(隠しステージ)〜響子の想い出①〜

 私が初めて自分でプレイしたRPG。それがこの『ドラゴンクエストⅣ』だった。

 それまでずっと錦くんの後ろから見ているだけで満足していた私が、どうして自分の手でやりたくなったのか。それはきっと、錦くんから借りた漫画『4コママンガ劇場』の影響が大きかったと思う。

 複数の作家がドラクエネタの四コマ漫画を書くという、今で言うアンソロジー形式の本。私はそれが大好きだった。


 ホイミンのことが好きでたまらない戦士ライアン。アリーナ姫に恋をしている神官クリフト。自由奔放でカジノ好きな姉マーニャに振り回される、真面目で苦労性の妹ミネア。トルネコとブライは……まあ、いいや。

 無味乾燥だったドット絵に、具体的なビジュアルと個性的な性格が付与された。

 気付けば、私はそれらのキャラクター達を大好きになっていた。

 だから、私も彼らと一緒に冒険をしたくなったのかもしれない。


 ファミコン後期に発売された『ドラクエ4』の特徴は、全5章からなるオムニバス形式の物語。章ごとに操作するキャラクターが変わり、最終章でようやく主人公である勇者が登場する。5章が始まったと思えば、いきなり育った村を焼かれる、という衝撃的な展開は今でも忘れられない。

 孤独に旅立った勇者が巡り会う仲間は、それまでの章でプレイしてきたキャラクター達。全員がそろったとき、フィールドの音楽も変わる。それまでの切なく美しいメロディから、勇ましく心強いマーチへ。初めてそれを聴いたときは鳥肌ものだった。


 また、学習するAIによる戦闘も『ドラクエ4』の大きな特徴の一つ。

 こちらが出した「ガンガンいこうぜ」とか「いのちをだいじに」とかの大まかな方針に従って、勇者以外の仲間は勝手に動いてくれる。(逆に言うと自分で好きに操作することができないから、クリフトが「ザラキ」ばっかり唱える、みたいな困ったことも起こる。それはそれで魅力の一つなんだけど。)


 そんな魅力がたっぷり詰まった『ドラクエ4』。

 キャラクターも、音楽も、ストーリーも。全部が大好きだ。

 今の時代、グラフィックも音源も進化したゲームはたくさんあるけれど、「一番好きなゲームは?」と聞かれたら、やっぱり私は『ドラクエ4』って答えると思う。

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