第68話 明るい光

「ご家庭でできる火炎放射機かよ。おめえはそういうのどこでおぼえたんだ。キレる若者ってやつか」


 めずらしく助けができたかと思ったが必要なかったのだろうか。


「Youtubeですよ。サイトウさんはユーチューバーの動画とか見ないんですか?」


「おれは映画しか見ねえんだよ。おい、それより探せ」


 IMPORTRANGEはどのような形で現れてもその内部にビー玉のような形のコアを持っている。切り落とされようが燃やされようが、コアさえ残っていれば永遠に再生し続けるらしい。再生などさせてたまるものか、山下の顔など二度と見たくはない。


 おれたちは山下部長の燃えカスを探った。燃えカスがすこしずつ集まろうとする動きの中心にキラリと光るそれはあった。


「インポートレンジ」


 サイトウが拾い上げて処理する。コアがセルに吸い込まれ、部屋中が黄色い光で満たされる。IMPORTRANGEでデータが書き込まれた範囲はかなり広かったようだ。それはこれまでのどのクエストでみたよりも明るい光だった。サイトウが振り返って言う。


「おつかれさん。今日は助かったわ、ありがとよ」


 サイトウに感謝されたのははじめてかもしれない。今日は山下部長を見て取り乱してしまったがなんとか挽回できたということだろうか。なんとなくおれは、workerとしてのこれまでの仕事を思い返し、成長したような気分に浸ったのだった。



 ##################



「しかし、関数ってのはなんでああもわかりやすく映画のキャラクターに似てるんでしょうね」


 今回のクエストで処理したIMPORTXMLやIMPORTRANGEは思い返すとゴースト・バスターズそのものだった。サイトウがイキイキしているのも無理はない。関数たちの姿はいつもそうだ。いかにもジブリに出てきそうなSUMIFS、明らかにマトリックスのQUERY、見てないけど効く限りプレデター丸出しだったDPRODUCT、どいつもこいつも露骨に映画のキャラクターだ。偶然では済まない。


「おめえ、そりゃ似てるも何も作ったやつ趣味だろ」


「あれ?タカハシさんって開発者、会ったことないんでしたっけ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る