第25筆 シュルハ法皇国 (改稿)
夕食にした
肉はほどけ、旨味とワインの酸味が肉を更に引き立たせる一品だった。ワインは中央大陸の潮風に吹かれ育ったハシュール産ワインだ。
この世界のお酒は15歳から飲めるらしい。早いものである。でもルゥはぐびぐびと喉越しよく飲む。モンスターだから良いのか?魔人族だし。
特に貴重なヒレ肉をどうするか取り合いになりかけたので明日ステーキにして分けて食べることにした。
翌日、この山の山頂というか、邪神の影響で平坦になっているところがあり、リヴォーリウスさんが言った亀裂が見えるという場所に来た。
……かなり巨大な亀裂だ。幅50m、小石を落としてみたが音が聞こえない。結構な深度がある。
隣に吊り橋があるが木製かつぼろぼろで今にも崩れそうだ。
こんな橋渡りたくもないね。「スパッ」と切り離して石橋を造ることにした。
「渡らないのか?」
「あれじゃ、危険過ぎますから今から石橋作ります。ウィズム、サポート頼む。」
「了解しました。」
【具現化ペン】を使う。本来は支保工が必要だが、俺には足場さえあれば良い。
足場を先に作ったら輪郭を描く。次に石テクスチャを選んで塗る。召喚と唱えると全て石が召喚され全てすっぽりはまり、輪郭線は消える。これでアーチ形石橋の完成。ざっと2時間くらいか。ベタ塗りが時間かかってしまった。
早速石橋を叩いて渡る。大丈夫そうだ。幅100m程の橋だが上手く行った。飛んでも跳ねても大丈夫だ。グルガルマーで重力一万倍で叩いてみても「カァーーン!」と跳ね返した。自動成長機能がきちんと働いている証拠だ。手すりつきで切られても壊れないだろう。
「完成したよ。」
「やっぱシンの召喚術は凄いなぁ! 」
「ありがとうございます。」
後に絶対に壊れない橋として有名になり、法皇がこの橋を馬車で通ってウィレンツ=ズムロ温泉に向かったという。
法皇は馬車が通ってもぐらつかないこの橋を気に入り
更に数年後シンはこっそりサインを入れていた為、それを発見したこの橋の整備工がシンの数多の偉業を纏めた書物、『シン・イーストサイドの伝説』に登録申請した。
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橋を渡り山を下ると見えてきた。大きな街だ。水脈という水脈が集まり巨大な湖を形成している。その湖に建てられた城を中心とした街があった。
暫くして城門に近付いた。
この距離から見て城は滝が流れており、流れた後に虹がかかっている。
水と六聖神信仰の国、シュルハ法皇国中心地の都、メロル=シュルハに着いた。跳ね橋を渡ると門番二人がハルバードを持って通せんぼされた。
ハルバードって門番のマストアイテム?
「ここはシュルハ法皇国が中心の都、メロル=シュルハである。」
「君たちの目的はなんだ? 通行証、または冒険者ギルドのカードがあれば確認しよう。」
冒険者カードと火のエレメントストーン、ウィディケットの紋章、ドワルディアの紋章を見せた。
「Aランク冒険者だと!? ウィディケットの紋章、ドワルディア王直々の紋章つきの手紙、しかもアウロギ様が認めた証である
「Aランク冒険者パーティー、『アルウェン=ラストセイヴィアス《異界の救済者》』です。俺がリーダーのシン・イーストサイド、第108代イカイビトで神級召喚師です。」
「なんと!? 法皇様が仰った予言通り! 」
「最後のイカイビト現れん。その者失われし技術、召喚術を携えたものなり。」
「そう、それだ! 直ぐにお通しするぞ! 大変失礼致しました! ご一行様! 」
「急ぎお通しせよ!! イカイビトご一行様のお通りだ!! 」
ん?理解が早くて助かるが法皇は予言が出来る人なのか?
街行く人達が道を開け出したぞ?
「皆さん道を開けなくて大丈夫ですよ? 普通にしてください。」
「イカイビト様にそんな粗相出来ません。」
「困ったなぁ。宿と法皇様の謁見許可が欲しいのですが教えていただけますか?」
「門衛長、イカイビト様が宿と法皇様の謁見許可が欲しいとのことです。」
「了解致しました! ここから真っ直ぐ行きまして右側に宿屋が御座います! 明日謁見出来るよう土下座してでもお願い致しますので! 」
『ありがとうございます。』
皆で感謝の意を表し宿へ向かった。所々水路が敷かれており、小さな石橋が架けられ、飲めそうなくらい清らかで透明な水が流れて続けている。というかこの街、全体的に白いのだ。
その水路を目線で辿ると城から流れる滝に繋がっている。圧倒的な治水技術、水道橋、循環度の高さは地球で謳われた水の都、フィレンツェを彷彿とさせた。
宿もまあ、透けるように白くて水との調和率が高い。看板に《流麗たる御影亭》と書いてある。
入るとホテルのエントランスのような広さで若い男女二人が応対した。自分たちのことを伝えると半額で良いとサービスしてくださったのでお礼に家電をプレゼントした。
お風呂もあってトイレがある!?
