幕間の物語 オロチ編
「うん? なんだシン。俺の過去を聞きたいのか? 」
「ちょうど光の試練も終わりましたし、着物の着方とか過去について教えてほしいです。」
「じゃあ、面白いかわからないが俺がスサノオさんから逃げたところから話そう。」
───────────────────────
時をかなり戻して神話の時代に遡る。
「逃がさぬぞ! 八岐大蛇っ!! 」
アメノハバギリで体をバラバラに切り刻まれてスサノオに俺様の魂を潰さんと追いかけられているところだった。
だが、石に籠って隠れたが叩き割られてしまい結果、捕まってしまった。
「これより、高天ヶ原会議を開く。」
引きずるほど長い黒髪を持った少女が強い口調で俺様を見下すように一瞥した。
「罪ありし怪物、
「はっ。
あまつさえ幼き童女たる末娘の
「ふむ。八岐大蛇。その罪、重いぞ。
本来ならば黄泉の国に送ってやりたいところじゃが、それでは反省しないだろう。そなたに人の体を与え、贖罪をしてもらう。」
「ふざけるなっ!! 俺様は旨そうな幼女の肉を喰らい、酒を嗜んだだけだっ!! 」
「喝っ!! 妾は良心で黄泉の国に送らずに助けてやったと申しておるのに口を慎まんか!! 罪を自覚するんじゃ!! 」
「ちっ。」
「っこほん。改めて贖罪の名を告げる。
「はっ。貴様を『流界の刑』に処する。」名の通りこことは違う異の世界へと送る。世界を救え。」
「おいっ! なんなんだよそれは!? 」
「八百万消去。」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
ん? ここはどこだ? 目の前に見えるのは麗しき幼女が一人──。食ってやろうか。
「ふふっ。あんた! 良い度胸しているわね!吹っ飛びなさい!! 」
「ぐほっ!? 」いきなり蹴飛ばされたが、彼女の股からきれいな桃色のものが……。
「本当にあんた良い度胸してるわっ! 私は宇宙そのものよ。」
「食ってやろうかと思ったがお前なんなんだよ!? 」
「あらぁ? わからないかしら? オロチくん? 」
「ちっ。なんで俺様の名前を知っている? 」
「ここはね、
帳消しにするには八つの世界を救ってもらうわ。」
「どういうことだよっ!? 」
「あんたが自由に暮らすには禁酒と禁欲と世界の救済をしなければならないの!!
さよなら、【
「ぐひゃあああああああああああ!!」
わけのわからない渦が足元から出て来て落ちた。
どこだよここは。
眼前に広がるのは草原に見たこともない建物──。
あと、俺様の姿は……人間になっている!?
あの黒髪童女め……誇り高き蛇としての威厳をわかっちゃいねぇ。絶対に喰ってや──ぐぎゃあぁぁぁぁぁ!! 頭の中から電撃が走ったぞ!? なんだよ一体!?
『あらあら、大丈夫かしらオロチくん? 』
「貴様はっ! よく分からない髪色した童女か! さっさと元の場所に帰せっ!! 」
『それは無理よ。あんたは勇ましき者として呼ばれたんだから。この世界ドレグマを救いなさい。
難度はSSクラス。あなたはこの世界では竜の神として八つの首で悪しき者を倒すの。あ、ちなみに悪しき者は女だから喜んでね。』
「俺様は帰れないのか? 」
『無理。その女、世界最悪の魔女って呼ばれているから頑張ってね。剣とアイテムポーチをあげておくね。じゃあね~。』
「っおい、待てよっ!! 」
畜生、なんだあいつは世界を救えだと?
俺は酒池肉林の世を──ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 身体中が焼けるように熱い!!
ちっ。仕方ねぇ。やりゃあ良いんだろ、やりゃあ!
