第16話「切望という悪魔」
「そんな、な……」
ぐっだりとして、ベッドに横たわっているピアニッシモがか細い声でそう言った。汗によって全身がしっとりとしており、それもまたつやっぽくて、なおさら俺のA10神経を刺激する。
俺のギンギンは全然収まる気配がない。
「ばかな、まだ勃つの!? ば、化け物……本当」
ピアニッシモの言葉など無視して、ぐっだりしている彼女の腰に再び手をかけようとした。
ピアニッシモはすぐさま腰をひねって俺の手から逃げようとした。
「ちょ、ちょっと無理だってもうこれ以上は、あそこ馬鹿になっちゃうって」
「ということは、負けを認めるんだな?」
そういうと、こちらをとても悔しそうな表情で見る。そういう表情もまたいい、もしかすると俺はシルアよりピアニッシモの方がタイプなのかもしれない。
「……悔しいけど仕方ないか、私の負け……」
「そうか、じゃあそういうことなら戦いは終わりか」
「おとなしく退散するとするわ、安心して、シルア姉さまにもあなたにも今後手出しはしないわ」
それは少し残念だ、シルアはともかく俺には手を出してくれていいのに。
ピアニッシモとのセックスはシルアとは違って、俺により高い興奮を与えてくれる、シルアはどちらかというと彼女主導だが、ピアニッシモとは俺がかなり攻撃的に動くことができた。
まあ今回が戦いだったからかもしれないが。
「今後サキュバスは俺たちを襲ってこないということでいいか?」
改めて俺は確認を取る、敵はせめて悪魔と天使だけであってほしい。
「それは残念、少なくとも私の双子の妹のフォルテシモは黙ってないと思う、必ず私とシルア姉さまの仇を取りに来る」
双子の妹だ……?
「さっきからシルアを姉様とよんでるが、本当の妹なのか。ピアニッシモは?」
「いえ同族というだけ、先に生まれたら姉さまと呼ぶってだけ。それにほらよく面倒見てもらったから」
「よく、面倒見てもらったのに……殺しに来たのか?」
「仲良くしてもらったからこそ、掟。私の仕事なの……サキュバスの誇りを失ったまま生きていてもつらいだけ」
そう言って、ピアニッシモは表情を曇らせる。
そ、そんな悲痛な思いだったのか?
ほんの二日ほどしか一緒にいないが、シルアは辛そうどころか楽しそうに生きてるように思う。
「じゃあ、まだ襲ってくんのか、おまえら?何人いるんだよ、お前たちの一族は……」
「……何人かなんて私もわからないけど、シルア姉さまの親衛隊があと5人いる」
「親衛隊?」
「そうシルア姉さまに育てられたみんなで親衛隊のコケティッシュ6を形成している」
「何だそりゃ! なんだコケティッシュって、なめらかそうなティッシュだな、それに6って残り5人じゃないのか」
「もちろん私もメンバー、今日をもって脱会でしょうけど」
「……そ、そうか」
少なくともあと5人との闘いが待っているのか……まあでもサキュバスとの戦いは楽勝そうだし、俺もいろんな子とやれるわけだし、むしろ歓迎だな。
思わずその展開を考えてニヤッとしてしまう。
「何をにやにやしてるの? 気持ち悪い……はっ、まさか私の妹のフォルテッシモに……」
「その子はやっぱピアニッシモに似ているのか?」
ぐふふっ。
おもわず下衆な笑みがこみあげてしまう。
そうやってほくそ笑むおれを、何か汚いものでも見るかのような目でにらみつける。そういうピアニッシモの表情もまた良い。フォルテッシモちゃんに会うのも楽しみだ。
「……それにしても、また因果を壊したってことになるのかな。ピアニッシモだって本当なら俺を殺さなければいけないわけなんだろう」
「いえ、その因果の外にいるんじゃないかな。因果の外の存在、今更元の世界のルールなんて適用されないし、秩序を破壊せしめんとする存在になっているともいえるかも」
「……秩序を破壊……、そんな大層なものに」
「
そういえばシルアも言っていた。
天使たちも俺たちを狙うだろうと、サキュバスの襲撃はむしろありがたい限りであるが、まだ見ぬ天使の攻撃は正直恐ろしい。
「大丈夫よ……聖夜の力なら天使どもなんて怖くないわ。ピアニッシモももうわかったでしょう、聖夜の力を……。負けを認めてさっさと帰りなさい」
「シルア!?」
いつの間にか、俺とピアニッシモの夢の空間にシルアが入り込んできていた。
「趣味が悪いね、お姉さま。まだシてるどこだったらどうするの?」
「それを最初にやったのはあなたじゃない、もういいでしょ。帰りなさい、そして親衛隊にも言っておいて、手を出すだけ無駄だって」
そういってシルアは手の甲でシッシッと追い払うポーズをする。
「……分かった、まあ言うことを聞く人たちじゃないことは知っての上でしょうけど、私も含めてね。……まあいいかもう退散するわ、それじゃあねホーリーナイト、悔しいけど負けを認めていなくなるわ」
「……ちょっと、もう少しいてくれて……」
という俺の声を無視して、手も降らずにピアニッシモは忽然と姿を消していった。
一体どういう原理で現れたり消えたりしてるんだと思ったが、まあそこは夢の世界、どうにだってなるんだろうな。
「ずいぶん、ピアニッシモに執着するじゃない? ああいうロリっぽいのが好きなのかしらひょっとして?」
「……まあ、嫌いではないかもしれない」
それを言った瞬間、突然俺はシルアに唇を奪われて、強引に舌をねじ込まれた。
そして、そのままピアニシッモ戦の延長戦が開始されるのだった。
そして翌日の朝のHRのことである。
教壇には見覚えのある金髪ショートが、制服に身を包んで立っていた。
「今日からこの学校に来た、愛沢ピアニッシモです。みんなよろしくね」
この学校の転校のシステムはがばがばだった。
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