第4筆 画家は初めての討伐をする (改稿)


名も無き平原を抜け、始まりの平原に入った。

 平原には探しに探した後ろ姿のスライムを500セルク先に見かけた。

序盤の敵といえばスライムだと俺は思う。


 うし、早速倒してみよう!

 俺はスライム目掛けて走った。俺は視力が高いが足が遅い。スライムぐらいなら間に合いそうだ。


『シンさま、画竜点睛アーツクリエイトを使用することをおすすめするのです。』


 相変わらずのロリボイスでウィズムが頭の中に直接語りかけてきた。


「ウィズムか、解説頼む。」


『このロリボイスはボクは気に入っているんですよ。

 まずは、画竜点睛アーツクリエイト起動、と唱えるのです。』


 おっと聞こえていたのか、発言には注意しよう。


「了解、【画竜点睛アーツクリエイト】起動。」


 その瞬間、目の前に半透明の画用紙が現れた。


『その召喚用紙に絵を描いてみるのです。』


 素手や目線でも描けるのを思い出し、とりあえず指先でシンプルな意匠の全長約1セルクの刀を描いてみる。

 すると描いた刀がポワァと光り、出現した。

 これが画竜点睛アーツクリエイト、文字通りの俺の絵が召喚の仕上げになるのか。

そう思いながら

 出現した刀を利き手の左に持ち替え、


「とりあえず一閃してみよう。」


 追い付いたスライムの前で立ち止まり、下段から切り上げた一閃は光の波動となってスライムは跡形もなく消えた。スライムがいた場所には草花が焦げた跡だけが残った。


「嘘だろ……!威力強すぎやしないか?」


 刀を納刀し、あまりの威力に自分でもビビっていたらピコン、と通知音が鳴った。


『シンさま、報告なのです。』


  ~世界の声です~

 剣技スキルがLv.0→Lv.10へ上がりました。

 一閃はレベル10からの技ですが、特例によりシン・イーストサイドは無条件で使用可能です。

 召喚術スキルがLv.0→Lv.10へ上がりました。

 描写スキルがLv.0→Lv.10へ上がりました。

 観察力スキルがLv.0→Lv.10へ上がりました。

 光波スキルがLv.0Lv.10へ上がり、カンスト。

 光滅スキルに進化しました。Lv.100が上限となります。

 初級鍛冶スキルがLv.0→Lv.10へ上がり、カンスト。中級鍛冶スキルへ進化しました。


 ウィズム様の要望により、上記のスキルを削除、シン・イーストサイド様の行動に合わせて入手出来るようになりました。


Lv上昇がE~Sランクへ変更統一されました。

職業名は下級~神級までです。

通知も希望するもののみ聞くこととなります。以上、世界の声でした。


 そんな声が頭の中に響き渡る。これは一体何なのか?レベルアップ?わけがわからんぞ。ゲームみたいで面白いのは確かだが………。


『シンさま、それは世界の声と呼ばれるエリュトリオンの運行システムです。ボクの要望で分かりやすく解いてもらっているのです。

あと、めんどくさいのでレベル制度を廃止してもらって下級から神級とE~Sランクに変えてもらいました。』

「なるほどなぁ。ごちゃごちゃしてるからまとめてくれるのはありがたい。」


しかし、世界の運行システムのあり方を変えたか。なかなか斬新なことをしてきた。


「ちょっとぉ~~!! シンくん! いきなり走り出したからびっくりしたよ! あと、シンくんの技は全て上位互換されるからああなっちゃんですよ~」


 息を少々切らしながらミューリエが叫びながら走ってきた。


「私、スライムが可愛くて好きなんです。モチモチしてて夏の暑い日はぎゅ~ってするとひんやり気持ちいいのに……シンくんひどい!」


「ゴメンゴメン、あんなに威力高いとは思わなかったよ。お詫びにスライムを作っておくからさ。」


 すぐに画竜点睛アーツクリエイトを起動。画用紙でスライムを描きあげる。

 先程と同じ様に描いたものが出現した。

 しかもこのスライム、中々可愛い。水色のゼリーのような見た目、眼もクリクリで大きく☆のような虹彩がある。

触るとミューリエが言ったとおりモチモチしている。撫でれば恥ずかしそうに顔が赤くなる。

更に小さな腕と手があり指は四本。手は描いてないんだけど、上位互換?


