第3筆 名も無き平原の門番 (2改稿)


 名も無き平原はその名前の通り、平原以外何もなかった。

 女神ミューリエの案内に従いながら周りを見渡したが、自分たち以外誰もいなかった。せめてスライムとかゴブリンとか見たいのだが………いない。

つまらないなぁ。


「ミューリエ、どうしてここには誰もいないんだ?」


「ここにはコスモ様がかけた大変強力な結界がかかっており、コスモ様が許可した人やモンスター、物しかこの名も無き平原に入ることは出来ません。


ちなみに貴方が108人目の来訪者で今までの人々全員は、と対峙し、ほとんどの方は死んでしまいました。コスモ様は貴方で最後にしようとお思いのようです。


また、この平原は結界の影響で地図にも載らず、ここだけがぽっかりと空いた真っ黒な奈落の穴だとエリュトリオンの人々には見えています。」


 煩悩の数じゃないかよ!?とツッコミを脳内で入れ、107人の功労者に合掌をした。

神は信じないけどその敵のせいで彼らの人生はどれだけ振り回されたのか。その人生は彼らにとって幸せだっただろうか。疑問が止まらないがこの辺にしておこう。

 ところでとは一体何なのか?


「あ、すみません。説明してなかったですね。かの敵とはこの世界、エリュトリオンを統治する最高神です。今は邪神と呼ばれています。シンくんにはこの神を倒して欲しいのです。」


神殺しゴッドキラー、それが俺の使命ってことか。中々面倒だが、頑張るよ。」


 そんなことを話しているうちに50m先から結界というに相応しい白い半透明な光の壁が見えてきた。

 その先に名も無き平原と変わらない平原が見える。壁の前についた時、空から鋭い視線を感じた瞬間、彗星の如く猛スピードで

 轟音を轟かせ、着地したのは全長20m程の赤いドラゴンだった。着地点にクレーターが出来てもおかしくないのに何事もなかった。


「ミューリエ殿、久しいな。お前さんがシンか。」


「我は名も無き平原の守護者。ここを出るには呪文が必要となる。ミューリエ殿、唱えてみせよ。」


「お久しぶりです。では失礼して。

 汝、宇宙そのものの眷属が一人。汝が願いに応えたまえ。【解錠オープン・ザ・ドア】」


 ミューリエのオレンジ色の右目が赤く光る。唱えた後、ドラゴンが変化し、竜が何匹も彫られた10m程の赤い半透明なドアが構築された。

 中央に配置されたベル代わりの彫金のドラゴンが顎をパクパクなせながら、


『あの邪神にはうんざりしてるんだ。だからシンよ、倒してくれ。』


 そう頼まれた。はい、と俺は答え、扉をトンッと軽く触れるとスウゥと滑らかに開いた。目の前には植物が生い茂る平原が見えた。

 やっと始まりの平原についたのだ。

 俺はまだ何もしていないんだけど………。


『ふん、運命の子か。最後の希望の力、期待してるぞ。』

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