第11話 放課後
ここは確か、製造棟だ。実験で使う魔道具や外部からの依頼で様々な物を作る場所。船が格納してある倉庫とは渡り廊下で繋がっており、僕達はそこに向かう途中でダビド達に襲われ、近くにあった物置き部屋に連れ込まれた。
僕は大柄の兵士2人に抑え込まれ、口も塞がれてて声すら出せない。ミスティさんは両手を縛られた状態でダビドに1つ先の部屋に連れてかれた。その時の口ぶりからして、ダビドがミスティさんに酷い事をしようとしているのは明らかだ。
ミスティさんも大概下品ではあるが、レイプされるのは決して望んでいないだろう。ましてやダビドなんて奴、死んでもごめんのはずだ。だがダビドも国のトップまで上り詰めた一流の魔術師であり、ミスティさんが自力で何とかするのは難しい。魔術は封じられているだろうし、単純な腕力でも敵わない。
ここは僕が何とかするしかない。それは分かっているが、身体は完全に拘束されている。
このままでは、ミスティさんを救えない。
かなりイレギュラーな形ではあるが、結婚を約束した相手だ。
そんな女の子を1人救えなくて、どうやって世界を救えるというのか。
自分の無力さが嫌になる。しかし今そんな嫌悪をしていても、無情にも時は流れていく。僕は泣きそうになりながら、隣の部屋の扉を睨んだ。
「まったく、処刑されたはずのお前がどうして生きてるんだ?」
兵士の1人が嘲りを込めてそう尋ね、もう1人がそれに同調した。
「妙な魔術で助かったみたいだな。他の奴らもここにいるのか?」
僕は当然答えない。その態度が気に食わなかったのか、腕に力が込められてミシミシと骨が音を立てる。奥歯を噛み締めて痛みに耐える。
「お前が答えなくても結局同じ事だがな。今からダビド様がミスティの身体に訊く」
「あの女、すけべな身体してたなぁ。俺たちもお零れをもらえるといいが……」
「くっくっく……。他の奴らも出来るだけ生きて捕えよう。その分楽しみが増える」
今すぐ最大火力で
しかし、今の僕には何も……。
「さあ、そろそろ始まるかな。あの天才魔術師がどんな喘ぎ声を出すか、実に興味深い」
僕は目をつぶった。現実逃避の為ではない。何かこの絶望的な状況を打破する手が無いか、必死に考える。何かあるはずだ起死回生の手が……。
その時、扉の向こう側からミスティさんが大声で叫んだ。
「ブレスレット!」
兵士達が顔を見合わせる。僕がブレスレットをつけているのに気づく。
取り上げようと動いたが、僕がそこにありったけの魔力をそこに込める方が僅かに早かった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっ!!!!! ……んっ……あふぅ……」
次の瞬間、物凄い声が響いた。
ミスティさんのではない。明らかに男の野太い声だ。しかしその声色には恍惚とした感情が篭り、耐えきれなくなった快感が溢れ出したかのような艶があった。端的に言えば物凄く気持ち悪い。
そして沈黙。兵士達が慌てている。片方が僕から離れて立ち上がり、中の様子を伺おうとドアの前に立った。耳を当てようとした瞬間、扉が吹っ飛び兵士が後方の壁に叩きつけられた。
中から出てきたのは服をはだけさせたミスティさん。ダビド氏が持っていた杖を奪って、何か魔術を使ったらしい。そしてその背景には、下半身丸出しのダビド氏。ケツの穴からは例の魔ナニー用のエロ魔石に縛り付けた紐が出ていた。
「アナルに極大破壊魔法ぶち込んでやったよ!」
パワーワードを放り込んできたミスティさんに、残った1人の兵士が突っ込んでいく。
ミスティさんは新たに魔術を発動しようとしたが、あとちょっとの所で捕まってしまった。