痛っ! 俺の頭上から巾着袋と剣が落ちてきた。
ふん、十束剣か。変に飾りも無い意匠で軽いな。
貰ったもんは有り難く使わせてもらう。
まずは村っぽいあの集落に乗り込んでみるか。
「おい、お前は誰だ。」
「旅人カードは持っているか? 」
「俺様を誰だと思っているんだ? 八岐大蛇だぞ! 」
「知らん。」
「持っていないなら発行が出来るがどうする? 」
「それ持ってたらどう変わるんだ? 」
「様々な国の入国が自由に出来る。」
「ほう、便利だな。俺様は魔女を倒す! だから寄越せ!」
「クックックッ! 魔女を倒すだと!? 笑わせる。」
「何だよっ!? 馬鹿にしてんのか! 」
「違う。今までそう言って死んだやつが一杯いるんだ。お前さんもそうならんことを祈る。」
「最初からそう言えば良いじゃねえか。」
「旅人カードを渡しておこう。」
「おう、ありがとな。」
かなり質の良い紙のようなもの? よく分からないが謎の言語で書かれているな。
……段々と読めてきたぞ。
旅人カード
~概要~
本カードはドレグマに存在する国全てを自由に渡航出来るものである。
魔女を倒そうとする者には更なる特権がある──
読むのめんどくせぇな。まぁ、これを持っておけばこの世界、ドレグマを自由に渡航出来るわけか。情報を集めるか。
それから俺様は村で旅人登録をし、魔女を倒すと言う勇者と呼ばれる女に会い、彼女が童顔の美人だったもんで尻を追いかけていたら死にかけた。
俺様に封印魔法を幾重にも掛けてきて
・肉欲の封印
・飲酒の封印
・蛇化の封印
・暴食の封印
・老化の封印
・怒りの封印
・死亡を許可しない封印
・女・子供を殺さない封印
首に一つずつ掛けられた。
今でもこの封印は解けない。だが、かけてくれたお陰で禁断症状はかなり治まった。
あの女が初恋の女で正解だった。
数年後、まだ群れるのが嫌いだった俺様は傭兵となり、一人で魔女を追いかけていた。
魔女を倒すために無詠唱を習得し、コスモ姉から貰った業物を当代一と名高い鍛冶師に打ち直してもらい、防具もその鍛冶師にオリハルコンの鎧を製作してもらった。
魔女の足跡を辿るため、かつて神だったという噂を聞き、神殿を巡り、わかったことがあった。
わけのわからない古代文字で書かれていたが、ヲシテ文字に近い文体で書かれていた。
18個目を繋げる。
=======================
儂の石碑を集めて読んでいるということは、魔女を倒すものだと思いたい。
魔女はドレグマの最高神の成れの果て。
全宇宙の呪いが集う世界の咒神帝が戯れに呪いをかけて暴走させた。
倒すには封印とぶつけあう必要がある。
しかし──
=======================
ちっ。大事な所の文字が擦りきれていて読めねぇ。
魔女が出そうな場所……。この世界の中心には世界樹があったな。そこの地下神殿ならあり得る。
そして、運命というのはまったくもって気ままで残酷だ。
リリアンヌも同じ答えについたようで世界樹の地下神殿にて再会した。
彼女の目には決意の炎が垣間見えた。
「久しぶり、オロチくん。元気だった? 」
「元気も何もお前のせいでいたって健全な生活を送れてたわっ! 」
「あははっ。相変わらずだね。行こっか。」
「おう。」
更に地下へと下る。最下層にはくぼみを嵌め込む台座が一つ。魔女を呼び出す設備のように見える。
念の為だと思って持ち帰った石板がピースになっているじゃないのかと思い、嵌め込む。18個あった石板が全て絶妙にはまり、台座が開き、門が出現した。
「魔女の気配がするわ。禍々しくて、どす黒いオーラ。私とオロチくんの魔力を吸い取ろうとしてきてる。」
俺は頷き、渦巻く門へと入る。
魔女は玉座に座り、にたりと微笑んだ。そして、人差し指をくいっと上げた途端、空間が捻れる―!
こいつは口元を縫合していて喋らない。
「【
「リリィ、俺様が斬る。」
打ち直してもらった愛剣、八千代丸で斬るが、素手で弾かれた。硬っ!? 俺様の鱗と同じ硬度じゃねえか!!
また微笑んだ。魔女は巨大な竜へと姿を変え、ブレスを放った。
「ちっ。埒が明かねぇ。リリィ、俺は蛇に戻る。」
「駄目っ!! 死んじゃうよ。私の封印と宇宙そのもの様から掛けられた聖印が発動するよ!? 」
「構わねぇ!
