第14話 文字列関数の森

 文字列関数というジャンルがある。その名の通り文字列に対して処理を加える関数だ。代表的なものはLEFTやRIGHT。これらは文字列から一部を切り出す。例えば「東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー」という住所があるとしよう。


=LEFT("東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー", 2)


 と書けば「東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー」の2が切り出されて「東京」という結果が返ってくる。


=RIGHT("東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー", 10)


 であれば「六本木ヒルズ森タワー」となる。ただしこの3や6という数字が問題だ。県名は2文字が多いが、神奈川とか和歌山みたいに3文字のものもある。これを同じようにLEFTで2文字切り出すと、神奈、和歌、みたいになってなんのことだかさっぱりわからなくなる。こういう際にFINDを使う。


=FIND("県", "鹿児島県")


 と書けば、県は4文字目なので4という結果が帰ってくる。これをLEFTと組み合わせれば以下のように文字数を考慮して県を抜き出すことができる。


=LEFT("鹿児島県志布志市志布志町志布志2丁目1−1 志布志市役所志布志支所", FIND("県", "鹿児島県志布志市志布志町志布志2丁目1−1 志布志市役所志布志支所")-1)


 非常にまどろっこしいのだが、Excel職人というのはよくこういうことをやっている。上の例であれば顧客の住所データのようなものがあったときに県ごとの顧客数を出したりするために使う。10件やそこらのものを数えるならこんな必要はないので、当然そのデータは千や万の単位だ。


 それで今日のクエストはそういう文字列関数で溢れかえっていた。どういう状態か具体的にいうと、ほとんど森。どうやら文字列関数というのは自然をモチーフにされているらしい。


 FINDの木々が生い茂りLENの花が咲く中、その中で犬、猿、鳥が暮らしている。それぞれLEFT、MID、RIGHTだ。よく見るとVLOOKUPが混ざっているが、意外と馴染んでいる。


「チームワークが必要ね」


 イノウエはそう言ってタモ網(釣りで使用する柄がついた網)をおれにわたした。




 ####################




「ファインド!」


 イノウエがFINDを処理し、木がセルに吸い込まれる。FINDの上にいたMIDが床に落ちてくる。着地したところをおれが網で捉える。MIDはキーッと抵抗を見せるが、そのまま「ミッド」と唱えると同様にセルに吸い込まれる。木陰に隠れていたLEFTが油断しているところをイノウエが処理。止まり木をなくしたRIGHTが飛んでいたが、これもタモ網で捕まえておれが処理した。


「やるじゃない。その調子で行くわよ」


「はい、よろしくおねがいします」


 不安に思っていたサイトウなしのクエストだったが、幸先はわるくないようだった。


 ※今回の関数

 LEFT https://support.google.com/docs/answer/3094079

 RIGHT https://support.google.com/docs/answer/3094087

 FIND https://support.google.com/docs/answer/3094126

 MID https://support.google.com/docs/answer/3094129

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