だが兵士がいなくなったという事は、代わり僕が自由になったという事だ。僕は立ち上がり、兵士に走って近づき、その顔に手をあてる。何をすべきかは、ミスティさんなら言わなくても分かるはずだ。
僕の足首をミスティさんが掴み、
「解放!」
ミスティさんを押さえつけていた兵士の身体が吹っ飛び、派手な音を立てて壁に叩きつけられた。そして力なく落ち、先に飛んだ1人の上に覆いかぶさる。どうやらあまりの衝撃で気絶したようだ。
「いやマジ危なかったわ! なんかあのハゲがあたしに無理やり挿入しようとしたからさ、従順なフリしてチンポ咥えてやるって言った訳。そしたらあいつアホだからそれに乗ってきたのよ。んで、隙を突いてアナルに魔ナニー用の魔石突っ込んでやった。いやマジでパンツの中に仕込んでおいてよかったわ」
片乳放り出して饒舌にそう語るミスティさん。
「と、とりあえずちゃんと服着てください」
「あ、ごめんごめん」
まあ、過程はどうあれ、良かった。ダビドの強姦は未遂に終わって、ミスティさんも元気なようだ。まさか魔石がこんな事の役に立つなんて思いもしなかったが、人生とは分からない物だ
「あ、あれ回収しなきゃ」
そう言ってミスティさんがダビドのアナルに向かおうとしたので、「いや、いいから!」と僕が止めた。おっさんのケツの穴に突っ込んだ物を再度使う気だったのだろうか。ヤバい人だ。
「お! やっとタメ口聞いてくれた。打ち解けてきたねえ?」
この人の底抜けに明るくて楽観的な性格には頭が下がる。
時折下品すぎるのがちょっとアレだが、自然と頬が緩む僕がいるのも事実だ。
「んで、どうしよっかこいつら」
「……とりあえず、師匠を呼んできます。ミスティさんは何かで縛っておいてください」
「はいよー」
その後、持って来た木箱に3人を入れてこっそり旧研究棟に連れ込んだ。
3人を念入りに縛り上げ、その前で作戦会議を始める。メンバーはライカ以外の全員。顔の割れていないライカには、学生のフリをして軍の様子を見に行ってもらっている。
「死刑で」
まずはクラウが最も簡単な解決方法に1票を投じた。
意識を取り戻したダビドは、口を縛られているが、恐怖に満ちた目で僕達を見ていた。
「ミスティ殿への強姦はともかく、ランドに暴力を振るったというのは許せないね」
レインさんもベッドからわざわざ起きてきてくれた。無理して欲しくないというのもあるが、軍に関して1番詳しい彼女にいてもらえるのはありがたい。
「え? あたしの貞操ってランドへの暴力より軽いの?」
ミスティさんも当然処分には関わる。
「どうせ顔も見られたんだし、生きてるのがバレた状態で戻したら私達の立場が危ういわ。まだ試験受ける為にここに滞在しなきゃならないのだから、ここは死んでもらうのが1番ありがたいと思うんだけど?」
クラウの判断は物騒だが理に適っている。ネッドの時もそうだったが、死人に口なしというのは確実な方法だ。
だが、ネッドの時と同様に、僕の立場は変わらない。
「……いや、あの、それは分かるんですが、流石に殺してしまうのはちょっと……」
「はぁ? またそんな甘い事言ってるの? 自分のお嫁さんがレイプされそうになったんだから、金玉切り取って殺すのが妥当じゃないかしら」
男にとっては最大限に恐ろしい事を平気で言うクラウに僕は思わず引きそうになるが、ここで負けるとかわいそうな死体が3つ出来る。
「何かこう、もうちょっと平和的な解決が出来ないものでしょうか……」
すると、師匠がぽつりと言った。
「脳が欲しい」
「え?」その場にいた全員が引き返す。
「これからの研究に人間の脳が必要なのだ。やや危険な作業になるので、こいつらから引き出す」
ダビド、ごめん。終わったよ。
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