第65話 部長のExcelマナー

「山下部長は…、ぼくが行きていた頃担当していたクライアントの担当者です」


 山下部長、いや山下はマジでムカつくやつだった。もしらないクセに偉そうにおれの作ったコピーやターゲティングにあれこれ的はずれな注文ばっかりつけてくる。その結果で成績が良けりゃ「ほら言っただろう」、悪けりゃ自分の注文を棚に上げておれのせい。


 輪をかけて最悪なのは、おれの提出するExcelのレポートにくだらねえ文句ばかりつけてくることだ。罫線が見にくい、色づかいが悪い、すべてのシートでのカーソルをA1セルにあわせてから保存しないのは失礼だ、xlsxは開けないやつがいるかもしれないからxlsで保存しろ。マナーだかなんだか知らないが、とにかく仕事の本筋でないことで文句を乱発。おれをおとしめて優位に立ちたいだけなのはわかっている。


 そういう最悪なやつだった。GoogleSpreadsheetsの中に来てまでやつの顔を見ないといけないなんてひどすぎる。




「なんでその山下さん?を思い浮かべたのかはしらねえが、仮にも知り合いってことだからやりにくいだろ。タカハシは下がってろ」


 サイトウはそう言うが、おれとしてはそうはいかない。


「いや、大丈夫です。やらせてください。むしろ積極的に殴ってやりたいぐらいです」


 本当だ。打ち合わせ中になんど拳をこらえたことか。


「…かまわんが、あまりアツくなるなよ。おれたちはあくまでGoogleSpreadsheetsのworkerで関数の処理が仕事だ、そしてあのおっさんは山下じゃなくてIMPORTRANGEだ。いいな?」


おれはサイトウがそういい終わるのを待たずに駆け出した。




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「やましたああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!しねぇえええええ!!!」


 おれは金属バットを山下部長の腹に叩き込んだ。


 山下部長の腹は鈍く不快な音をたてて凹み、山下はよろけた。


「ッるぁ!!!」


 山下は反撃する様子もないがおれは容赦しない。山下をバットで滅多打ちにしていく。山下は苦痛の表情を浮かべるでもなく、無意味にニタニタした顔を維持している。


「クッ、気色わりいんだよ!!」


 部長の頭にバットを振り下ろす。硬い粘土を殴ったような感触、こいつの身体はどうなってるんだ。後ろに倒れ込んだ部長の頭は少し凹んでいるが血の一滴も出ていない。おれは肩で息をしながら山下を見下ろし、その顔に向かってバットを振り下ろした。



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タカハシの心情としてExcelマナー批判のようなことを書いていますが、作者がそれらすべてを批判的にとらえているわけではないことを付記しておきます。


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