第22話 謹慎
「まったく、生きづれえ世の中だな」
サイトウは自室でYoutubeを見ながら2日前のことを思い出していた。
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「サイトウさん、そういうのは最近じゃだめなんですよ」
「んなこといわれたってなぁ、おれが会社に入った頃なんて課長が飲み会で女のケツ触ってたがお咎め無しだったぜ」
「ここは日本の建設業界ではなくて外資系企業です。それに20年前も経てば風潮も変わります。オフィスでタバコ吸ってた時代とは違うんですよ」
「そいつあわかんだけどよ、おれがここに来る前だってこの程度で怒られやしなかったと思うんだが」
「ここ数年で変わったんですよ。適切でない発言は控えていただかないといけません」
「知るかよ、おれは2012年からずっとここにいる。外で生きてるおめえらとはちげえんだよ」
事務員はバツの悪そうな顔を一瞬してから笑顔でいった。
「失礼しました。ユーザーさんに使っていただけてるのはworkerさんたちのおかげですし、サイトウさんより歴の長い方はそうたくさんはいらっしゃらない。本当に感謝してるんです。でもだからこそこれからもご活躍いただくためにもご理解いただかないといけないのですよ。イノウエさんもそうですがこれからworkerとして来ていただく方の価値観はもっと変わってきます。そういった方々とも今後ご一緒に仕事をしていただくためにも、今回は謹慎を受け入れてください」
「よく言うぜ、検索履歴からExcel職人割り出しておいてここに連れてきてるのはてめえらじゃねえか」
「ユーザーさんも増えていくので我々も優秀な職人さんのスカウトのためのデータ収集に余念がないのですよ。最近はなにかととれるデータも増えていましてね。まあ我々もサイトウさんのご負担を楽にできるようがんばりますんで」
「わかったわかった。今後の仕事のためってこったな。謹んで休ませていただくとするよ」
「ありがとうございます。そうそうご要望いただいていた映画の追加ですが、アカウントにいれておきました。せっかくのおやすみですし、新作でも見てください。『シン・ゴジラ』とかどうですか?あとはインド映画ですが『バーフバリ』もいいですよ」
「ゴジラ?懐かしいなおい。インド映画ってのはあんまり見たことねえがおもしれえのか?」
「日本でも大ヒットしてます。中身はまあ見てのお楽しみということで」
「ふうん。洋画はねえのか?洋画は」
「T2をいれておきました」
「なんだそりゃ、ターミネーターなんて今更言うなよ」
「トレイン・スポッティング2ですよ。トレイン・スポッティングの20年後の続編です」
「おお、そいつあいいじゃねえか。ありがとよ」
「いえいえ、今回の件は申し訳ございませんが、またご要望があればなんなりとお申しつけください」
それからサイトウが見た映画の手前にはスキップできないダイバーシティ研修動画が差し込まれていた。
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