第61話 IMPORTXMLはCONCATENATEで包め

「インポートエックスエムエル」


 おれがビームで捕獲したユーレイをイノウエが処理した。


 は最初はぐねぐねとしたビームをうまく扱えなかったが、しばらくやっていると慣れた。正直言って日頃さすまたとか振り回しているのに比べればよっぽど楽だ。順調に処理は進んでいると思うのだが、いかんせん数が多い。


「いまので10匹目でしょうか。まだ半分も処理できていないような気がします」


「疲れたか?最近相手にしてたやつらはQUERYもFILTERも複数セルに結果をかえすようなやつばっかだったからな。そこまで数が出てくることは少ねえ。だがIMPORTXMLの結果は1つのセルにおさまってくる。そのぶん数が出るんだ」


「多くのケースではってことは、結果が複数のセルにまたがることもあるんですか?」


「ああ、いわゆるWEBページの本文みたいに長い要素を取得しようとした時にありがちだな。改行ごとに別のセルに出力されるんだ。まあそういう場合も大抵はCONCATENATEで結合される事が多いけどな」


 CONCATENATE。たしか複数セルの文字列結合するやつだ。


A1:Google

B1:Spreadsheets


 と入力されているときに、


=CONCATENATE(A1,B1)


 という式を書けば「GoogleSpreadsheets」という結果を返すことができる。だがセルが決まっていれば&を使って


=A1&B1


 という書き方をしても同じ結果が得られるし、


=A1&" "&B1


 このようにスペースやつなぎ文字をかける利点もあるのであまり使ったことはなかった。だがIMPORTXMLの場合は結果が何セルにわたって返ってくるかがわからない。例えば以下のようにA1セルに書いたとすると


=IMPORTXML("https://kakuyomu.jp/works/1177354054887646455/episodes/1177354054887646515", "//*[@id='contentMain-inner']/div/div/div")


A1: 目が覚めたら白いタイル張りの部屋にいた。

B1:(空白)

C1: どうなってるんだ。おぼえている限りでは23時過ぎたぐらいに明日配信のクリエイティブの入稿は終えて、先日やめた同僚の引き継ぎ案件のレポートをチェックしたらむちゃくちゃ。罫線は引いてないし多重参照ばっか。あげくページによっては集計値がべた書きしてある。「こんなブラックな仕事、私にはできません」とか言ってやがったがおれに言わせれば残業しないといけないのはExcelのスキルが低いからだ。

 ( 中略 )

AR1: やばい、訳わからなくて死にそう。天国でも異世界でもなくてGoogleSpreadsheetsの中ってどういうことなんだ。


 というように多くのセルに結果が返ってくるわけだが、事前にこれがどれだけのセルになっているかは知りえない。


=CONCATENATE(IMPORTXML("https://kakuyomu.jp/works/1177354054887646455/episodes/1177354054887646515", "//*[@id='contentMain-inner']/div/div/div"))


 CONCATENATEを組み合わせてやることで、文章を全て結合した状態でセルに表示をすることができる。ところでいったいおれはなにを考えているんだ。今考えたこの文章はなんなんだ。見覚えはないが身に覚えがある。そもそもkakuyomu.jpなんてサイトはおれは知らないはずだがなぜ詳細なURLの乱数まで記憶しているんだ。一体おれはどうなってしまっているんだ。


「おい!なにぼさっとしてやがる。CONCATENATEがでたぞ」


 サイトウに言われて我に返る。その指差す先を見ると、ゴースト…ではなく、肉体がある。なにより臭いがある。つまりゾンビがいた。


 サイトウがバールのようなものをおれに手渡す。


「おれとイノウエで残りのIMPORTXMLを処理するから、CONCATENATEは頼んだ」


「え、初見なんで不安なんですけど…」


「大丈夫だよ。あいつらとろいから。頭潰してから処理したらいいからよ」


「…グロくないですか?」


「文句言わずにやれよ。くせえのは嫌なんだよ。そういうのは若手の仕事だろ?」


「なんで急に昭和の企業みたいな文化持ち出すんですか?ここはグローバル企業だし、平成だってもう終わるんですよ」


「わーったわーった。わかりましたよ。タカハシさん、今回はなにとぞお願いします。どうにか!」


 そんなに嫌なのか。サイトウの突然の敬語に押し切られておれは渋々承諾した。バールのようなものを手にしたおれの前には5体のCONCATENATEがうめき声をあげながらよろよろとこちらに近づいてきていた。



※今回の関数とその他

CONCATENATE https://support.google.com/docs/answer/3094123

バールのようなもの https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る