第7話 歓迎会
「いやー、おつかれさん!2人とも飲めや。タカハシの歓迎会だ。今日はおめえら役に立ったよ」
サイトウはガッハッハと笑いながらビールを飲んで唐揚げを食っている。
おれたち3人は気まずい空気の中、詰め所まで帰ってきた。実際、仕事の最中に口喧嘩をしたのは悪かったと思っている。どうやってこの場を取り繕ったものかと考えたが、サイトウに対してそういう心配は無用だったようだ。詰め所でビールを一杯飲み終えたら機嫌を直したようだ。
「もしかしてあのキレてたの、演技だったんですか?しんじらんなーい」
「おいおい、おれがそんなに器用にみえっか?あんときゃあマジで怒ってたよ。バットでとはいかないけどふたりとも殴ってやろうと思ってたよ。おめえらと違っておれの古巣は暴力がまかり通ってたからな」
おそろしい。おれの会社も労働環境は最悪だと思っていたが、さすがに暴力はなかった。これが昭和か。
「しかしほんと今日はおめえらの茶番のおかげで楽だったよ。走り回ってバット振り回さなくて済んだし」
「え?あのバットはVLOOKUPたちを脅すためじゃなかったんですか?」
「いや、いつもは追いかけて殴ってるよ。あいつら小さいし逃げるからな、しゃがんで捕まえてたら腰悪くするだろ。おめえら若いからいいかもしれねえけど、42のおれにはきついよ」
GoogleSpreadsheetsの裏側がこんな暴力的な世界だなんて、いったい誰が想像しているだろうか?ははっ、そもそも死者の魂でうごいてるとおもってないよな。
「おれも勉強になったよ。ああやって関数と仲良く接したほうがいいこともあるんだな。workerやって長いほうだけど、最近は1人で仕事してることが多かったからな。Spreadsheetは奥が深いな、やりがいあるよ、ほんと」
workerにも武闘派、穏健派があるのだろうか。なんにせよ関数を効率よく処理するにはいろいろは方法論があるのだろう。ユーザーがVLOOKUPとINDEX/MATCHで言い争うのと似たような感じなのかもしれない。
ともかくその晩はサイトウの演説を聞く会で終わった。転生してもビール飲みながら上司の話を聞かされるとは…。
これがおれのGoogleSpreadsheets生活の1日目だった。はたしてこの1日が生きていた頃の24時間と同じなのかもよくわからない。そもそもこの白いタイル張りの空間には昼も夜もない。周囲ではこれからクエストにでかけていくやつもいるようだった。とにかくサイトウにもう寝ろと言われたので1日が終わったことにした。
第1章 完
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もともとこの小説はこのぐらいの話数で終わろうと思っていたのですが、カクヨムコンの規定字数に到底達していなかったのでこのまま続けることにしました。ここからはworkerたちが様々なSpreadsheetsのユースケースの中で、関数たちとの戦いを繰り広げる、と思います(さほど構想はない)。
ちなみに今日はアドベントカレンダーは特に無関係な更新です。というよりあと空いてるのは25日の1枠だけなので、このままアドベントカレンダーとは無関係に進行できるかもしれません。25日に書きたいという人がいるのなら・・・。
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