〇〇〇 序 幕(二)

 4歳の頃だったか、家の裏庭で遊んでいたら、コワいオバケと、やさしくてつよい大きいオバケに会った。

 あの出来事があったから、わたしはいろんなことに出会えたのかもしれない――――




   ***




――――りょうこ、あんまりとおくにいっちゃだめよーーーー


「はぁい」


 わたしは、うらにわにでて おおきなたきをみつけた。たきをみあげるとすいこまれそうになる。

 だからわたしは たきからはなれてあそんでいた。おはなにちょうちょ。あおいそらにしろいくも。すごくたのしい。



                   ――――


「?」


           

                    ――――コワイ


「だあれ?」


                   ――――キコエテルヨ


                      ――――コワイ コワイ


           ――――ダカラ、――イマノウチニ


「だれかいるの?」


               ――――オヒメサマダヨ


               ――――ソウダ  ――――ヨウミ ノヒメダ


 きのかげにくろいものがいた。


                      ――――コッチヲミテルヨ


                     ――――キカレタネ


                 ――――イマノウチニ


 わたしはこわくなってそこをはなれた。


                      ――――タベチャオウ


           ――――サラッッチャオウ


                 ――――ウダ ――――チニ


 そうだ、こういうときは。

 わたしはみぎてについている、あおい いしをみた。

 おかあさんにきいたら、わたしがうまれたときからついてる、きれいなほうせき。

 このいしは、わたしがおひめさまだっていうしょうこだから、だいじにしなさい。おとうさんはそういってた。

 このいしをみてると、すごくあったかいきもちになれる。


 きゅうにあおいいしがひかった。まわりからおびえたこえがきこえる。


                    ――――ヤッパリソウダ


                   ――――シャノ――――ガンダヨ


            ――――ボクラヲ、――――ス ツモリダ


 くろいかげがふえた。こっちにせまってくる。

 わたしははしった。おおきなとらのかたちのいわのうら。

 ふいにおもさがなくなる。

 いきができない。それにてあしがおもうようにうごかない。

 そうか――――たきつぼにはいったんだ。

 がぼがぼ、いきができない。すごくくるしい。

 わたしのまわりに くろいかげがふえた。


                       ――――オボレサソウ


                   ――――ノドヲツマラセヨウ


                  ――――ソウ イマノウチーーーー


 めのまえが、まっくらになる――――


  ――――ダダ。


 え?


  ――――マダ ハヤイ。   ――――カエレ。


 かえる? どうやって?


  ――――シカタガガナイ ヤツダ――――。


 みぎてのいしが、さっきよりもつよくひかった。

 たきつぼの したのほう、まっしろくておおきな なにかがあらわれた。

 あおくて きれいな しましまもよう。


  ――――ォォォオオオオーーーーン

 

 まわりの くろいかげが きえた――――




  ――――オボエテオケ、   ――――ワガナハ――――


  ――――コ、――――ンタキ――――イコダ。


 ――――いこ?


  ――――タビ、――――マミエル――――


  ――――ノトキ――――ラタメテ チカラ ヲ、カソウ――――


 ちからを、かす――――?


 わたしは しろと あおの しましまのうえにのった――――。



 ***



「…………ん…………」


 ――――うこ    ――――りょうこ。


 ――――?


「りょうこ! りょうこ!」


「……あれ? おかあさん?」


 わたしはいつのまにか、わんわんないている おかあさんにだっこされていた。



 さっき、わたしをたすけてくれたの、だれだろう。

 すごくやさしくて、つよくて、すごくおおきかった――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る