可愛い女一人も守れねぇ、運命はリリィを弄び、目の前にいる魔女のせいで人生を狂わされている。
せめて、異界から来た俺がケリつけたって良いだろっ!!」
コスモ姉から掛けられた聖印、それは
怒りは身を焼く焔となり、
悲しみは凍傷となり、
殺意は雷として神経を焦がす。
そして八つの封印が更に俺様を苦しめる。
「ふん、これしきの痛み……。
我は八岐大蛇。総てを喰らう力の象徴。ドレグマの力が我に集まらん。
【神蛇化】!!」
俺は本来の八頭八尾の姿へと戻る。あぁ、清々しい気分だ。まさか、女を喰うではなく守りたいと思うようになるとはな。
「オロチくんっ! 」
「女は下がってろ。」
「でもっ!! 身体中がぼろぼろだよ!? 」
「つべこべ言うな。性的に喰ってやろうか。」
「それは駄目。」
「良い返事だ。さぁて、魔女竜が。どう調理してやろうかぁ? 」
「クフェフェフェ──!! 」
「気持ち悪い嗤い声だ。死ね。」
俺様は奴の首を噛みつく。そして全身の四肢を噛みつき毒を仕込む。これで動けぬわけが……なっ!?
毒を吸収しただと!? 逃すものかっ!
巻き付いて窒息させて聖印を移して感電させる。
まだだ。身を焦がし、凍傷を負わせ、細胞を塵も残さず壊し、喰らう。残るは魂のみだが……この異形は何だ?
「オロチくん、それ危ないっ!! 人に戻って! 」
言われるがままに人の姿に戻った。
「どうした、あと、一撃じゃねぇか。」
「魔女、いやこの異形。魔女を操っていた本体で
咒神帝の眷属よ! この星の周辺ごと無に帰すつもりだわっ! 」
「俺がどうにかしてや──」
「無理なの! あの石碑の続きってこうなってるの! 」
=======================
儂の石碑を集めて読んでいるということは、魔女を倒すものだと思いたい。
魔女はドレグマの最高神の成れの果て。
全宇宙の呪いが集う世界の咒神帝が戯れに呪いをかけて暴走させた。
倒すには封印とぶつけあう必要がある。
しかし、その封印の成功の暁には術者の命を代償として確実に葬り去る。
魔女を倒す者、封じる者の二者が揃って完全なる平和が約束される。
著・創世神ガルザン
=======================
「まさかそれって……。」
「私の命を代償として封印の檻を作って消滅させるものよっ! 」
俺様は初恋の女たるリリアンヌを失いたくなかった。
好みの見た目で俺をスサノオ以外で吹っ飛ばした女で殺しかけてきて、でも笑顔が素敵で抱いた時は恥じらいの表情で抱き返してくれてそれからそれから……あぁ、思い返せばリリィのことばかり。
会っていなかった数年間もリリィのことばかり考えていた。これが恋なのか。ふっ、今更過ぎるか。
「俺が代償になる! 」
「いや、駄目。もう決めちゃったから。」
リリィの体が炎のように揺らめいている。彼女が珍しく低い声で異形に語りかけた。
「異形よ。千劫が過ぎし時、お前は完全に消滅する。その消滅するまでの耐えがたき久痛を感じる度に人々に祝福が訪れるのだ。さよなら。
【
彼女の体は焼け爛れ、溶けた体が液状になって異形を包む。異形は声にならない断末魔をあげ、消えていった。残った精神体を俺は抱き寄せる。
「リリィ、お前は馬鹿かよっ! 命を粗末にするなぁっ!!! 」
「ごめんなさい、オロチくん。いや最愛の人。実はね、貴女の子供がいるの。もう三歳になるけどね。竜にも蛇にもなれるの。王都にいるから。だから、後お願いね。それと、これを。」
首飾りか。蛇とリリィの顔が彫られた意匠で中には遺骨がある。
「さっき、体が焼けた時に粉を入れておいたわ。
あぁ、私って幸せ者だなぁ。大好きなヒトに抱かれてそのヒト子供も授かって。そして今、死ぬ時に涙で私の顔が見えていない最愛のあなた。」
「うるせえっ! 死ぬなんて俺様が許さねぇ! ぐっ、ぐっ。 」
「折角の男前が台無しよ。あなた。そろそろお迎えみたい。ありがとう──」
彼女の魂体が光の粒となって天に昇る。
気づけば魔女と戦った神殿ではなく小麦の平原。
「リリアンヌぅっっっっ!!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
嘘だっ、嘘だっ、嘘だ嘘だ嘘だっ!!
リリアンヌが死ぬなんて! リリィがいない蛇生なんて! ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「おい、いたぞっ!! 」
「オロチさんっ!! 」
「オロチさん、ここは崩れるから避難するぞ!