 そのちんまい手で花を摘んで遊び始めた。

集めた花を俺にプレゼントしてくれた。

俺はもらった花を鎧の下に着た服の胸ポケットに差した。

 逆に罪深い気持ちになり始めたぞ、こっちは。


「だからシンくん、スライムは可愛いんですよ。もともと大人しいモンスターですし。でもシンくんが召喚したこの子、腕がありますね。他のスライムにはない特徴です。」


 顔をぷくーっとフグのように頬を膨らませて怒った。あぁ、可愛い。


『シンさま、ボクのデータベースにもないのです。進化させてしまったみたいです。』


 おいおい、マジかよ!?俺の│画竜点睛アーツクリエイトは召喚したものをどんだけパワーアップさせるんだよ!?しかしこいつ、可愛すぎる。名前がないからつけることにしよう。


「とりあえず名前をつけるか、みんなどうする?」

「きゅうーー?」


『賛成なのです。スライムですし、スラ太郎に……』

「ウィズム、ダサすぎるから却下。」

『え、ダサい?ダサいって何ですか?シンさまの脳にますね。えっ……。』


 ウィズムにネーム名付けセンスが無いことが発覚した。勝手に俺の知識と自分のデータベースを繋いで意味を確認したようで、エコーのようにダサい、ダサい、と呟いて凹んでいる。最後に泣き出した。そこまで凹むな、ウィズム。

 あと、幼女であっても女の子を泣かすのは嫌なんだが。泣き止んでくれ。


「ウィズムちゃん泣かないの。そうですね、私はルゥ、という名前でどうでしょうか?」

「ミューリエ、それにしよう。この子の名前はルゥだ。」


『ひっく、ひくっ………ルゥちゃん、よろしくなのです。ひっく………。』

「きゅうー、きゅうきゅうー!!」


 泣きすぎてしゃっくり起こしてるし。ってかAIでもしゃっくり起こすのか。びっくりだ。

 ルゥが慰めるように俺の周りをぴょんぴょん跳ねていた。

腰のポシェットからウィズムの本体である魔導具マジックアイテムが飛び出した。なんと、そこからホログラムで幼女の姿が映し出された。

 白いワンピースを着ており、腰まである黒髪、

緋色の目を持った幼女だ。

 しかもその姿はコスモそっくりときた。

だが、黒髪なのがコスモと違うが、変装?


「まさか、コスモじゃないよな?」

『違うのです。ウィズムなのです。ルゥちゃん慰めてくれてありがとう。』

「きゅうぅーー!」


『シンさま、お願いがあるのです。皆様にも触れられないし、この状態が窮屈なので身体を作って欲しいのです。』


「ウィズムちゃんの身体を作るにはドワーフの方々が向いているでしょう。この平原の先にシャルトュワの村があり、村を出た先にある森を抜け、その先に洞窟があります。その洞窟の先にドワーフの国がありますね。

そのためには自由に渡航出来る冒険者ギルドの冒険者カードが必要となります。当初の目的である冒険者になる為、ギルドがあるシャルトュワの村へ向かいましょう。」


 目的が決まった。

 ・シャルトュワの村で冒険者登録をする

 ・ドワーフの国でウィズムの身体を作る。

 もう夕方になってきた。昼食も食べてないし、空腹だ。なるべく急ごう。

 ちなみにルゥはサイズを自在に変えられるようで、ミューリエの右肩にちょこん、と飛び乗った。

 さあ、旅の再開だ。


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