第49話 結合QUERY関数の処理

 おれたちは少し身構えて様子を見た。ビームを撃ってくる気配はない。


「よし、エラーじゃなさそうだな。右の1体はおれがやる。左はおめえら2人でやれ。タカハシ、おれのチェーンソー使っていいぞ」


「え、サイトウさんの武器は…」


「どうにかなるだろ」


 気遣ってはみたものの、たしかにサイトウなら武器なしでも処理できるだろう。おれはチェーンソーを受け取ってエンジンをかけた。





「タカハシさんは無理しなくていいですよ、最低限ケガしないように」


 イノウエの言葉におれは少しムッとした。たしかに今日は活躍どころはないが、そんな言い方はないんじゃないか。QUERYの足の一本がこちらを探るように揺れる。さっきまで意識していなかったがひとつひとつの先端はヘビの口のように動く爪がついている。


 先端を開きながらヘビが噛み付くようにおれの方にむかってきた。オーケー。大丈夫。おれは落ち着いてチェーンソーを正面にかまえ、むかってくるQUERYの足に押し当てる。


 ガガガガガガガガガガガガッ。


 先端から割れた足が使い物にならなくなって垂れ下がる。ダメ押しで更に根元にチェーンソーを差し込み切り落とす。まずは一本。


「大丈夫ですか、わたし一人でもいけるんで下がっててもいいんですよ」


 イノウエがQUERYの攻撃をかわしながら言った。


 なんなんだこいつ、なめやがって。おれのほうに振り下ろされたQUERYの足をかわし、その足を切り落とした。順調だ。いけるぞ。


「足の1本や2本切ったところで調子に乗らないでくださいね。危ないですよ」


「大丈夫です。こいつそこまで動きも早くないので。イノウエさんこそお疲れなら下がっててもいいんですよ」


 おれはQUERYに正面からにじり寄る。近づいてきたおれに注意を向け、QUERYは残った足をすべておれに向ける。爪をカチカチとならし、どこからおれを刻むか考えている。


「うわぁああああああああああ!!!」


 チェーンソーを十字に振って威嚇する。しかし重い。こんな使い方をする武器じゃないはずだ。


ギャギャッ。


 近づいた爪を切り落とした。


カチカチ。


 視界の端に金属が見える。振り向くと爪がおれの頭を挟み潰そうとするところだった。



 やばい、死ぬ。






「クエリー」


 QUERY関数の動きがとまり、ゆっくりと形を失って沈み込んでいく。


 消えていくQUERYの影からイノウエが出てきて言った。


「いやあ、うまくいったうまくいった」


 こいつ、おれのこと煽ってオトリにしやがった。




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「さて、どうしようかな」


 サイトウは考えていた。手榴弾は残っている。これで一発で片付けてもいいんだが、今日はあと何体出現するかわからない。在庫を残しておきたい。時間を稼いでイノウエとタカハシの合流を待つという手もあるが、さてどうするか。


 サイトウはどちらも選択しなかった。どちらも張り合いがないからだ。サイトウはカバンから折りたたみサバイバルナイフを取り出して刃を出し、QUERYに向かって駆けていった。


 正面から突っ込んできたQUERYの足をくるりとよけて左にかわす。左手から更に足が振り下ろされるが、かわした足をくぐって盾にして防ぐ。盾になった足はだらりと垂れ下がって機能停止した。右手から複数の足が爪で切りかかってくるのをサバイバルナイフで捌き、一瞬の隙をついて壊れた足を再度くぐって逃げる。ナイフを振りながらQUERYの胴体の左手まで抜け出る。


 ちらりともう一体の様子をみるとタカハシが真正面から対峙している。あいつはバカだ。QUERYの足は多いが、それぞれの足の可動範囲は限られている。あんなところにいなければ取り囲まれたりはしない。なんのために2人でやらせているのかと思ったが、イノウエが後ろに忍び寄っているのでそういう作戦なのだろう。


 サイトウはQUERYの胴体のすぐ左まで抜け出た。ここまでくれば関数の視界からもほぼ外れている。QUERYは正面に向き直ろうとするが遅い。サイトウの接近を盾のように阻もうとする足を、脇で抱え一気に引っ張る。


「ぅおらっ!!」


 ブチブチブチッ、という音をたてて根元から足が抜ける。


「クエリー」


 邪魔がなくなった胴体に近づき、サイトウはQUERY関数を処理した。


「おつかれさまでした」


 イノウエとタカハシが処理を終えて戻ってくる。結合QUERYは処理しきったようだ。当たり一面のセルがうすく輝いている。


 しばらく待ったがそれ以上関数は出現せず、この日のクエストは終わった。

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