第54話 UNIQUEを剥がせ

「サイトウさん。あれ、しゃべってますけど…」


「ああ、しゃべる関数ははじめてだったな。たまにいるんだよ」


「こっちのしゃべってる内容も理解できるってことですか」


「いや、あいつは決まりきったセリフを言ってるだけで、特に意味はない」


 この世界はいったいどうなっているんだ。


「まずはUNIQUEを剥がすぞ」


 おれは盾とバットを握りしめるおれにターミネーターが足早に近づいてくる。おれはバットを振りかぶって威嚇するが、やつはためらうことなくバットの先端をむずと掴む。


 想像通りのひどく強い力であっさりとバットを奪われ、投げ捨てられた。


「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 雄叫びをあげながらサイトウがターミネーターの背中にバットを叩きつける。


 ごん。


 鈍い音がしたが、少し頭を傾けた程度で効いている様子はない。おれを無視してサイトウに向き直り、殴りつける。サイトウは盾を構えて防ぐが、盾ごと大きくふっとばされて転がっていった。


 あ然としているおれの盾をターミネーターは素手で薙ぎ払い、おれの首根っこをつかみ軽々と持ち上げる。


「頭を冷やせ、チンポ野郎」


 ターミネーターはなんの脈絡なく映画のセリフをつぶやく。やめろ。緊張感がなくなる。おれは関数の手首を掴み足を振って抵抗するが、微動だにしない。


「ユニーク」


 おれの持ち上げる手の力が緩み、ばたりと落とされる。サイトウが後ろから近づいて、UNIQUEを処理したようだ。ターミネーターは大きく目を見開いて、おれとサイトウから距離を取る。


「ゲホッゲホッ…。ありがとうございます」


「いいか、とにかく処理しちまえばこっちの勝ちなんだ」


 関数の周囲を稲妻が渦巻き、人の皮がチリチリと燃えるように剥がれ、金属のボディが露出していく。UNIQUEは処理できたようだが、むき出しのFILTERが現れた。おれは盾を拾い身構える。

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