第49筆 丘陵地帯の緑化
うん、ぴったりだ。曜変天目の刀身と対照させて純白に桜を散らしたデザインの鞘を描く。
「【
『ありがとうございます。鞘の中は薄紅色の部屋ですよ。』
「鞘ってブレイリアでは部屋になっているのか。」
『卵形の部屋はリビングみたいなもので鞘はそれぞれの個室です。人間に例えるとシェアハウスです。』
「分かりやすい説明ありがとう。アイテムポーチにしまっておくね。」
『はい。』
さてと、出発するか。幸いにもブレイリアにいた時は時間経過が止まっていたようだ。皆が待っている部屋に入る。
「シンくん、ソルドレッドさんは? 」
「帰りました。プレゼントに刀を貰いました。多分スキアゼルの配下を探しに行っていると思います。あれ、スキアゼルさんは? 」
「スキアゼルは魔界フォルルンデに帰った。数分くらい前に自分の剣が強くなったと喜んで戻ったな。」
「剣の世界、ブレイリアに行って来ました。そこで新たな武器、ウルトリムを再召喚して手に入れたんですが、同時に皆の武器を再召喚したので更に強力になったと思います。」
「ほう、良いじゃないか。そろそろ行くか! 」
オロチさんの一声でスレグトを後にして出発した。
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「次は大穴ヨエル湖と小穴ゴエル湖を目指します。そこを越えると天嶺門があります。」
「ウィズム、その湖って何だったけ? 」
「これはですね、浮遊島の材料になった半円の大きな岩塊1つと小さい方が12個抜き取られて大穴が開きました。そこを魔法で埋め忘れたので湖になりました。ここから先は丘陵地帯の荒野になっています。」
「8500年前の大戦、召邪大戦で荒野になってしまいました。空間に存在する魔力は回復したようですけど環境は治ってないです。元々緑豊かな丘陵地帯でした。今の私なら復活出来そうです。」
「え、そんなこと出来るの? 」
「人のこと言えるの、シンくん? 貴方は余裕で天地再創造したじゃん。」
「さーせん、ミューリエさん。魔力切れ起こしましたけどね。」
「某にお乗りください。」
「今行っても封鎖中じゃなかったっけ? 」
「私の名前出したらオッケーしてくれるかも。」
「誕生お祝いしてくれた一人だから? 」
「うん。大丈夫だと思う。その前に渦巻山の麓前に行ってくれる? 」
「はっ、ミューリエ様。一蹴転移。」
転移した先の眼前にはねじれまくった岩肌の山が見える。あまりにも標高が高いので雲を突き抜けていて山頂が見えない。
「へえー、あれが渦巻山か。」
「元々は普通の険しい山だったんだけどね。お母様が暴走したときに神殿共々あんなのになっちゃって……浮遊島は頂上の隣に浮いているから見えないと思う。」
「あの、ミューリエさま。ボクの知識の見せ所、もとより仕事を奪わないでください。ボクはリストラですか? 」
「ウィズムちゃん、ごめんね! 」
「リストラは勘弁してください。愛人もリストラになったのに参謀、知識役もリストラだとボクはいらない娘に……。」
「某がついてますぞ。」
「ありがとうございます、ヴォルフガングさま。へなへな~。」
愛人はいらない、ともう一度ツッコミ入れようとしたがヴォルフガングがフォローに入った。彼の背中にウィズムがだらりと力無く腕と脚を垂らしている。
うっ、痛い、痛すぎるぅぅぅぅぅぅ!? 脳内電磁波かよっ!? 依然として「ふふっ」と微笑んでウィンクしやがった。
嫉妬したルゥもウィズムの後ろに乗っかって何かの寄生者になってる。お遊戯会でダニのお面つけている感じで。
「だらしないから二人とも降りて! 」
「いや、大丈夫ですぞ、ミューリエさま。お二方がこうしたいのであれば某は構いません。」
「ほのぼのしてて良いな。たまには悪くないぜ。」
「もう! オロチさんまで! 」
「俺も異論なし。ってかもう寝てるぞ。」
「あっ、本当だ。」
もふもふの背中と歩いたときの微振動が心地よいのか二人とも眠ってしまった。やっぱり子どもだと思う。これを子どもと言わず何と言うだろうか。……駄妹と言うぐらいかな。
「寝ちゃったなぁ。」
「荒野の土地を緑化しましょう。【
発動者であるミューリエを中心として草木が芽吹き樹木が生え始めた。それは軈て全体へと拡がっていった。こういうシーンって結構格好良いと思う。
「ふぅ、上手く行った~。」
「なぁ、ミューリエ、ありゃなんだ? 」
オロチさんが指差す先には手が「にゅる」と出て来て土を掘り起こして出てきたのは耳の長い身長2mほどの男の人だった。
「きゃあぁぁぁぁ!! 【
「【
「えっ!? 嘘でしょ!? リベロン様!? 」
「いかにも。我輩は精霊王リベロン・フェアンツです。姫のお陰で復活出来ました。」
にっこりと笑顔の男性、リベロン王はなぜか俺の方を見定めるように眺めていた。
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