〇三四 饗 宴
「そうですね、一般兵士に関していえば、エネルギー源。
それに強化素材なんかになっているのが、生きている、もしくは死んだ人間の精神、魂のエネルギーだということは」
正座したまま
「
ですが、実際には国内外で虚神に殺害されていて、『燃料』にされている一般人はかなりいます。もっともそれを公表することはできませんが」
私は大きく息をついた。
「ですから、虚神に対抗できる夜叉姫は我々にとっては貴重な存在です。同僚の倉持からもある程度の話があったと思いますが。
三滝涼子さん、私達公安のため、正義のため、なんておこがましいことは言いません。あなた自身と、大事な人たちのために夜叉姫の力を使ってください。そのための協力を私たちは惜しみませんので」
私が返事をする前に両肩を叩かれた。両サイドにはすでに出来上がっている
火車はいつの間にか、和服でなく肩が出た黒いワンピースに着替えていた。一方の六花は、黒コートを脱いで身体にぴったりした白いタンクトップ一枚だけだ。
おじいさまはもちろん、倉持は私たちを送って早々に帰ってしまって、
ここに女性だけ(?)しかいないとはいえ、かなりあけすけなかっこうだ。
「作戦会議なんて呑みながらでもできるだろーー。
おつまみっていうか料理は
大丈夫、『
よくて、力の宝珠を出来合いの
六花が恐ろしいことをさらっと言う。手持ちの妖魅や武器戦力だけで太刀打ちできるのかな? お父さんの手がかりはほとんどないし、悩み事は減るどころか増える一方だ。
「それだったら、『鵼』に対抗し得る強力な妖魅と交渉して契約しないといけませんね。何体か当てはありますから、今日は英気を養ってください」
「おーー、そうそう。いいこと言うーー。どう? 一緒に呑まない? 清楽ちゃん」
「清楽……ちゃ……ん……?」
――――ピシッ――――
一瞬、ガラスに亀裂が入るような気配が座敷に広がった。
「いいでしょう、ご
清楽さんは六花に注がれた日本酒を一息に飲み干すと、六花はさらに一升瓶を片手で傾けた。清楽さんはさらに飲み干す。
「「おおーーーーーー」」
六花と火車は小さく拍手をした。清楽さんは二人のタンブラーに日本酒を注ぎ返すと、二人も一気に飲み干した。
そのあと三人の視線が一斉に私に向く。
「私は呑まないわよ! 未成年なんだか――――」
不意に、手の甲の粒が紅く光って、意識が朦朧としてきた――――
「――――うむ、
***
「う……ん。あれ、どこだ? ここ……」
変に騒がしくて目が覚めた。起きて辺りを見回すと、薄暗いけど何人もの声が騒がしく響いている。
そうかここ、涼子さんの家だ。
僕が住んでるのは学生が一人で生活するのには不向きな、眺望だけはいいタワーマンション。
たった一人で寝て起きて、の繰り返し。安定はしてたけど寂しかったのもまた事実だ。妖怪、妖魅を調べたりする間はそれを忘れられる。
涼子さんの家に来られたのも、ある意味でラッキーだった。
線香や畳、木のの香りがする部屋でゆっくりと息を吐く。
「――――メですって。寝てますから」「なに、もう治ってるだろうし、まだ宵の口だ。酒の肴は多い方がいい」「だからって――――」
すぱぁん!
勢いよく目の前の
そこには吊り目で切り下げ髪、黒いノースリーブワンピースの女性がいた。髪留めなんだろう、直径8cmくらいの黒塗りの車輪を頭に着けている。見た目は凄い美人だけど、僕には見覚えがなかった。
和風美人は目を細める。
「私のことが解らんのか? お前の
「え? えーーと、『火車』さん?」
「そうだニャ。小僧、礼といってはニャンだが、お酌をしなさい」
「……はい」
座敷の四角い
僕は黙って黒いワンピースの美女に日本酒を注ぐ。火車さんは一息に飲みほした。なんか最近このパターンばっかりだな。
「おーー、少年。体調はどうだ?」
「ああはい、なんとか。……六花さん?」
その外見に僕の思考は停止する。声や口調で、誰かだけはなんとかわかった。
「なんで、髪と肌の色が違うんですか? それに耳もなんかでかい、っていうかとがってるし」
「これ? うんよく聞いてくれた。妖魅の力で見た目ってどれだけ変えられるかやってみようって話になって――――アレンジして、んでこうなった」
――いやおかしいでしょ、銀髪で肌が褐色で――――。
それで白いタンクトップでレザーパンツって。
そもそも六花さんは国籍がフランス人で、でも日本の妖魅を使役してる夜叉姫――属性多すぎてインフレしてるよ!!
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