身体だったり、細く引き締まった身体を持つ個体など様々だった。
生殖能力が高く寿命も短い。基本的に群れで活動するのです、とウィズムから聞いた。
なぜかミューリエはゴブリンを倒す度、ニコニコとした表情になった。
ゴブリンに何か嫌な思い出があるのかもしれない。聞かないでおこう。
そんなモンスターたちを斬撃の衝撃波で斬り倒すと身体が砂粒のような粒子になって空に消えていった。消えたあとお金と素材が落ちた。
ウィズム曰く、
『エリュトリオンにおける全ての生き物、植物たちは炭素と水と魔力をメインとした様々な物質をもって構築しているのです。
死んだ際は魔力は世界に還元し、循環するのです。魔力以外の物は死んだものが持っていた所有物とお金に変わります。』
更に魔力総量は上げられるようで、俺は
「もう一つ質問。銀行ないの? 」
「銀行は商業ギルドが担っています。」
「どこにあるんだ? 」
「どの市町村でも一つ必ずあります。
お金を管理するための異世界があってゴルディ=エオレンという世界です。
なお、商業ギルドの人間がお客様のお金を私利私欲に使うと即座に公開処刑されます。」
ひえぇ……おっかねぇ。どの世界でも人のお金を横領する奴がいるんだな。
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シャルトュワの村の門前に着いた。
門番らしき人物から
「目的はなんだ?日も暮れるからそろそろ門を閉ざすぞ。」
「俺たちは冒険者ギルドの登録に来たんです」
「わかった。通そう。君らが最後の客となる。それと冒険者ギルドは今日の受付を終了しているから宿を取ることをおすすめする。」
「ありがとうございます!」
「おう、長旅ご苦労さん。」
門番は20代半ばの茶髪、蒼い目で爽やかな笑顔が特徴的な青年だった。
石レンガの街並みの村で、早速宿を探して
「青葉のそよ風亭」という宿屋に行き着いた。
放火魔が現れそうな名だ。
多分そんなことは無いだろう。チェックインを行い、二階の窓側の部屋に泊まることになった。
宿泊料は1000リブラ、小銀貨1枚だった。
最近はリブラの単位より硬貨の枚数を言うようになってきたそうだ。
「ふふん、お金は結構あるんだよ♪」
とミューリエが自慢気に語っていた。ルゥも小さく無害と判断されたため宿屋の亭主から了承が下りた。
「可愛いのぉ ナデナデ」
「きゅう!」
ウィズムのデータベースより
お金の単位がリブラで円換算すると
石銭=1円、鉄銭=5円、小銅貨=10円、中銅貨=50円、大銅貨=100円、小銀貨=1000円、中銀貨5000円、大銀貨=一万円、小金貨=十万円、中金貨=100万円、大金貨=1000万、白金貨=1億円、ミスリル貨=10億円、赤金貨=100億円、黒金貨=1000億円に換算。
サイズは小が一円玉サイズ、中が百円玉サイズ、大が500円玉サイズとなる。石銭《せきせん》、鉄銭は一円玉サイズで、白金貨、ミスリル貨、赤金貨、黒金貨は500円玉と同じサイズ。
ウィズムより一言
『日本より細かいですが、以外と良かったりするものなのです。』
通貨単位とサイズを忘れそうなので、召喚用画用紙に書き込み、召喚して出てきたのがまさかのコピー用紙だったのでびっくりした。
召喚に使う画用紙をメモに使えないか試してみたが、消えてしまい、召喚にしか使えないことがわかった。
しかし、描くには表現しづらいものを単語にしたものは大丈夫なようだ。
それと機能注釈は大丈夫みたい。
メモはもちろん日本語で書いたが、見たこと無い言語に変わっていった。
世界の運行システムによる変換だそうだ。でも不思議と読める。
二人には地球産の紙は上質で良いね~って言われた。
エリュトリオンでは羊皮紙が最高品質だそうだ。
もしかして最初に召喚したあの刀、地球産の神刀とか神器じゃあるまいな。
そう思い、鞘から半分出し、刀を眺める。
ベッドに座った俺の顔が写る。
波打つ波紋が打たれており美しい。
銘らしきものも刻印されているが、暗号のような文字で良く分からなかった。
カチッと閉じるとシンプルなデザインだった鞘に彫刻と蒔絵が出来、柄に紐が紡がれ、結ばれていった。
――なんだこれ?
あまりにも奇妙な現象が起きているのにも関わらず不思議と怖い感じはなく、あぁ、これはミューリエが言った上位互換の現象が起きたんだな、と思いミューリエに聞こうとしていたら、隣で見ていた彼女が青ざめた。
確かに気味が悪いもんな。
「キャァーー!! 何ですかその現象! 気持ち悪いです!!」
バタン。彼女がベッドから崩れ落ち倒れた。地面に頭をぶつけないようにすぐにキャッチ。あ、ヤバい気絶してる。
~30分後~
――リンリン。リンリン。
亭主だろうか?ベルが鳴る。
「夕食が出来たぞ。シン殿、ミューリエ殿はいるか?」
おいおい、この状況で呼ばれるとは!急いでミューリエの肩を叩き、起こそうとしたが
「入るぞー。」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」
ガタッ。
倒れた女性に介抱する俺。
亭主にはどんな目には写っただろうか?間違いなく良くない方だ。
「嬢ちゃん、大丈夫か!?大丈夫か!?」
「シン殿なんか変なことしたのか!?」
「違います、違いますって!」
_______________________
夕食を食べながら事情を説明すると亭主が
「ワシはそんな話は初めて聞いたな。カァちゃんはどうだ?」
奥さんが出来たてのスープを注ぎながら
「そうねぇ、アタシはで生き物のようにうごめき、ひとりでに強くなる魔剣の噂を一度だけ若いときに聞いたけどねぇ。
本当かどうかわかんないわねぇ。
私たちも30年前の話になるけど──」
聞けば亭主夫婦は若い頃、冒険者だったという。その話はSランク冒険者に聞いた話だそうで、昔のことだから信憑性は断言出来ないと言われてしまった。
今まで気づかなかったが良く見ると亭主の右手が無い。
話のお礼に義手を作ってあげよう、と思った。
スープを食べ終わったミューリエが
「うーん、シンくんが画竜点睛《アーツクリエイト》で召喚《サモン》したものは私にも良く解りません。ただ、コスモ様も不思議な能力だとおっしゃっていたので召喚したものは自動アップデートするのかもしれません。」
と返答をもらった。
俺もアランガ豆というひよこ豆に似た豆が入っているスープを食べてみると疲れが一気に飛んでいった。
奥さんが治癒魔法をかけた料理だそうで、治癒魔法をかけた料理は疲れや傷を癒す効果があるそうだ。
スープの他にサラダや何の肉かわからないがソテーとデザートにパイを食べた。
こんな異世界人にも美味しく感じた程だ。
さて、お風呂に入ろうかなと思ったがお風呂が無いことに気がついた。
ミューリエに聞くと富裕層しかお風呂に入れないらしく、お風呂の代わりに洗浄魔法を使うそうで俺は魔法が使えないのでかけてもらった。お風呂に入ったあとのスッキリ感だけが残った。
残るは寝るだけだが、あの部屋ベッド一つしかないぞ。
俺一緒に寝ちゃって良いんですか!?
これはどうなるんだ、一体!?
俺結構えっちな人間ですよ!?
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