第2章 西方大陸 ~水の神~ 編
第19筆 鉄道開発 出港(改稿)
7日程経過して俺たちは何をやっていたかと言うと、蒸気機関車の開発手伝いをしていた……。
「シンさま、車輪を召喚して下さい。材質のイメージサイズは脳内に送りますので。」
うおっ。頭いてぇんだけど。圧倒的な情報量に脳が追い付いてない。
「シンさまなら脳の限界突破が可能です。生まれつき貴方は特別です。3%から10%に引き上げます。」
まさか、あれじゃないよな……。
俺の額を微笑みながらそっと触れた。ぐわぁーー!!この前やられた罰ゲームの電磁波ビリビリじゃねえか!
「これによって脳内シナプスを活性化し、限界を超えます。死に近い痛みは更なる脳の可能性を開くのです。」
あぁーー!! 痛い、痛い、痛すぎるぅ~~!!
~数分後~
頭が割れる痛みを具現化しまくるとああなるんだよな。でも冴えてきた!
「〘空中描写〙! 」
〘具現化ペン〙で描いていく。描いたあとが光の軌跡となっていき、輪郭を形づくる。テクスチャから材質選択。魔力強化鋼メッキを使用する。
黒い鋼で炭素を少量と希少金属を用いたメッキだ。名はパスティーマ黒鋼と名付けた。
核パスタを極少量入れて粘り強くする。あれは宇宙一硬い物質だ。入れすぎると解体時がきつい。
ベタ塗り機能で塗っていき、【完了】と唱える。あとは自動成長機能で世界中から物質を収集してきて製作される。
これを繰り返して第零号機関車が出来た。【
最初に作った車輪は金色に塗装した。黒と金の組み合わせはケバいだの嫌らしいだの言われるがこの組み合わせは間違いなく正解に感じる。
いやぁ、カッコいいなこれ。自画自賛だけど。
まだ線路は出来ていないから城内の森に機関車を〘
―――――――――――――――――――――――
こんな感じで南方大陸に線路を敷いていく予定だそう。
次は西方大陸の港町、ウェディケットだ。
中央通りの石畳を踏みしめ、様々なデザインがあるのを楽しみながらこれが見れなくなるのはなんか寂しいな、としみじみした。
一時間かけて下ると港が見えてきた。潮の香りや魚臭さが混ざり合う匂いと漁師たちの声が聞こえてくる。
「おらおらぁ、早くしろ! 大事な商品が腐ってしまう! 」
「へい、兄貴! 」
浅黒く焼けた肌の男たちが魚を卸していた。ここから10分歩いた所に護衛募集してる客船が俺たちを待っていると聞いたので行ってみよう。
商品の魚をつついて怒られている男の子もいたり、魚を値切ろうとするおばちゃんがいたり様々だ。
~10分後~
今回乗る船ってこれか。かなりでかい。20
俺は
「これはこれは、お待ちしておりました。早速ですが、今回の仕事は航行中の護衛をお願い致します。今の時期は海竜やクラーケンが多く大変困っています。なので人手が多い方が良い。
伝説の召喚師さまとあれば百人力、いや千人力です。」
「そんなことはないですよ。全力で挑ませて頂きます。」
「クラーケンって美味しいのかな?」
「ルゥちゃん、あれは食べるものじゃないですよ。でもコアは良質かも。」
「海竜とタイマン、楽しそうじゃねえか。」
「ボクのビーム、どれくらい効くでしょうか?」
うちのパーティーは血気盛んで何よりだ。パーティー名は【
「そろそろ出港します。お急ぎくださ~い! 」
おっと、いけない。まずは船に乗らないと。
「切符か身分証明になるものをお持ちですか?」
「火のエレメントストーンならありますが。」
「噂の護衛さまですね。宜しくお願い致します。」
船室内は宿屋並みに広く、貴族風の羽振りの良さそうな服を来た人や一般的な人もいた。貴族風の人たちは偉そうに周りの人たちを掃けていた。
そして俺たちを指差しして手招きされた。面倒な予感がする。
「何ですか?」
「君らは陛下のご友人であろう?」
「そうですが。」
「手間をかけさせて悪いが私の護衛に武器を召喚してくれんかね。」
「得意な武器は?」
「彼女はレイピアが得意だ。無口な性格でね、あまり喋らないんだ。」
レイピアか、刺突に特化した武器だったな。ウィズムのバックアップ検索でわかったが、パリーイングダガー、別名マンゴーシュ(フランス語で左手を意味する)という攻撃を弾き返す用の三又の短剣もあるようでセットで使うらしい。
