第11話「女の嫉妬という悪魔」

「大丈夫なのか・・・・・・体内から支配されるとかそういうことはないのか」

 悪魔とかって絶対飲み込んじゃいけないと思うんだけどな。今のところ食あたりとか、胸焼けとかはないが。


「わかんない、私だって悪魔を飲み込んじゃった人間初めて見るもの」


「わからないのに吸い込めとかいったのか?」


「それ以外なかったでしょ、まあきっと大丈夫よ、あなた強いから」


「うーん、根拠になってねぇ」


「そんなに心配なら、いまここで一発やっておく?」

 いいながら自分の上唇を舌でなめ出す。仕草がいちいちエロいなあ。


「な、なぜそうなる? なんにも解決しないだろ」


「変なもん吸収したんだから、放出した方がいいじゃない」

 そうして、俺の意見など無視して俺の元に近づいて体を密着させた。そして耳元でささやく。

「ね、こんなにギンギンにさせといて、やらないの?」

 ささやくなよ、興奮するわっ。

 さらに俺は隆々となっていく。そしてそのギンギンなものにシルアはそっと手を触れる。

「どうするの?」

「やります!」

 是非もなかった。

 やられっぱなしは腹が立つので、こちらからシルアの唇を奪った。口元にのこるギギギリスの感触が、シルアの唇の柔らかさによって中和されていく

 そして、シルアの豊かな双房に手を伸ばす。

 「あっ、もう」

 こうして、夢の世界とはいえ、学校内でギギギリス戦の延長戦が始まった。うむ、英雄色を好むがごとく、ヒーローには戦わないといけないものがたくさんあるな。



 結局5回戦ほど、戦った。勘違いしないでほしいがこれは欲望に基づくわけではなく、あくまでデトックス活動、つまりは体内に入ったギギリリスを外に出す作業である。実際には、外ではなくてシルアの中に出してしまったのだが。

 いや、こういう書き方は語弊があるな。いや、文字通り何だけどまあいいか。


「ね、もう終わりなの。足んない・・・・・・」

 シルアはまだ物足りなそうにこちらを見る。馬鹿いえ、そろそろ戻らないとさすがに、放課後になってしまう。

 変なところで俺はまっとうな学生でいたいという気持ちがあった。学校ではめてしまった時点で全うもくそもなさそうだけどな。


「続きは夜でいいか、一回学校の様子を見たいよ」


「仕方ないなあ、かわりに今夜は眠らせないぞ」

 とびきりの笑顔を見せないでくれ、俺を殺す気か? そういや殺す気だったか・・・・・・。

「目を閉じてね」

 そう言いながら、シルアは俺の背中に手を当てた。


――ざわざわ。

 静かだったはずの周囲からいろんな音が聞こえてきた。生徒達のしゃべり声が周囲には満ちている。

 そっと目を開ける。

 誰もいなかった廊下には、何人かの生徒が往来していて、教室の中はまだ食事中の生徒達ばかりであった。


「えっ、まだ昼休み? ざっと3時間以上はあの空間にいたはずだぞ」


「夢の中だからね、現実世界では一瞬だったなんてよくある話でしょ」


「・・・・・・なるほど確かにそういう経験はあるが、それは素晴らしいな」


「どうして?」


「テスト前とか、あの空間で勉強していれば、時間を気にしなくてすむじゃないか、そのくらいの協力はしてくれるんだろう」


「ふーん、なるほど。確かにそれは便利ね。でもあまりおすすめはしないわ」


「なぜだ」


「短くなるとは限らないのよ、めったにないケースだけど、短い夢のつもりが半日寝てたなんてこともあるでしょう。今回みたいに戦うぞって緊張感があれば眠りは浅くて済むとおもうけど、テスト勉強でしょう? 大丈夫かしらね」

 なんてこった。そう都合良くはないってことか。


 すると、教室から俺たちを見つけたイブがこっちに駆け寄ってきた。

「あっ、シルアちゃんどこ行ってたの? ね、ちょっと聖夜、あんた何でシルアちゃん連れて外出て行ったのよ。なんか変なことしなかったでしょーね」


 変なことがセックスを指すのであれば、それはもう思い切りやった。


「俺は何もしてねーよ、それよりクラスのみんなは何にもないのか?」


「何もって? みんな、聖夜が転校生を連れて外出てったーって騒いでたけど。そうだ、そもそもいつの間にシルアちゃんは聖夜のところにいたの? 気がついたら、私たちの輪にいなかったよね」

 どうやら、嫉妬に支配されていたときの記憶はないようだな。


「ごめんなさい、わたしトイレに行きたくなって、それで聖夜君に道案内を頼んだのですヨー」

 シルアがとっさに嘘の説明をする。下手ないいわけだ、俺に道案内を頼む必然性はどこにもない。


「えっ、なんで、聖夜にそんなの、女の子の誰かに頼めばいいと思うんだけど」

 イブは拳に顎を乗せて、首をかしげてる。イブの意見はもっともである。さあ、どうやってフォローしようかなあ。

 

 しかし、ここでシルアが余計な一言を加えてしまう。

「ほらあ、聖夜君はイケメンじゃないですか。だから仲良くなりたいなあと思って、道案内をたのんだんですヨ」

 ば、ばっか。それは大分よけいな騒ぎを生むぞ。俺はあわてて首を振り、そして教室の中を見渡す、案の定声は聞こえていたらしく、好奇の目がこちらを向いている。


「せ、聖夜がイケメンって、シルアちゃん大丈夫? アメリカではわからないけど聖夜は日本ではイキリ陰キャっていうのよ。絶対、シルアちゃんとは釣り合わないんだよ!」

 うわずった声で大声を上げるイブ、もともと声が大きいもんだから教室中に聞こえただろう、多分隣の教室も。それにしても、陰キャは性格であって顔とは関係ないと思うのだが。


「イケメンですよぉ、スタイルもいいし、何よりウタマロですよね」

 

 ばかっ、もいちどおまけに、ばかっ! ウタマロって言うのは外人が巨チンをさして言うときの古い言い方だよ。なんでそんな言葉知ってんだ? 多分イブには伝わらないと思うんだが。


「な、なにウタマロって、えっと、それじゃあシルアちゃんはひょっとして聖夜のことを・・・・・・」


「好きですよ、一目惚れでぇす」

 とシルアが言った瞬間、イブは背を向けて廊下沿いをどこかに向けて走り出した。


「お、おい、イブ」

 俺は呼び止めたが、止まることはなかった。

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