第57話「前兆なしの悪夢」
二つのエネルギーがぶつかりあい、まじりあったその時、音もたてずに二つのエネルギーはきれいさっぱりと消滅した。
「なんだと?」
おかしい、シルアの話なら俺のドーンは最強の力のはず。
たかだか敵の光線と対になって消滅するようなしょぼいもんじゃないと思ったんだが。
「なに、ぼーっとしてんの、早く逃げて!」
後ろからピアニッシモの檄が飛ぶ。
たしかに、はるか遠くだが増長天の目ははっきりこちらをとらえている。第三撃が来るのか!? やばい、早く隠れる場所を見つけなければ。
周辺の病院施設は、増長天の光線によって大概が消滅している、隠れる場所を探さなければ……いや、それじゃだめだ、隠れてるところが明らかならば、その場所ごと光線で消滅させられてしまう。
ぐあっ!
と失ったはずの左腕から激しい刺激を感じた。そうだ、忘れていたが腕を失っていたんだ。隠れる場所もない左腕もない、今までに感じたことのない危機的状況に追い込まれてると感じて、心拍数が上がった。
頭が真っ白になりそうなとき、目の前も真っ白に覆われた。
「!?」
周囲を見渡すと、あたり一面を雪のようなものが舞い踊っていた。吹雪の様に、あたり一面が真っ白になって、視界が奪われている。
体中に、その雪たちがまとわりつく。いや、これは雪じゃない……。
「紙吹雪……ピアニッシモの能力か」
ピアニッシモは軽いものならば物質を具現化する能力がある。目いっぱいの紙吹雪を空間中にばらまいたのか。
よし時間が稼げる。
「いったん、撤退しましょう、分が悪いわ」
頭の中にピアニッシモの声が聞こえる。紙吹雪の中を走りまわりながら増長天から身を隠す。
「現実に戻るってことか」
「ええ、仕方ないわ、このままじゃらちが明かないじゃない」
「無理だ、この空間をなくしたら、現実世界が大変なことになる」
「だからと言って、ドーンが通用しないのに、どうするのよ!」
「……このまま紙吹雪に隠れながら、接近しよう。悪いがこちらからはあいつは丸見えだ」
サイズの大きさがあだとなったな、増長天。いくら紙吹雪の量が膨大で視界がわるくても、あいつのでかい影ははっきり視認できる、こっちからはな。
いや、そもそも、近づく必要なんてない、こっからもう一度ぶっ放してやる。この視界なら、俺にドーンに光線をぶつけることもできないはずだ。そういって、俺はドーンの準備を始めようとする。
「いいから、今の間にどっかに、隠れて聖夜!」
そのとき、ピアニッシモ以外の声が聞こえた。
「ヒバリ!?」
いつの間にか俺の背後にはヒバリがいた。
「いくら聖夜でも、長距離からあの巨体をぶち抜くのは無理だから」
「わ、わかんねーだろ」
「あなたの攻撃の威力は距離に反比例するわ」
「……」
「いいから、ヒバリに手があるからっ、今は隠れて」
そういわれて、俺は道の端の側溝に、蓋のない個所を発見したのでそこにとッさにもぐりこんだ。それなりに幅のある側溝だ、ここなら、すぐには見つからないだろうが、においがひどい……。
『おらぁぁ、ざこがあーー、どこに消えやがったぁっ?』
空中を舞う紙吹雪を振り払いながら、増長天は大声で叫んでいる。歩くたびにずーシーンずしーんという振動が、側溝で寝そべっている俺の体をも揺らしていく。
(おい、ヒバリ手があるんだろうな)
俺はテレパシーで、ヒバリと会話をする、全く便利なものだ。ついでに俺の夢の中なんだからもっと便利に、あいつをぶっ殺す手段はないものだろうか。
(あるよ、近距離からドーンをぶちかませばいいの)
……うん? この子はバカなのかな?
「だから、それは無理ってことなんだろ」
それができるならとっくにけりはついている。
「お兄ちゃん一人じゃ無理、だけどヒバリが協力すればできるわ」
ほう、そんな方法が……
「ちょっと、ビバ子! あなた何を言ってるかわかってるの?」
そこにピアニッシモの声が割り込んできた。
「わかってる、お姉さま。だまってて、分かってるから」
「なんだ、なんだ二人だけで会話するなよ、何をしようっていうんだ」
「……ヒバリの力でお兄ちゃんのパワーを増強させるわ」
ほう、そんなことができるなら、さっさと教えてほしいものだ。
「で、でも、ビバ子、いいの?」
またしても、うろたえた様子でピアニッシモがいう。
「おねぇさまは黙ってて、ヒバリはお兄ちゃんに借りもあるし感謝もしてるから」
「ビバ子……」
「なんだ、なんかリスクでもあるのか」
ここまで。ピアニッシモが躊躇するとはただことじゃない。
「リスクは、ヒバリとお兄ちゃんが今から、一発やる時間が必要ってこと」
「は?」
「お兄ちゃんの、興奮が最大の必要があるの。戦いの最中にそれは大変なリスクかも!」
結局そんな展開かよ!
しかも、この側溝のろくに身動き取れない場所でやれってか。
「おねぇ様は、時間稼ぎお願いね」
「……ビバ子、いいのね?」
「問題ないわ、おねぇ様お願いね」
「わかった」
「お兄ちゃんはそこにいて、すぐにひばりがいくから。お兄ちゃんは動かなくていいの、私が上になってすぐにイカせてあげるわ」
おぉ、そりゃあすげぇ自信だな。
まあ、ヒバリは確かに締め付けがすごいからな。
「前戯する暇はないってことか?」
「モチロン、いきなりドンよ!」
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