第27話 長期クエストのこなし方
「ぐぎぎぎぎ…、負けるかぁ!!!…ブイルックアップ!」
腕相撲に負けそうになったイノウエはVLOOKUPを処理してなかったことにした。
「おい…、お前なにしてんだ…」
「はっ!サイトウさん、すいません。いまのはズルして勝とうとしたわけじゃないんです」
「そういうことじゃなくてだな…、遊んでんじゃねえよ!!」
「す、すいません…、退屈だったもので。うっかり」
「まあいいや、状況はどうだ?」
「ひまです、ひま。さっきからVLOOKUPがいまいるセルにでてくるぐらい。いまので4匹目です」
「同じセルか、まだ何度か出現して、結果がおちついたら一気に湧いて出てくるはずだな」
イノウエもウンウンとうなずいている。どうして出現タイミングがわかるのだろうか?おれはサイトウに聞いた。
「どういうことですか?」
「ちったあ自分で考えてみろよExcel職人がworkerをやってるのはただ関数の処理ができるってだけの理由じゃねえんだ。自分がシートを作るときどうしているか想像するんだよ」
「…そうですね。たしかに作り始めたばかりのファイルなら参照する列もはっきりと決められていないことも多いし、$をつけ忘れて相対参照になっていたのを絶対参照にしたりすることも多いですね。それである程度納得のいく式が書けたら他の行に一気にコピーしていく」
「そういうこったな」
サイトウがそこからの作戦を説明した。
「規模から考えて3、4日ぐらいの仕事になるだろう。4時間ごとの3交代でいく。1人が仕事。1人は起きて待機。1人で手に負えなくなったり休憩したくなったら待機担当を呼べ。どうしてもというときだけ仮眠担当も起こして3人で対応する。そうだな、まずはイノウエがこのままここに残る。タカハシは待機。おれはいったん仮眠しておくから交代の時間になったら起こしてくれ、いいな」
「はーい」
「わかりました」
「そうだ、待機用にこれを貸してやろう」
サイトウからおれに小さなゲーム機を渡された。中身はGoogle Chromeでインターネットに接続できなくなったときに出てくる恐竜のゲームだった
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想像以上に奥の深いゲームだ。仕事中にネットが使えなくなったときにぐらいしかやったことがなかったが、真面目にやりだすとサボテンだけじゃなくプテラノドンが飛んできたり、夜になったりすることなどがわかった。スピードが早くなってくると直前にジャンプしたら次をかわせなくなってしまう。1000点台は安定して出せるようになったものの、最高スコアは4329を一度出せたが、なかなかそれを超えることができない。走行しているうちにイノウエからトランシーバーで連絡があった。
「交代の時間ですよー」
遊びは終わり、仕事の時間だ。
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