第1章 南方大陸 ~火の神~ 編

第2筆 画家はパートナーと出会う(5回改稿)

 ふと、目が覚め、目の前に見えるのはだだっ広い平原。落とされた衝撃で身体中が痛くて動きようにも辛い。首を少し上げて目の前を見た感想だ。あの高齢者ドライバーにぶつけられて被った痛みよりかは幾分もマシだ。何もない平原と呼ばれそうな場所であった。


「ちっくしょう、なんなんだ、全く。」


 高齢者ドライバーに飛ばされ、コスモから異世界に飛ばされ、何かと飛ばされることに縁がある俺は愚痴をこぼした。こんな縁いらない。

 あと、コスモの荒っぽいあの飛ばしかたは一体なんだよ。俺が読み漁った小説はあんな感じではなかった。異世界に飛ばされたのは嬉しくもあるが落とされて転送されるのは気に入らない。

たが、頼まれ事を断るのも自分の性格的に好きじゃない。やってやろう。


「大丈夫ですか、シンくん?」


 転移によって落ち、寝っ転がった状態で動けないの俺の視界にコスモに引けをとらないかなりの美貌をもった少女でとても可愛らしい声が聞こえた。

 前屈みに俺を見つめる彼女。思わず一目惚れした。俺の好みのタイプの特徴だった。

 俺は女性に弱い所がある。こんな可愛い娘と付き合いたいなと直感した。

 そんな彼女の特徴は二重で涙袋あり、髪色がプラチナヘア、銀色、毛先が水色、オレンジ、黄緑のパステルカラーに染まったロングヘアー。

 一言で表すと虹色の髪を持っている。

 何かの影響でこうなっているのか気になるので後で聞いてみるか。

 オッドアイで夕陽を閉じ込めたかのようなオレンジ色の右目、さざ波を彷彿とさせるキラキラした水色の左目。

 身長は160㎝程だろうか、プロポーションも抜群で程よいサイズの胸と括れ、美脚。

 衣装は動きやすい格好でスカートにはスリットが入っており、靴は茶色のブーツを履いていた。

 はぁ。ため息が出るほどこの娘美しすぎる。


「あぁ、何とかね。それより君は誰だい? 」


「あ、すみません。申し遅れました、私の名前はミューリエ・エーデルヴァイデと申します。エデンの一族出身の女神です。呼び捨てでも大丈夫ですよ。」


 それよりもが気になったが、ミューリエから聞かないで、という顔をされたので聞けなかった。

 来たるときがあってそのときに話してくれるのだろうか?


「俺は神を信じないけど、君には惚れたよ。」


「シンくん、冗談は程々にしてください。」


 そんなことを言いながら漸くようやく体の痛みが消えた俺は立ち上がった。気付いたら自分も胸当てと腕、膝に鎧を着ていることに気がついた。

 これを着ていたから転移で落ちた衝撃が少なかったと推測した。これはいわゆる魔法道具マジックアイテムだろうか?


「シンくんが来ている鎧は魔導防具マジックアーマーといって落ちた衝撃を防いでくれたんですよ。他にも機能が一杯あるんですけど、使っているうちにわかってくると思います。」


「しっかし、まあ、ミューリエ。この世界はどんな所なんだ?」


「では私、ミューリエが詳細について語りましょう。この世界の名前は【エリュトリオン】。先程いた唯一世界ユニバースワールドから程遠い座標にある世界です。

 六聖神という火・水・風・土・光・闇の六属性を統べる神がおり、人々と寄り添って暮らしています。南方大陸、西方大陸、中央大陸、北の大陸、極東の島があります。

 種族は神、人間、ドワーフ、ケット・シー、エルフ、妖精、聖霊、霊獣、神獣、獣人族等など様々です。

 中央大陸には世界樹があり、宇宙のネットワーク地点(アンテナ)とも言えるものです。

 技術面はドワーフの国と魔法公国が一番進んでおり、他は地球でいう中世ヨーロッパ程のレベルとなります。ざっとこんな感じです。

 一言で言うと剣と魔法の世界と言ったら分かりやすいですね。」


「質問良いか? 」

「何でしょう? 」

「氷属性と雷属性と癒しに関する属性はないのか? 」

「氷属性は水属性の中に、雷属性は風属性の中に分類されますよ。」

「なるほど、わかったよ。」


「それとシンくんについてなんですが、この世界に来た際にが起こりシン・イーストサイドとなりました。神やそれよりも上の存在でない限り、この法則には逆らえません。」


 ん? 今、名前の書き換えが起こっただと?


「ミューリエ、二つ質問がある。」

「どうしました? 」

「さっきから気になっていたが、髪の色と名前の書き換えについてなんだけどどういうことだ? 」


「私は生まれつき加護や祝福を受けやすいスキル〘万物天恵〙を持っています。受けた祝福や加護の影響、そして全属性が得意なので虹色の髪なんです。

 名前は順応しやすいようにした配慮です。」


 納得できる返答だ。シンジ・トウゴウってエリュトリオンの人たちには読みにくいだろう。そこまで愛着ある名前とは思っていなかったので好都合だ。

 でも微妙だし、改名したいから考えておこう。


「次点に魔法が使えない代わりにコスモ様が見出した画竜点睛アーツクリエイトが使えます。この能力はユニークスキルで描いたものが召喚される術です。手や目線で描くことが出来ます。シンくん以外の人は使えません。何故なら生まれつき持った能力だからです。地球では媒介とするエネルギーがないので残念ながら無用の長物でした。」


 今まで使えなかったと聞くとなんか勿体ないなぁ。目線で描けるのは優秀だ。

 そう考えていると彼女はポーチから何かを取り出した。


「最後にシンくんがいた地球で言う人工知能AIを搭載した魔導具マジックアイテムをプレゼントします。どうぞ。」


「魔法を使えないのは最悪だけど、ありがとう、ミューリエ。」


 ミューリエは魔導具マジックアイテム【ウィズム】をシンに手渡した。

 受け取ったウィズムを起動させた。


『ハーイ!久しぶりね、シン。』

「何でコスモの声が聞こえるんだ?」


『ウィズムは私の知識とリンクしてるの。でも基本的には声をかけないであげるわ。ウィズムちゃんは私のオーダーメイドだから大事に使ってね☆』


「お、おう。」

『以上がマスター・コスモからのメッセージです。ボクがウィズムです。宜しくなのです。』


 まさかの僕っ娘のロリボイスかよ。やっぱりアイツコスモのロリ状態の影響受けてるし。


「宜しく、ウィズム。」

『宜しくなのです。』


 キャラの濃いAI? が増えたシン一行。


「ところでこれから何処に行くんだ?」


「今から私たちはここ、名も無き平原を抜け、始まりの平原へ向かいます。その後シャルトュワの村で冒険者登録をします。」


 冒険者がいるんだね、この世界。どんな人たちだろうか?

 こうして始まりの平原へと向かうこととなった。

 この平原にはモンスターも人も俺たち以外にいない。何故だろうか?

 新たな仲間と出会い、そろそろモンスターに出会いたいと思うシンであった。


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