〇四八 譲 渡
ちくしょう、あくまで私が渡したっていう事実が欲しいのかよ。相変わらず
拾ってから宝珠を眺める。亀姫の悔しさが直接伝わってくるようだ。
まさか、
「ご苦労様。妖魅を宝珠に転じる
私達が妖魅を眷属にした場合、その総合能力は元に較べてだいぶ劣る。ごめんなさいね、横槍を入れちゃって」
「別に構わない、そのうち奪還するさ、必ずな」
「ふふっ、相変わらず勇ましいのね、『姉さん』」
――――ピィィィィィン……!
感情が沸騰するより先に、反射的に踏み込んで、雪蛇刀の切っ先を奴の首元に当てていた。が、やつは眉一つ動かさない。
「その呼び方をやめろ、
「そう、親しみを込めて呼んだんだけど。まあいいわ。これで失礼するわ。
新しい夜叉姫にはドゥーガルが向かってるし。
それに、もう一人『新しい子、三人目』が投入されるらしいわね。その子に対する準備もしておかないと。それにはヴェーレンが対応するし」
「新しい子、だと?」
尋ねながら、那由多の後ろの
腕、足とも4本ずつの忍者みたいなやつは――――
【種族】中級虚兵、機動型。
【名称】ユンジュス・ウィービング。
【特徴】――――
もう一体、首の後ろに
【種族】中級虚兵、特殊型。
【名称】ベネヌゥム・カウダ。
【特徴】――――
今はだいたいの特徴が分かればいいか。それよりも……。
「今度はいつ会えるかしらね?」
「さあな、できれば二度と会いたくないけど、亀姫を返してもらう時会わなきゃならなくなった。
なるべく早く奪還する、それまで預けとくよ、大事にとっとけ」
「あら、私には用事がないっていうの? まあいいわ、それじゃあ失礼します。
刑事さんたちもごきげんよう」
「くそっ」思わず地面を蹴る。
わかってはいたことだった。虚神が妖魅と契約する時を狙ってやって来ることは。
でも、今回に限って言えば、大した気配もなく接近を許してしまっている。
それに最後に言い残していたことも気になる。風の噂には聞いてたけど、どういうことだ――――?
「……ごめんなさい、六花さん。あの虚神急に現れて。でもあの従えていたのはまだ見た事ない
恐らくは、
「気にすんな、人の
「すまない六花、サポートするつもりが、足手まとぃ――
……ぐふ――――っ!?」
「大丈夫か? 倉持刑事。大丈夫、傷は浅いぞ!」
「……お……おまえ……ぜったい、わざと……やった……だろ……」
ずずん
お腹を抱えたまま、大仰に前のめりに倒れた。
すまん、
いやなにただの八つ当たりだ。こればっかりは
黙って苦痛に耐えて、
心配するな、骨は拾ってやる。合掌。
「それはともかく、あの虚神が言っていたことって……」
清楽ちゃんのスマホが鳴る。
「はい、清楽――――はい、ええ、
清楽ちゃんの表情が硬いのは、今さっきの件があったからじゃないだろう。通話の相手はおそらく彼女の上司だ。渡されたスマホに出る。
「はい、白聖。ええ、そうです。刑部姫は契約出来ましたが、亀姫は……まあ、これも戦略の一部です。なんだったらこちらから出向いて奪還――――」
私は次の瞬間、耳を疑った。
【まず、その話はひとまず置いておこう。君も聞いたことがあるだろう『三人目』。
まだ問題も多いが実戦投入することにした。
九州に、先日接触した三滝涼子、彼女がいるのだろう? そちらへ向かわせている。
もう間に合わんかもしれんが、君も九州へ向かってくれ。応援要請だ。よろしく頼む】
こちらの返事を待って通話が切れた。
おいおい、こっちは福島にいるってのに、これから九州に行け? どこのハリウッドスターだよ。まあなんとかするけどさ……。
私の隣には、悔しそうに唇を
「それじゃ、行くかーーーー。涼子のこともそうだけど、三人目って言うのが気になるし」
「行くって……ここからどうやってだ? ヘリでもチャーターする気か?」
なんとか復活した
「あーー、それでもいいかも。夜叉姫に不可能はない。……んだけど、けっこう
どっちゃかっていうと、オフのときツーリングで乗りたかったし」
ぶつぶつ言う私を、
「ああ、亀姫のことはちょっと後回しになりそうだ。でも必ず助ける。そのあとで
刑部姫に手をかざして浄眼に戻ってもらう。その上で――――夜叉の浄眼、異形の
手をかざして、地面に今から使うものを出した。
夜叉の浄眼は生き物は無理だけど、食べ物でも日用品でも自分で持ち上げられる物体は、なんでも好きな物を出し入れできる。
ザシッ
砂利を敷いた広場に出したのは――――
「これはオートバイか? しかもなんだこのふざけたカラーリングは」
「ふざけた言うな。私がオーダーメイドで造ってもらったやつだ」
まあ、
某 はんぶんこ変身ヒーローの乗ってるバイク、それの見た目と性能そのままに改造してもらったやつだ。
ベース車はホンダ CBR1000RR。『おやっさん』の黒いのも同じ車種。
カラーリングは前部分がライトグリーン、後ろ半分がマットなブラック。名前の由来のW型のアンテナもつけてある。
『うーん、興味深い上にハードボイルドだ。』
乗るなら、例えば『蜃気楼』顕現させて
「ま、実用一番か。これに憑かせる妖魅は……っと」
一息ついて左手を天に掲げる。夜叉の浄眼、手の甲の
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