第45話「背徳の信徒」

「バカなことを言うな、俺は君に自分を大事にしてほしいんだ」


「……」


「それに俺はヒバリじゃ興奮しねぇ、抱こうにもだけねぇよ」


「ふぅん」


 俺は精いっぱいの強がりを言って、少女の誘惑を断ち切ろうとする。そうだ、こんなことを認めちゃいけない。ミイラ取りがミイラになってどうする、俺はヒバリを普通の生活に戻すんだ。


「でも、その割には、お兄さんのここはヤバイみたいだけど」


 いつの間にか俺の隣に寄り添っていたヒバリは、そっとその小さい手を俺の鼠径部に添えていた。た、確かに気が付けばモッコリしていた。

 ば、馬鹿な……。

「ちがう、これはただの朝モッコリだ! いや夕立ちだ」

「ふうん、ほんとかなあ」

 ヒバリは俺の首筋に手を当てながら、軽く俺の耳に息を吹きかけ、そして耳をなめる。

「ひゃぁっ」

 思わず俺は変な声をあげる。

「じゃあさ、チューだけしてよ。それでひばりは満足するから」

「チューだけって……いつもしてるじゃないか」

「あんな挨拶のチューじゃなくて、大人のキスがしたいの。——あのね、パパとかお客さんともなるべくキスはしないようにしてるの、だから、とっておき」

 そういいながら俺の正面に回ったヒバリは俺の頬に両手を当てる。その瞬間俺の鼓動が跳ね上がった。

 俺は、完全に翻弄されていた。

 年端もいかない女の子に。


「……いやいやダメだ。そういうのは好きな奴に取っておけよ」

「好きだよ」

「はっ?」


「私は聖夜のことが好き」


 なぜだ、なぜこんなにドキドキするんだ。


「だから、ね、いいでしょ?」


 そうして、俺はこくりとうなずいてしまった。少女は両手を頬に当てたまま、ゆっくりと、舌を俺の唇の中にねじ込んで、ねっとりと舌をからませるのだった。

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