この世界に来て初めて見た!しかも石造りの水洗とは!
今までトイレ事情は俺が召喚したトイレと浄化魔法でどうにかしていたんだがここまでとは!?
水がたゆたう都恐るべし。
お風呂も満喫したところで夕食がまあ、豪華なこと。7品もあって一人一人に給仕が付いた。
ルゥ、がっつくな、はしたない。
以外とオロチさんが丁寧なテーブルマナーで食べている。
ウィズムは慣れない手つきでフォークを度々落としていた。がんばれ
言い過ぎたから抱き枕にしてやろう。かなり顔を真っ赤にして給仕さんが心配してるじゃないか。
「シンさまが悪いんですからね。」
部屋に戻り神力の訓練をした。
なぜこの訓練が必要なのか?
「それはだな、地球じゃ魔力が使えないだろ?
魔力が無い星や世界の代替エネルギーでもあるし、神器を使うには相応の神力が必要となる。
神力がなかったら一振りする度に寿命が一年減ってやがて死ぬ。人が持つには余りにも贅沢で持て余す、難しいものなんだよ。
だけど、シンが召喚した神器クラスの武器は魔力に依存する。神の手が加わっていないから神力は消費しない。まあ、神になれば別なんだがな。
シンは神社生まれで神と縁があって祝福を受けている。祝福については後々教える。今日は訓練をする。」
俺は
神力エネルギーが肉体の限界を越え神と同等になる。その為肉体が思念体状態へと変換される。
俺は座禅を組み、瞑想を始め、精神世界へと魂を移す。
「うし、行ったか。デコ触るぞ。」
オロチさんが額を触り俺の精神世界にやって来る。
ここは真っ白な立方体の部屋にいる比喩が近い。
俺はゆっくりと瞼をあげる。目の前に
「んじゃ、始めるか。今日は五分な。
俺は
掴んだ瞬間閃光が走り、鏡に移ったように俺を模した黒い影炎が現れる。
先手を打ったのは影炎だ。俺を突こうと【天穿ち】をしてきたのを払って手繰り寄せ鍔迫り合いをする。
「ギギリリィギリリ」と刃がぶつかり合う。俺が少し押してはね飛ばす。
影炎が後ろずさんだと思ったら俺の背後に一瞬で周り遠心力を活かした回転一閃をしてきたのに対し
背中に回したまま膝を少し曲げバク転切りをする。回転中、影が後ろに後退し、その避けた力を反転、ジャンプ攻撃。
俺は剣戟を飛ばして影の
「ふむ、3分18秒か。剣戟を飛ばす際に無駄があった。あそこは真っ直ぐ切るのではなく捻るように切るんだ。変則的な動きが重要な時もある。
縛られるじゃねぇ。自由に攻撃を楽しめ。」
「了解。」
あれか? 黒い影はな、何というか人の闇の部分だったり、煩悩だったり色々らしい。100%純粋な人間なんていない。少々の悩みとかでもあの姿になるそうだ。
影炎という魂の半身と戦うことで己を磨く。それによって神力が増大する。死にかければ死にかけるほど能力値が跳ね上がる。神は全てを投影し返す。それを訓練の形にしたものだ。
「今日は終わりだ。明日は俺様とやろう。」
「お願いします。」
数分座禅を組み、目を閉じて再び開けば元の世界に戻る。右手を腹に突っ込み、
開幕と終幕を言わないと暴走するらしい。
振り返るとルゥとウィズムとミューリエがタブレットで見ていたようだ。
三人は精神世界に入ることは出来ない。
この訓練、どっと疲れるんだ。本来人間が使うものじゃないエネルギーだから精神的な疲れが大きい。
もう寝ます。
寝るときはルゥとオロチさんが一緒になって寝る。
俺は左にミューリエ、右にウィズムにサンドイッチにされ寝る。
俺はいつもミューリエの寝顔を堪能しながら横向きに寝るのだが、今日はウィズムが無いまな板を背中に擦り付けてくる。寝れんわ。更に絡み付いてきてがっちりホールドされた。「すぅ、すぅぅ。」と寝息を立ててもう寝てる。抱き枕にされた。女の子二人に囲まれて寝るなんてこの人生でしかないだろうから俺は微笑みながら眠った。
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