第14話「少女とナイフという悪魔」

「はあっ、はあっ、もうだめ」

 さすがのシルアも、8回目位の時には根をあげそうになっていた。一方のおれはまだまだ元気だ。なぜおれはこんなにも有り余っているのだろうか。


「終わりにするか、シルア」

 仁王立ちで、四つん這いのシルアの後ろで、立ちながら勃ちながら俺は尋ねる。


「何を言ってるのよ、まだまだよ」

 顔を上気させながら、息を荒くしてそう答える、さすがサキュバスこんなことではへこたれないということだ。

 瞬間、シルアの顔が曇った。視線を俺ではなくその後ろに向けて、目を見開いている。


「情けないわね、シルアおねぇ様……人間の男にいいようにやられてるなんて、本当に見損なったわ」

 そして、その背後から甘ったるい少女の声が聞こえた。

 振り返るとそこには、シルアと同じような格好をした少し小柄な女が腕を組んで立っていた。金髪のショートヘア、シルアと同じように頭からはくるっとした角を生やしている。


 サキュバス……だよな。


「ピアニッシモ!いつの間に」

 シルアは四つん這いだった姿勢から、すぐにベッドを背にしてシーツで身体を隠した。シルアとはいえ、同族にセックスを見られる恥ずかしさがあるのだろう。


「本当に情けないわ、通常空間でHしたりするから、私の接近に気がつかないのよ。恥を知りなさい」

 そう言って人さし指をシルアに向かって、ピンと指す。どうやら俺のことは眼中にないようだ。こんな状態で言う感想ではないと思うが、この子シルアほどの巨峰は持ってないけど、脚がとんでもなくきれいだ。よき。


「何しに来たのよ、ピアニッシモ」


「愚問ね、あなたたちを消しに来たに決まってるわ」


「誰の命令かしら、まさかあなたを最初に派遣するなんてね」


「質問に答える必要はないわ、サキュバスのおきてを破ったものは問答無用、万死に値する」

 そういって、ピアニッシモとよばれた女は右腕を天にかざすと、気が付けば手には、大きなナイフが握られていた。かなりの大きさ、剣というほど長くはないが、刃渡り50cmくらいはあるだろうか。

 そして、なんの予備動作もなくピアニッシモはそのナイフを前方にかざしながらシルアに突っ込んでくる。

「あぶなっ……」

「危ない、目を閉じて聖夜——」

 俺がシルアの前に立ちふさがって彼女をかばおうとしたとき、同時にシルアは俺の背中に手を当てて、またあの夢の空間へと送った。

 夢の空間に来たことで、ピアニッシモのナイフは空を切った。それは正しくないか、周辺にピアニッシモの姿がなくなったというのが正しい。


「あぶないわよ、通常の空間ならあなたは普通の男なんだから。精力が並みじゃないけど」


「そうだったのか、なんか大丈夫な気がしたんだけど」

 最近どれが夢で現実なのかわからなくなってきたのかもしれない


「今後……現実世界でエッチするのは危険かもねぇ、そっちの方が燃えるんだけど」

 いま、心配する状況はそこだろうか。


「俺は現実でも最強ってわけじゃないんだな……」

 とぼそっと言ったところで、俺の右肩のあたりに燃え上がるような刺激が走った。


「ぐっ!」

 いてぇつつ!

 右肩にナイフがっ、いたっい、あ、あつい!ぐあっぁ。

 血のしぶきがあたりを舞っている。


「夢に逃げるなんてずるいわね」

 ピアニッシモが俺の部屋の入り口から、ドアをすり抜けて入ってきた。ナイフの持ち主はもちろんこいつだろう、さらに空中に数十本のナイフを浮かべており、切っ先をこちらに向けている。


「気を付けて、ピアニッシモには何でも具現化する力があるわ」

 

 うわぁなんだそりゃ、チート過ぎないかその能力。しかも現実世界でも使ってたし。だが、今の短い時間の間で、、俺の肩の出血も痛みも止まっている、やはりこの世界なら俺は最強のようだ。


「とどめよ」

 宙に浮かぶナイフを一斉にこちらに投げつけてきた。

 千のナイフが胸を刺す! 言ってる場合じゃねえ。

 どうすっか、よけようがねぇ! よけられないなら、すべて叩き落すのみ。


「どどどどどどどどどどどどどどどどーーーーーーーーーーーーん」


 おりゃあ、一斉発射じゃーーーーー!

 俺は、有り余るエネルギーを特に方向を定めずに前方にスプラッシュさせた。以前、連射できたので、それの応用だ。

 広がった俺のエネルギーが、すべてのナイフと衝突し、飛んでくるナイフを吹き飛ばす。



「ぐっ……、なんという力なの」

 そういって、ピアニッシモは、その場で膝をついて震えていた。見ると体中から血を流している、はじき返したナイフがピアニッシモの肩と腹部、そして左足に刺さってしまったようだ。

 苦痛の表情でピアニッシモの顔がゆがむ。


「聖夜、とどめを刺して」

 シルアが後方から檄を飛ばす。

 俺はゆっくりと、ピアニッシモの方に近づいていった。


「くっ、殺せ」

 ピアニッシモは傷口に手を当てながら、なんとか立ち上がって、こちらをにらみつけてきた。しかし力の差を感じているのだろう、もういちど攻撃する気はないようだった、そして小刻みに震える姿がいとおしくさえ見える。


「聖夜、何を躊躇してるの! そいつはそうやって回復させているのよ、さっさとドーーンとやっちゃって!」

 シルアはせかしてくる、回復させているなんて言うのは見てわかるさ。


 しかしだ…‥。


 どうしよう、こんなかわいい女の子にとどめなんてさせねぇよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る