第7話 希世の才覚ミスティ

 わざわざ僕1人の為に試験の日程を立ててもらった上、はるばる学園長を王都まで呼び、様々な人に協力してもらった事には感謝しているが、そのせいで僕の緊張感は最大まで高まっていた。


 あれからも勉強は続けていたし、王都に来てからはレインさんという強力な教師も1人加わった。何としてもプレッシャーに打ち勝ち、魔術師資格を取る必要がある。


「……ランド、これ」


 試験が始まる直前、人目を避けるようにミスティが僕に近づき、珍しく低いトーンでこそこそと何かを渡してきた。小さな紙? 僕はそれを広げて、すぐ畳む。


「……教授自らカンニングを推奨してどうするんですか?」


「だってええ不安なんだもおおおおん」


 王都に来てからもミスティは相変わらずミスティで、未だにこの人に教授という役職と権力を与えた学園の判断には若干の疑わしさが残る。


「そもそも試験を受けるの僕1人ですし、カンニングなんて出来るはずないですよ」

 いまいち納得していない様子のミスティに紙を返し、まずは筆記試験が始まった。


 ……。


 選択した5教科の試験が終わった。正直、手応えは、ある。魔術史ではライカが作った試験対策用の問題がドンピシャで出たし、魔導工学はミスティが試験を作っているのもあってはっきり言って過去問よりかなり簡単だった。魔導力学の方は結構苦戦したが、それでもポイントは押さえられたと思う。術師倫理の面接でもかなりお手柔らかにしてもらったし、性質学は単純に得意だ。


 本来なら結果が出るまでに1ヶ月ほど時間がかかるが、今回は特別試験なので明日にも合否が言い渡される。心の準備を出来ないというデメリットもあるが、もやもやして1ヶ月過ごさなくて良い事をプラスに考えよう。


 試験が終わって自室に帰ろうとした時、「ランド君」後ろから呼び止められた。安寧を感じさせる優しい声、マーブック魔術学園の学園長だ。


「試験、お疲れ様でした。あなたならきっと大丈夫でしょう」

「あ……ありがとうございます。色々と便宜を測ってくれて、感謝しています」

「老い先短い人生ですが、まだ死にたくはありませんもの。私はいくらでも協力しますよ」

 そう言って微笑む学園長。良い人だな、と思う。


「ところで、ミスティとサニリアとはもう関係を持ったのですか?」


 突然に放られた質問に、僕は硬直する。どう答えたら良いものか。だが、師匠の師匠であるこの人の前ではどんな嘘をついても無駄な気がする。


「い、いえ、まだです」

「そうなのですか。2人は魅力的ではない?」

「そんな事はありません。とても、その、2人とも魅力的です」

「ふふ、それなら良かった。あの子達はそれぞれ別の方向で誤解されやすいけれど、どちらもとても繊細で傷つきやすい子達ですから、はじめての時はよろしくお願いしますね」


 学園長にそんなつもりはないのだろうが、これは試験以上のプレッシャーだ。

「……分かりました」


 そのまま自室に戻ると、そこでミスティが待っていた。


 局部が開かれたエロ下着を着込んでいる。


 ……いやこれの一体どこが繊細で傷つきやすいんだ!?


「ランド、来て?」


 ムードもへったくれもなくミスティが僕をベッドに誘う。利用した事はないが、きっと娼婦というのはこんな感じなのだろうと思う。


「……ミスティさん、今日はちょっと試験で疲れてまして、出来れば後日にしてもらえると助かるんですが」


 僕の言葉が届いていないのか、ミスティはベッドの上で両足を大きく開き、ピンク色をした凶器をこちらに向けた。


「ミスティのMはM字開脚のM」

「意味が分からない」

「ちょっとMっ気もあるからその冷たい目、イイ……」

 どうやら僕を逃す気はないようだが、せめて抵抗を試みる。


「あ、そういえば試験の件はありがとうございます」

「ええ!? こんなどエロい子を前にしてなんでそんな冷静でいられる訳?」

 どエロい自覚はあるようだ。


「もうサニリア以外とはやっちゃったんでしょ? あたしのそんな変かなぁ?」

 バレていないとも思ってはいない。


「……あくまでも僕の主観ですが、そんなにぐいぐい来られると、それはそれで男としては引くもんなんですよ。ちょっと恥じらってくれていた方がその、グッとくるといいますが……」

 自分で何を語ってるんだという気にもなったが、間違った事は言っていない。それを聞いたミスティはぱたりと足を閉じ、わざとらしくくねくねと恥ずかしがって見せた。遅すぎる。


「ねえー! やろうよー! もー!」

 最終的には駄々こねである。ほとんど裸に近い格好のまま、僕の服の裾を掴んでぐらぐらと揺らしてくる。もう何度目か分からないがまだ言おう。この人本当に教授か?


「……分かりましたよ。ただ、あんまり変な注文しないで下さい。普通にしましょう。その変な服も今すぐ脱いで」

「え? 脱がしてくれないの?」

「耳イかれてるのかお前」

 思わず口に出してしまったが、ミスティにはクリティカルヒットしたようで、ぞくぞくと背中を震わせている。


「あっ、今の感じイイ。もっと言って?」

 バカにつける薬はない。


 ミスティ  386%→413%


 ミスティが叫ぶ。

「も、もう1回!!!」


 ミスティ 413%→427%


 ミスティが叫ぶ。

「はぁ……はぁ……まだまだ!」


 ミスティ 427%→431%


 ミスティが叫ぶ。

「も……もう駄目! 限界! ……え?」


 ミスティ 431%→457%


 ミスティが叫ぶ。

「も、もう無理だってばぁ! ごめんなさい! 許してぇ!」


 ミスティ 457%→479%

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