ここは魂の世界だっ!! 生きている奴が入る所じゃない! 」
「リリアンヌさんはっ! 」
「リリィは死んだっ!! 死んだんだよっ!!
ぐっ。ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺様は泣き崩れて動けず、魔女討伐隊の第二陣の者たちにおんぶされて救出された。
それから俺様はリリィの死のショックでドレグマから帰ることが出来ず、半年経ってやっと外に出られるようになり、王都にいる子どもに会いに行った。
宿から出ようとするとリリィが死んだ情景が何度も何度も思い浮かんで出ることができず半年かかってしまった。
「お父ちゃん? 」
娘か。俺様は女に弱いな。しかもリリィそっくりときた。髪の色は俺様の紫の色が混ざっていてオッドアイか。
「あぁ、そうだ。」
「会いたかったよ~! 」
四歳になったばかりらしく歳の割には良く喋る。
可愛い娘だ。
「名前は? 」
「マリティアーネだよ。」
「そうか。マリティアーネ、父ちゃんの故郷に帰るぞ。」
「お母さんは? 」
「リリィはここにいる。」
「首飾りにいるの? 」
「あぁ、魂は一緒だ。宇宙そのもの!! 俺は帰る! 」
転移門が出てきた。くぐれってことか。直通で会えるようにしてくれよ。
「オロチくん、お疲れ様。はじめまして、マリティアーネちゃん。」
「お姉さんだれ~? 」
「うーん、あたし? 名前無いからなぁ~。 」
「じゃあ、アステルお姉ちゃん! 」
「その名前いいわね! 貰っちゃおう! 」
「俺様は日本に帰る。」
「えーっとね、八つの世界は救わなくて大丈夫だわ。あの変な眷属倒しただけ合格。でも天照ちゃんたちが許してくれていないみたい。天照ちゃ~ん。」
「はい、宇宙そのもの様。
八岐大蛇。子を授かるとはどういうつもりなのじゃ? ちゃんと育てる覚悟はあるか? 」
「無論だ。マリは聡い。ちゃんと育てる。」
「なら良いがの。妾からの指令が二つある。
一つ、日本の歴史を裏から支えよ。
二つ、妾の予言じゃが、妾の孫が苦労する所が視えた。助けてやってほしい。」
「ふん、御安い御用だ。マリ、人助けだ。」
「困っている人を手伝うんだね~。りょ~うか~い! 」
例えば大化の改新や天皇家絡みのもの、源平合戦や安土桃山時代の本能寺の変など。特に本能寺の変の時は天照姉姉全面協力で神々を馬鹿にするな! と明智光秀に協力していた。天照姉は徳川家康と菅原道真については渋々神になることを了承した。
特に近代戦争は疲れた。
やることが多すぎた。歴史を見てもわかるだろうが、日本の神々とあれど軍部の暴走は止めることは出来なかった。
戦後は俺様はある会社の社長となり、インフラ整備に技術開発など様々行った。この時マリが新しいアイディアを産み出したから現在も残っている。
マリの成長は緩やかで西暦2000年に成人を迎え、今は異界を放浪している。リリィのネックレスに時々メッセージが届く。
ルゥを見ていると幼いころのマリを思い出す。
口調が似ているからか、親近感を覚えた。
マリの成年後、俺様は何をしていたかというと、コンビニでバイトをしたり、ホストになって歴代売上一位を叩き出したり、祀ってくれている神社の神主や宮司の仕事をした。
俺様を斬る神楽があるが、実はあれで煩悩が消えていることがわかった。
シンは誕生と同時に綾子さんからサポートのお願いをされ、
この能力はコスモ姉並みに大きな神が関わっていると感じた。誰なのか検討がつかん。
そしてシンが転移されたと同時に俺様も
この時、天照姉はデレデレで可愛い孫の為ならどんどん使って! と言っていた。どこの祖母も孫には弱いものだ。
「まぁ、こんな感じだな。」
「
「六聖神の試練終わったあたりで教えてくれるだろ。」
「そうだといいんですけど。」
「おっ、マリから連絡だ。」
『父ちゃん、エリュトリオンに行くことにしたよ。座標ぴったりで目の前に登場するからまた今度ね。』
これは楽しみだ。さて、旅を再開しよう。
あ、着付け教えるの忘れた。また今度な。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます