第47話「鮮血の信徒」
「そこまでよ、ビヴァーチェ!」
左手の甲をナイフで貫かれ、悶絶してるところ、暗闇の中から声が聞こえた。もちろんこのタイミングでくるなんて、俺の天使、いや天使じゃ困るのだが、淫魔であるところのシルアである。
「キャハッ、お姉さま、だいぶ遅いじゃないですか」
俺の刺す動きをやめて、ヒバリは声の方を振り返った。
「まさか、ビヴァーチェ、あなたが聖夜に近づいてるとは思いもしなかったわ。最近、聖夜の行方を追えない時があるから変だなあとは思ったけど、まさかあなただったなんてね」
「ふふっ、なかなかお姉さまたちの裏をかくのは大変だったんですよお」
ヒバリは、すぐさま視線を戻して、再びナイフを振りかざして、俺をもてあそぶ続きを始めようとする。シルアのことなどまるでお構いなしだ。
「させないわ、ピアニッシモやって!」
「オッケー!」
そういうと、ヒュッーと空気を切り裂くような音が聞こえる。
ナイフを投げたのか、ピアニッシモも来てくれたらしい。
しかし、そのあとに待っていたのはカラーンというナイフが地面に落ちる音だった。ピアニッシモのナイフはヒバリには届かず、当たる直前で床へと落とされる。
そして、ヒバリはお構いなしに、俺の右腕の上腕に向かってナイフを振りかざした。
ブシュっという音とともに、血しぶきが目の前に広がる。
「ぐああああっ」
うめき声だけは出せる俺は醜い奇声を発するほかになかった。
「……まさか、VHフィールド! ビヴァーチェそこまでしてきたのね……どおりで今の今まで私たちが気が付かないわけだわ」
「どうしようシルア姉さま、これではビヴに手が出せないわ」
なんだ、その新世紀な単語は!? 説明ないとさっぱりわからん、痛みのおかげでもうただでさえ、思考停止状態なのに、早く助けてくれ。
「ぐががああっ」
助けてといいたいのだが、声が思うように出せない。
「そうよ、お姉さまたちにばれないために、サキュバスとしての力はほとんど捨ててきたし、人間界に来てからは私は処女よ。必要なエネルギーはすべてこの男から奪った。ほんと凄いわ、ホーリーナイト。お姉さまたちが熱中するわけね」
「……まさか一番、性欲の強いあなたがそんな戦略を取るなんてね。もうちょっと聖夜! なんで我慢できなかったのよっ、こんなロリボディのどこがいいっていうの!?」
お、俺のせいかよ!
いや、違うんだ、決して身体を見ていいとか思ったんじゃないんだ。ほおっておいてはいけないってそう思っただけなんだよ、分かってくれシルア。
「ほんと情けない、ダイナマイトボディのお姉様と、バランスのいい私の体を両方知っていて、あえて、貧弱ボディのビヴァーチェに行くなんて、やっぱ日本人はロリコンなのね!」
ピアニッシモまで、俺を非難する始末。
まて、状況的にギャグぽっくなってるが、マジでお前らがどうにかしてくれないと、身動きは取れないし、モッコリパワーも出ないしで、本気でピンチなんだよな。刺される痛みは慣れてきたが、出血が……そろそろヤバイ。
「分かってないのはおねぇ様たちよ。体を使って支配するんじゃ男にはいつか飽きられるのよ。つかむなら心。ねえ、お兄さん。お兄さんはヒバリのこと大好きだもんねぇ?」
そういって俺の両目にヒバリに両目を近づけて、目と目でキスをさせる。いわゆるバタフライキス。
なんだ、確かにシルアたちとは違う種類の興奮を俺はこの子に感じている。
いや、まあそもそも殺されそうなんだがな。
「お姉さまたちは、だまってみてなさい。ヒバリはただ楽しみたいだけなのよ。キャハハハッ、あと7回、お願いだからそれまでに力尽きないでね」
そういうとヒバリは俺の首を絞めながら押し倒して、馬なり状態になった。もちろん体格的に押し倒せるわけないのだが、俺は何せ自分の体のコントロールができない。ゴンッと倒れた衝撃で俺は頭を打ち付ける。
「うぅぅっ……」
「どう、少女に馬のりになられる気分は? 最高でしょ、変態なんだから?」
最低な気分だよ……おれはそういうマゾ性は持ってねぇんだ。
しかし、どうする、このままいくとほんと何もできずに死ぬ。そしてあのバカ女二人はなぜ黙ってみてる?
VHフィールドだか何だか知らないが……何が起きてるっていうんだ。
「聖夜、チャンスだわ! そのままなんとかモッコリをビヴァーチェに突っ込んで! 人間界での処女さえ奪えれば、結界を破ることができるわ!」
うん、なんだって。
要ははめちまえってことか……。
だが、いろいろ問題はある。
そもそも体が動かない、モッコリだけはフルバーストなのだが、どうやってもヒバリのスポットにまで届かせられないし、腰も動かぬ。
そして何より倫理的な問題。
『少女を冒していいわけがない!』
これは誤字じゃないぞ。
「何かを心配してるなら大丈夫よ聖夜! 年齢で言えば余裕で100歳越えてるから! ヒバリは合法ロリよ!」
なんだとっ!
合法ロリとはたまげたなあ。いや違うんだ、体が動かねぇんだって!
「くそがあぁぁっ! 女の年齢勝手にばらしてんじゃねぇよああああっ」
年齢をばらされたのがよほど気に障ったらしい。叫びながら、ヒバリはどこから出したのか二本のナイフを振り上げて、おれの両肩にナイフをぶっ刺した。
「あああああああああああああああっ」
「きゃははははーーーーーー、いい声じゃあああんお兄さん、ちょうど半分だよぉおお最後まで持つかなあ」
はぁはぁはぁ、こりゃあ、きついぜ……。
「せ、聖夜……」
シルアの声が聞こえる。
俺の意識はもうギリギリだった。
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