だが、防御・弾き返し用の武器だから耐久性の高さも敢えなく、真っ先に壊されたという。かなり頑丈に作るべきか。彼女、なんで持ってないんだろう。水口レイピアもロマンあっていいよな。
レイピアと言えば折れやすい。余り硬くしすぎると返って折れやすくなる。だが、ぐにゃんと曲がると刺すだけの武器になる。元々鎖かたびらや鎧の隙間から刺して大量出血を狙う武器だったレイピア。
基本は刺すだが、つまらない。使用者の意思に沿って切るときに硬くなったり、刺す時に柔らかくなる金属、創るか。
「【
思考同調金属、タニラエキュスト金属を生成する。
色はピンクにしよう。スケッチも描いて何個か召喚する。レイピア独特の細長い姿を描いて柄のガード部分と護拳部分も頑丈にシンプルなデザイン。
あとは自動成長機能でどうにかなるだろう、彼女好みに進化するはずだ。その為にデザインをシンプルにしたんだから。
マンゴーシュも同じく相手の斬撃を弾き返すもの。頑丈にならなければ良くない。
機関車と同じパスティーマ黒鋼を使おう。仕上げにスピードアップ補助機能つけておこう。
これで良いかな。
刃渡り1
「貴方に合わせてデザインと機能が成長し、切るときは硬く、刺す時は柔らかくなる金属で刀身を作りました。
意思次第で自在に硬さを変更出来ます。
片方はマンゴーシュ。攻撃を弾き返す時に使ってください。両手が塞がるのが嫌なら空中に浮き、自動で弾き返してくれます。
剣戟スピードを上げる機能もついてます。両方ともデザインが貴方の好みに合わせてくれますので今のデザインはお気になさらず。」
「……ありがとうございます。 ……いひひっ……かわいい。
…こんなに一杯の機能……。」
微笑む彼女が貴族男の後ろに引っ込んだ。
どっかの女優さんもあんな笑い方してたな。
いひひっ、と笑ってて可愛いと言ったら当時の彼女に嫉妬された。
「笑顔を見せるのが恥ずかしいから苦手でね。相当喜んでいるところを見たのは久しぶりだ。シン殿、感謝す… 」
突然、船にタンカーがぶつかってきたかのような大衝撃が走った。思わずよろめいて転びそうになる。
「大変だぁ、クラーケンだ! しかも群れときた!」
急いで船室から甲板へと急ぐ。うにょうにょと動きながら謎の粘液を海に撒き散らしている。あれがクラーケン。粘液で相手の身動きを取るんだな。
「うっひょっ~♪ 面白そうじゃねえか! 〘紫雷の一弩〙」
一番乗りしたのはオロチさんだった。甲板から乗り出して俺に天衣を投げ渡し、叢雲を足場代わりにクラーケンに近づき紫雷を纏わせた素手で殴った。クラーケンの体が波打って焦げ付いていく。
「食らいなさい! 〘
続いてミューリエがオロチさんに食らせようとしたあの技で数体が丸い光に包まれた後消えた。あれで世界に還元されたようだ。
「〘ガンマ線バーストビーム〙 斉射。ロックオン。穿て心臓へ。」
ウィズムの背中から見たこともない砲台が複数飛び出してきた。自動成長機能、見事だなぁ。極細のビームを打ち出し心臓があるらしい場所に射っていった。一体あたり心臓が4つあるようだ。
「〘重力操作〙。まとめて~ぱっくん♪」
ルゥが10体位を重力で練り固めてスライム状態に戻り補食した。あれ、便利過ぎる。
一通り終わったかなと思ったらまだまだ出て来て船の周りを囲った。俺の出番か。
「〘神器解放〙。
日本の雷神8柱( 頭に大雷神、胸に火雷神、腹に黒雷神、女陰に咲(裂)雷神、左手に若雷神、右手に土雷神、左足に鳴雷神、右足に伏雷神)の雷を纏わせ、八の字で周りを翔けて切る。
まとった雷がクラーケンらを感電させ焦がし尽くす。船の周りにいた奴らを一周して伐り続け納刀。
と思ったら第二陣、青い鱗の海竜の群れ(10匹)が上空からやって来た。あいつら叢雲をすり抜けたにも関わらず無傷か。面白い。
叢雲の内部は雷のエネルギーで充満しきっている。あれを
「クラーケンも普段は群れないのに海竜も群れでやってくるってどういうことだー!? 」
襲撃報告してくれた青年がパニックになってる。
もしかしたらあれか、第三者が仕掛けた奴だろうか?
第二陣と行こう。
「俺の雷は効きません。火属性と雷以外でお願いします。」
「毒が良いかも知れねぇな。シン、俺の毒を天叢雲剣に
あざっす、オロチ先輩。お借りします。
途端、風の音が聞こえ、クアァァーー!!
と海竜の悲鳴が上がる。
今、閃光が目の前を過ぎ去ったが何だ?
海竜全てが風穴だらけになって沈んでいった。
俺のとなりにストッと着地したのはさっき渡したレイピアを持った少女だった。
うわぁお! マジかよ、君強すぎない?
「これ、すごいです。……シンさん、ありがとう。」
「全部倒したのか? 」
「…はい。」
「名前は?」
「……ミレイ・レリット。」
「ほう、ミレイ。中々の成長っぷりだね。シン殿が召喚する武器は恐ろしい効果を発揮すると聞いたがここまでとは! 」
さっきの貴族の男だ。いつの間に名が知れているんだ?
「ミレイとやら、中々だな。おい、シン。何かどす黒いオーラを感じるぞ。」
上空を見るとわかった。俺の叢雲をかき消して黒雲に変え、何かが落下した。海中に消えた何かが飛び出してでて来たのは、“終わりの竜”、ルシェドだった。ディルクさんから聞いた特徴と間違いない。額に紫色の第三眼がある。
エンシェントカースドラゴンより体色が黒く、“終わりのゴーレム” フェリオスよりも強い眷属、ルシェドだ。
邪神は封印中なのにも関わらずなぜ動けるんだ?解けたら六聖神に伝わるらしいが、アウロギは何も言ってなかった。
“終わりの”がつく眷属は神器しか効かないようだ。だから俺がやることになる。
叢雲がルシェドに紫雷を落としたが何ともなかった。毒を試してみるか。
「シン、毒よりあいつは打撃に弱い! ダルカスのおっさんがやったように肉を露呈させて倒せ! 」
そうだった。天叢雲剣では不利か。ダルカスさんのステゴロの強さが改めてわかった。
だから万武なんだよ、あの人。テキトーにハンマー召喚しておこう。例えば…打出の小槌とか…アハハッ、冗談。ちゃんと召喚する。
あんまりデカ過ぎても何だし小槌サイズにしよう。
様々な神話の雷神は手持ちサイズのハンマーを持っていたりするからなぁ。ミョルニルとかサイズを自在に変えられて投げても必ず戻ってくるもんな。致死率99.9999%で残りの確率は一撃で死ななかった世界蛇ヨルムンガンドくらいか。三回とも相討ちになった話を聞いたことがある。
「クワァーー!! キュルル、キュルル! 」
っよっと。ルシェドめ、ブレス飛ばしてくるとは最初から船を沈没させるのが狙いかよ。ミューリエが
まあ、沈没しても俺が召喚すれば良いだけなんだけど。そろそろ手持ちサイズのハンマー召喚しよう。
=======================
設定・注釈欄
・重さ500スル・デルト(g)※デルトがkg
・デザイン自由変更
・サイズ自在変更(使用しない時はキーホルダーサイズになる)
・攻撃時の重力加算(制限なし)
=======================
シンプルなデザインの両槌のハンマーが現れたので一撃でかます。
「【天轟一砕】」
天衣で飛び、ダルカスがやったように頭を狙って一撃。重力加算=ブラックホール級の質量の衝撃にしたから……あ、やり過ぎた。
甲殻は粉々どころか肉はべちゃくちゃのミンチになって俺の体に、それ以外は海の周りに飛散して落ちた。
すかさずルゥがコアを引き寄せて飴玉サイズに小さくして食べた。
なぜかは知らないが人の体についた血や肉片は魔力に還元しない。生暖かい肉片が顔中にへばりついて嫌になる。ミューリエが目をバッテンにして顔を逸らしながら浄化魔法をかけてくれた。
「シンくん、やりすぎだよ~。」
いや、人のこと言えますか!? ミューリエちゃん。君の方が塵すらも残さない技をぶっぱなし続けてオーバーキルなの気づいてないの?
そんな鈍感な所が可愛いんだけどね。
黒雲も叢雲も消えて日本晴れとなった空にゆっくりと船は帆を進めたのだった。
「フン、流石はイカイビト、シンか。だが、こうでなくてはな! フェリオスとルシェドなんざ余興の前座の更に前座でしかないのだからな。」
船の屋根に身を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます