第51筆 耀姫神レナーテ

 ウィズムのデータベース


 天嶺の国ベルガラッハにそそりたつ天峰城。

 岩の肌を持つ天岳人と人間が暮らしている。国の霊獣はガルーダ。

 国土の中心にある断崖絶壁に立つ城は大気圏を貫くほど縦長に尖った建造物で世界樹を除けばここより標高に勝るところなし、と言わしめられる。


 峠、山脈に吊り橋がかかっており、天峰城を終着点とする。

 本来は天嶺門から転移した場合は門の真上の崖に降り立つことになっているが、シン一行は特例で直通になった。


 ──────────────────────


 白い長き髪を持つ国王らしき女性は微笑み独特の色香を放つ。気が抜けるとオチてしまいそうな位美しく、妖艶。まさに女王様と言った感じだ。

 その甘美な声で優しく語りかけた。


「わたくしは天嶺の国、ベルガラッハ国王並びに六聖神が一柱、耀姫神ようきしんレナーテです。

 ミューリエ様、お久しぶりです。息災でしたか? 」

「お陰さまで。」

「貴方がシンさんかしら? 」

「はい、俺はシン・イーストサイドです。」

「お噂はかねがねですわ。ミューリエ様、お付き合いまで行ったのでして? 」


 ミューリエが頬を染めて俺の腕に寄りかかった。生まれた時の付き合いみたいだから、親戚の人のいじりと同じくらい往生際が悪い。


「どうやら上手く行ったようですね。お熱いことで。」

「レナーテ様、恥ずかしいので……。」

「あら、いけないですわ。わたくし、色恋沙汰となると目がなくて……。」


「なぁ、レナーテさん。直通で通してくれたのはありがたいが日が暮れるぜ。今から試練は長引くだろうよ? 」

「そうですわね。明日に致しましょう。こらこら、貴方たち、そんな目をしないでくださいまし。」


 結構睨み付けていたからな。特にタメ口のオロチさんを。


「しっ、失礼致しました! 」

「客間の準備を急いで致します! 」


 流石は王城の客間だろうか。天井も高いし部屋も広く、お風呂がある。高級ホテルの一室みたいだ。

 大満足の一夜を過ごした。


 ~翌日~


 レナーテに案内され闘技場のような場所に来た。


「ここで試練を行いますわ。試練の成功の暁には光のエレメントストーンと【瞬神化ジフル】を授けますわ。」

「それは一体? 」

「後で教えますわ。シンさん以外は参戦を許しません。では試練開始っ♪」

「えっ? 」


 ザシッシュッシュ!! 斬られた?


「【神体化ゴッドアーマー】! 神器解放! 」

「無駄ですわ。」


 見えない! しかも確実に俺をヘイトさせに来ている!?

『私をお使いください。』

(ウルトリムか? )

『はい。』

(使わせてもらう。)

『ありがちな技ですが、明鏡止水してみてください。』

(オッケー、ウルトリムちゃん! )


 目を瞑る。第三眼を開く。新技だぁ!レナーテ様!


「うらあっ!! 顕現せよ、ウルトリム! 天目一箇神あめのまひとつのかみの心眼! 」


 舐めんなよ、ダイダラボッチさんの一つ眼を。

 見えてきた、見えてきたぁ!


 斜め上から切り下ろしがやってくる……。弾く。

 下ろしたまま横凪ぎ払い……弾く。


 ~世界の声です~


 お困りのようですね、シン様。新たなスキル【剣戟予測】を獲得致しました。これにより剣戟が予測できます。

 以上、世界の声でした。


 おっ! 助かるぜ、エリーゼさん!


 なるほど何通りかの剣戟パターンが光の筋となって見えてくるわけか。現在、俺の視界に八方向からイメージが伝わってくる。それを避けて――ぐほっ!? 全部当たったし、神の体でもこのダメージ通るってどうなっているんだ!?


「あらあら、まだまだですわね。出直してらっしゃいな。【神去斬サナトュスソルド】。」


 なぁぁ!? なんじゃあの光の柱は!? 直撃する……死ぬ、死ぬ、死ぬわっ!?


「なんてね♪【転身トュノヴァ 】、死んで堪るかぁ!! 唸れ、轟け、歪め。

純然たる完全回帰ピュアパーフェクトリグレッション】!! 」


 ふっ、【永劫消失エタニティヴァニシング】と同じ威力のこいつは全てを無に帰す。闘技場壊れちゃった。えへ♪

 反物質さえ使われなければ大丈夫だろうよ。



「【麗崋光帝分散解フォトンニックエンペルクランテ】っふう。死を覚悟致しましたわ。」

「それ、魔法じゃないですよね? 」

「えぇ、おっしゃる通りですわ、ミューリエ様。

 これは【六聖秘天法シクサエルトレン】ですからね。」

「魔法より上の存在です。気を付けてください、シンさま。」


 ウィズム、念話だ。

 なんでしょう?

 天叢雲剣とウルトリムを融合したらどうなる?

 ボクには見当もつきません。

『……ほう、やるのか。』

『やってみましょう。』


「はぁ、困りましたね、俺の降参になりそうです……。」

「えっ、シンくん諦めちゃうの? 」


 おれはアイコンタクトを取った。これをやった時は大丈夫という意味だ。


「何か考えがあるようですわね。一騎討ちがお望みかしら? 」

「そうです。」

「では、わたくしも本気を出しますわ。」


 彼女は天輪を脳天から浮かばせ、100セリテ程広げて自刃した。「あっはぁ♪ 」

 光を剣の刀にしたそれで身体中を刺してあまりの痛みに落涙の様子。その涙が足先まで伝い、虚空へと落ちた瞬間、お腹が裂けた。

 身体がぼろぼろと卵の殻のように割れて幼女が現れた。


「【母体転廻マルケレインカーネーション】。やっぱり妾はこちらの方が楽なの。準備は完了したの。シンさんは大丈夫? 」

「若返るとは望外ですね。俺も本気を出します。【神器融合】。」


 俺は左手に天叢雲剣、右手にウルトリムを持ち、共鳴現象を起こし、空中に浮かせたガルグルマー(工芸用モード)で両者をコン、コンと叩く。


『……天叢雲剣だ。』

『ウルトリムです。』

『ガルグルマーだぜっ! 』

『我ら融合せし時、新たな力が世界を震撼する。三位一体とはまさにこのこと。』


「世界よ、シン概念に驚愕せよ。

 エリュトリオンとアスガルド地球の怒りのツルギ、

 桜花叢雲天轟祭の始まり。顕現せよ、

【零式・昊薨ソラナキ】!! 」


 こいつを出した時、何処からか天津祝詞がメロディーつきで流れ始めた。


「なーに~、それ? ただの大きな刀じゃないの? 行くわね。」


 彼女は光の剣を無数に出現させて体の中心から丸い球を集め始めた。ビームを打ってくるかもしれない。

 対する俺は全長2m、重さ200gのソラナキを手に構える。


「【虚光零覇神子砲フォトニックデウスエンペラルカノン】!! 」

「無い影を斬る。普通の一閃。」


 極太のビームに無数の剣が絶え間なく追従し、放って来たレナーテ様。

対する俺は普通の切り下ろし一閃で迎え撃って即座に|画竜点睛

《アーツクリエイト》を起動して、八咫鏡アナザーを召喚。レプリカなので威力は半分だがビームを反射。それだけ。【八百万十条斬り】を行い、【天穿ち弐式:黄泉の鍵】を開く。

 君たちは知らないだろう。黄泉の恐ろしさを。


 鍵を開き、出てきた異形たちはレナーテ様の魂を連れ込み、

「悲しいね」

「悲しいかもね」

「生きて帰れるかな? 」

「グヒャヒャヒャヒャ!!」


とあざ笑う異形たち。


「帰れ。」


 ソラナキを捻って閉じる。デメリット?

 ない。無いよ。


「終わったよ。」

「レナーテ様は? 」

「わかんない。黄泉の国に入ったら出られないから。」

「死んだの? 」

「冗談。異界の神様だから帰してくれるよ。」


 転移門が現れて出てきたのはかなりやつれた顔のレナーテ様(幼女)だった。


「シンさん。貴方は何てものを……。

 もう、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌っ!

 あんな所行きたくない!

 ゲホッゲホッ! ゴフッ! 」


 俺は黄泉の国行ったことないからわからないが基本死なない神でも吐血する位の被害に会ったわけね。


「もう一回ソラナキで斬られたら死にますんでよろしくです。【神穢治癒しんあいちゆ】。」


「絶対逆らえないじゃないの。光のエレメントストーン六聖紋章石をどうぞ。【瞬神化ジフル】もね。」

「ありがとうございます。」


 額にやり方を流し込んでくれた。

一言で言うと神速の状態になって翻弄するわけか。

 それと、ネタばらしを一つ。


「俺は神世七代かみしろななよの一柱、最高神天照の孫です。」


 あ、今度教えるね。






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