EP01-05
さて、ここで自己紹介。今更ながらになるけれど、簡潔な自己紹介を。
"
語り手として、そして綴り手として──本当に未熟だけれど、私の物語をありのままに伝えることに尽力する。
そんな私について、思いつく限りを
性別は女、年齢は21。人目に付く赤髪、髪型はポニィテイル。極度の低血圧で、身長は163センチちょっと。さすがにもう伸びないと思っていたら、この一年間で一センチほど伸びていた。なけなしの女心から、そろそろ成長が止まって欲しいと切実に願っている。体重は省略。スペースの都合上、どうしても書けないのが残念でならない。
基本的にインドア派で、友人も極々少数。特にこれといった趣味もなく、現在は恋人も居ない。早くも自己紹介のネタが尽きつつあることに、少なからずの物悲しさを感じている。
すぐに考え込む悪癖があるけれど、それは
エリア004に居住し、就職してからは悠々自適な一人暮らし。過去には何度か住み処を変えもしたけれど、思えばそのどれもがエリア004だった。居住エリアを変更する手続きの多さを思えば、ある意味で当然の選択ではある。
それに
職業はコンダクター。出発前に少しだけ触れた通り、"教員職"の一種である。その詳細については、後ほど説明することになると思うので、ここでは割愛してしまおう。
この職に就いて二度目の春。
私はまだまだ駆け出しの身であり、"日々勉強"といった言葉を噛みしめることもしばしばだ。
そんな私が、本日も無事に
──とはいえ、無事じゃない方が難しいのか。
例えば、
またそんなどうでもいい思考を巡らせながら、エレベータの扉が開くのと同時に現実へと立ち返る。全開まで開け放たれた扉が、先ほどのスバルと同じように「早く降りろ」と急かし立てているように感じた。滅菌スモークの残りかすをゆっくりと吐き出しながら、やれやれといった思いで肩を竦める。
視線を上げて前方を見据えると、『
目の前に広がるメインガーデンには、色味や高さが均一に整えられた、行儀の良い草花たちが咲き誇っている。規則的に吹き抜けるそよ風が、草花の頭を一斉に右へ左へと揺らしている。まるでクラシックの指揮者のみたいに神経質な風だ。
サッカーグラウンドを連想させる広大な大地へ、最初の一歩を踏み出した私の頭上を、二羽の鳥の影が颯爽と横切った。ピロピロとご機嫌な鳴き声を響かせ、遥か向こうへと小さく消えていく。
射し込む光の柔らかさと、飛び込む音の美しさ。
吹き抜ける風の心地良さと、包み込む薫りの懐かしさ。
その何もかもが調和された完璧な世界。
この光景を"楽園"だなんて呼ぶ人間には、残念なことに言語センスが足りないのだと思う。けれど、他に一体どんな呼び名が相応しいだろう。
どうやら私自身も、センスが足りない人間の一人らしい。あるいは表現力、もしくは感受性とも言える何かが、決定的に欠けているのだ。
もしもそういった芸術性を補う
くだらない冗談に混じって私が浮かべたのは、自分自身への嘲笑だった。やがて大仰な溜め息を吐き出しながら、私は想う。
──そうだ、楽園なのだ。ここは。
少なくともこの光景は、この上澄みの全ては、楽園そのものなのだ。
あの遠い日、
あの夏の日、優しい母さんと無知な私は、永遠の死を持って二つに隔たれた。
死がもたらす永遠の別れ。悲しいのはそれじゃない。
死を持ってしても尚足りぬ、死よりも遠い精神的な
私は戻ってきたのだ。夏草と土の匂い。あの夢の終着点に。
愚かしくも、馬鹿馬鹿しくも──この場所で生きていくことを選択した。
その理由? 詩人みたく、自分探しとでも言っておこうか。
その理由──それは、私が大人になったから……。
否、私が大人になるために。
子供だった私は、この楽園の外で待ちぼうけをした。
大人になろうとする私は、この楽園の中で何を想って生きるのだろう。
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