第38話「何度でも繰り返す悪魔」
起きたぁっ!!
無理やり身体を起こして目を開ける。
目の前には見慣れた俺の部屋の光景が広がっている。
相変わらず、部屋は汚い。
ベッドのシーツは洗ってなくてどれくらいだっけか、いつもお袋にシーツは自分で出さないなら私は絶対に何もしないといわれるが、何もしないまま早くも数か月。
あれ……、でもシルアとこのベッドでヤルようになってからは、結構マメに洗う様にしてるんだよな。だって、ほら、やっぱいろんな液がついちゃってるわけだよ、昔と違って、だから最近はマメにベッドのシーツをはがして、お袋に出すようにしてるんだ。だから、最近はお袋が褒めてた、『最近はマメにシーツ出すし、部屋もきれいになったね』 『それに少しかっこよくなったんじゃない? 彼女でもできた?』『お母さんは心配だったのよ、友達もほら健史君とかでしょ』『最近はイブちゃんもあんまうちに来てくれなくなってたから寂しくなってたけど、この間、来てくれてよかったわねぇ』『あらひょっとして、彼女ってイブちゃんかしら』『えっ、ちがうの、イブちゃんがお嫁さんに来てくれたらねぇ、孫も楽しみなのに』『えっ、うるさいって、朝っぱらから人の部屋に入ってくるなって?』『わかったわよ、出ていくわよ』
ふぅ、出ていったか。うるさいお袋だぜ、なぜ目覚めてそうそうお袋とおしゃべりしなきゃいけないんだ。
——と、突然背筋に凍るような悪寒が走る
『おい、俺を倒せたと思ってるんじゃねぇだろうな?』
低い声……
聞いたことがあるような、ないような。いや、この声はどこから聞こえてるんだ?体の中から聞こえる重低音が俺を震わせる。
恐怖する。
『お前は俺を呑み込んだままなんだよ、ずっと潜んでるんだぜお前の中で、お前を殺す機会をな』
——ま、まさか。
いや、すごい痛い思いをして、内臓ごとお前のことをぶっ飛ばしたはずなんだ。
まだ、貴様が体内にいるはずはないんだ!
「今度こそとどめを刺してやるぞ、シンデレラっつ!」
うん、そんな名前だったか。
俺をここまで追い詰めた敵の名を俺は覚えていなかった。
『ちがう、ちがう、おれはギギギリスだ、お前に呑み込まれただろ。あとシンデレラじゃなくてシラデレンな?』
……そうだ、そういえば、へんな黒い霧を俺は飲み込んでいた。すっかり忘れていた、便と一緒に流れたものと思っていたがそういうことでもないのか。
嫉妬の悪魔だったか、確か。
あの時も、そうだな。大変な戦いだったが、まさかまだ終わってなかったのか。
「どうするつもりだ、ギギギリス」
『どうもしねぇさ、俺はゆっくりお前の中で広がり続ける。そのうちにお前を乗っ取るさ。お前にどうすることもできない、残念だったな』
なんだと。
確かに俺にはどうすることもできない、シンデレラと違っている場所を特定できないし。シルアめ、全然吸い込んで大丈夫じゃなかったじゃないか、だまされたぜ。
「だましてないわよ、失礼ね」
「おおっ、シルア!? いつの間に」
本当に突然にシルアが現れた。いつの間に俺の部屋にやってきたんだ? いや、そもそもここは俺の部屋なのか?
「早く目覚めてくれないかしら、ほんと。さっきはいなくなったと思ったら、また夢の中にいるし……」
ああっ、そうだった。おれはシルアに起きてと言われて、目を覚ましたはずだった。ところがそうか、起きていなかったのか。
夢から覚めて、また夢だった。
よくある夢だが、夢の中で夢と自覚するのは難しい。
そうか、今回もまた夢の中にいるのか。全然わからなかったな。
「分かったシルア、今度こそ起きるよ」
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