(隠しステージ)~響子の想い出②~

「ドラクエとFF、どっち派?」


 幾度となく問われたこの質問によって、どれほどの論争が行われただろうか。


 エニックス社の『ドラゴンクエスト』シリーズと、スクウェア社の『ファイナルファンタジー』シリーズ。ファミコン時代から続く、RPGの二大巨頭だ。

 私たちの世代は、そのどちらを支持するかで真っ二つに分かれて争っていた。


クエストって言っても、“ドラゴン”は雑魚敵じゃん!」


ファンタジーなのに、いつまで“最後”を繰り返すんだよ!」


 両者は一歩も引かず、こんな揚げ足取りのような不毛な争いも各地で繰り広げられていたという。


 ――なんてね。

 多少の好みはあっても、結局みんな両方とも遊ぶんだけどね。(強いて言えば、私はドラクエ派、錦くんはFF派。)


 『ドラクエ』の特徴は、可愛くて馴染みやすいビジュアルと、どこかユーモアさのあるストーリー。そして、物語に没入するため、主人公はまったく喋らなくて、基本的に「はい/いいえ」しか答えない。

 それに対して『FF』は、キャラクターが織りなす人間模様が主軸になるから、主人公はしっかり喋るし、自己主張もする。そして、洗練されたグラフィックも相まって、まるで映画をみているような気分になる。

 (ちなみに、関西方面では『FFエフエフ』じゃなくて『ファイファン』って言うらしいね。転校生が「ふぁいふぁんふぉー」って言っていて、最初は何かの暗号かと思った。)


 そんなFFシリーズの初めてのスーパーファミコン作品である『FF4』は、仲間になるキャラクターが特に多い。総勢12名のキャラクターが仲間パーティーに加わり、そして別れていく。そうやって出会いと別れを繰り返し、主人公は先へと進んでいく。


 そんな魅力的な仲間たちとの人間関係のなかでも、特に“恋愛”が大きなウエイトを占めている。

 自分が暗黒騎士であることを引け目に感じている主人公のセシル。その恋人の白魔導士ローザと、二人の幼馴染でありローザに想いを寄せる竜騎士カイン。この三角関係がストーリーに大きな彩りを与える。

 作中のキスシーン(といっても、ドット絵のキャラがくっつくだけなんだけど)は特に印象的で、小学生だった当時の私はあまりの衝撃に、その晩は興奮で眠れなくなるほどだった……。


 そんな人間ドラマが展開される『FF4』は、誰かを好きになることの強さと弱さの両方を教えてくれた、印象深い作品だ。

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