第4話 関数を処理する方法について

「え、それどうやったんですか?」


 サイトウが処理した関数はセルに吸い込まれ、セルをほのかに黄色く輝かせた。セルには計算結果らしきものが表示されている。


「フォースだ、フォースを使え」


「いや、今そういうのいいんで」


 サイトウは舌打ちして説明をはじめた。


「基本的には触れて名前を唱えればいい。ただし唱えながらその式がどのように計算されるのか、それをイメージする必要がある」


「イメージ?」


「いまのSUMだったらB2からE5までのセルを足してやるんだな、そういうことを考えながら唱えればいい。実際の演算結果まではわからなくていいんだ」


「簡単ですね」


「ただし実行するためにはその関数のことを理解し使いこなせている必要がある。わかりやすくいやあ、教科書やガイド見ながら関数書いてるやつには無理ってこった」


 なるほど。それでExcel職人が集められているのか。しかしおれだって普段遣いしている関数は集計や参照、文字列処理などごく一部だ。


「関数っていくつあるんですか?」


「いまだいたい400ぐらいだな」


 おれは少し衝撃を受けた。Excel職人として数々の仕事をこなしてきたつもりだった。しかし使ったことがある関数はいくつあるだろうか。100、いや50もないんじゃないか。使いこなしている関数なんて……。自信がなくなってきた。


「不安になってきたか?あんま心配しなくていい。高度な数学や金融関数には特殊部隊があたることになっているし、基本的にはおれたちworkerの適性や能力をもとにクエストが割り振られてっからな。まあ焦らず経験積んでけや」


「ひょっとすると関数を処理していくと経験値が溜まってレベルが上っていくってことですか?」


「は?」


「いやなんでもないです」


 話していると近くのセルから新しい関数が浮かび上がってきた。サイトウがアゴでやれと言っている。おれは関数に近づきそして叫んだ。


「アベレェエエエエエジッ!!」


 関数はセルに吸い込まれ、演算結果が表示された。満足してサイトウのほうを振り返ると、別の関数に触れて、ぼそっと「サム」とつぶやいていた。さっき叫んだときと変わらず関数はセルに吸い込まれていった。


「えっ、叫ばなくていいんですか」


「ありゃあなんつうか新人向けパフォーマンスってやつだな」


 くそやろうが。






 その後、サイトウとおれはちまちまと現れる関数を処理していった。


 研修現場は正直いって楽だった。でてきたのはSUMとAVERAGE、IFぐらい。関数の形は種類によって異なるようでIFはわかりやすくクエスチョンマークだった。


 しばらくなにも動きがなかったかと思うと、電気が消えた。サイトウは言った。


「この現場はここまで、帰ってビールだ」


 帰りの車に乗り込むと、黒電話の音が鳴り響いた。サイトウがスマホを取り出し話し始める。そのスマホはiPhoneに見えた。


「ああ、サイトウだ。近いぞ。え?なんだって?なんでそんなとこ1人で向かわせたんだ?わかった、すぐ行く」


 サイトウはため息をつきながら言った。


「ヘルプが入った、もう1件いくぞ。ビールは後回しだ」



 ※今回の関数

 AVERAGE https://support.google.com/docs/answer/3093615

 IF https://support.google.com/docs/answer/3093364


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 この小説はSpreadsheets/Excel Advent Calendar 2018のために書いているのですが、アドベントカレンダーの期間だけで書ききれる気がしてこなくなったので担当の日にかかわらず書いていこうかなと思って書きました。


 そういうわけで僕はアドベントカレンダー登録が埋まっても書き続けていく所存なのでどうかアドベントカレンダー登録してください。あなたのSpreadsheets活用記事を物語の肥やしにしたい。

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