3次元という新世界へ・大切な仲間達との別れ

「お姉ちゃん?」

デルタの後ろから懐かしい声がした。


「え!!?」

デルタは突然の事で驚きつつも、

次の瞬間にはその大切な存在に抱きついていた。

「ナブラのバカ、バカ、バカー!!

あたし、お姉ちゃんあんたの事すごく心配したんだからね!!」


「お姉ちゃん……」


「デルタさん……」


「ラプラシアンも、無事だったのね?」


「え〜と・・・」

すると、遠目から三人の再会の様子を見ていたハルキが申し訳無さそうに口を挟もうとしてきた。


「デルタちゃんごめん。

ナブラくんとラプラシアンくんは……」


「うん、わかってる。

二人とも既にいないのよね?」


「そう。

二人は、二人の死んじゃう前の時間から数十分の間だけ時空転送して来てもらったんだ」


「ありがとう、ハルキちゃん。

例えどんな形であったとしても、

もう一度出会えただけであたしは嬉しいわ」


「デルタちゃん……」


「なあ、ハルキ?

話に割り込んで悪いが、こいつ等三人でどうやって生き物に光を与えるんだ?」


「そのことなんだけど、カムっちはこの場所がどこだかわかる?」


「さっきからずっと湖の中じゃかいのか?」


「ブッブー! ハズレ。

実はね、アタシの力であなた達四人とも海の中に移動したの。

それにね、時代を少し遡ってカンブリア紀が始まるほんの少し前まで来てるんだよ」


「ハルキ、お前いつの間に!?」


「ナブラくんとラプラシアンくんを他の時間から連れて来た時にだよ。

あ!

カムっちごめん。

亡くなったナブラくんとラプラシアンくんの実体を留めておくにあまり時間が残って無いんだ。

ねえ、デルタちゃん?

そして、ナブラくんとラプラシアンくんにも

これからお願いしていい?」


「いいけど……、どうしたらいいの?」


「え〜とね、ごにょごにょ……」


「うん、なるほどね。

ボクはハルキさんのやりたいこと理解できたよ。

ナブラとデルタさんにはボクの指示通りに動いてもらっていいかな」


「了解!」」

打ち合わせをした達三人はさっそく行動を起こした。


「先ずはアタシからね!」

最近に動いたのはデルタだった。

デルタは目を瞑ると、手を外側に大きく広げた。

「みんな、アタシの周りに集まりなさい!」

そう叫んだデルタの体の周りにはおびただしい数の葉緑体が一斉に集まってきた。


「ねえハルキちゃん?

狙いはあの白くて透明なお椀を伏せたような形をした生き物達でいいのよね?」


「そだよー!」

この付近だけでもざっと20匹くらいはいるのだろうか。

デルタとハルキの言う白く透明でお椀を伏せたような生き物は水中にたくさん浮かんでいて、水の揺らぎに合わせてふわふわと漂っていた。


「わかったわ。

あなた達みんな一斉にあの不思議な生き物に寄生してー!」

デルタがそう合図すると、無数の葉緑体細胞はそれら不思議な生き物の体に次々と突き刺さり寄生していく。

「プスッ! プスッ! プスッ!……」


そして、次にラプラシアンが動いた。

「太陽光線よ、あの緑の細胞へ届けー!」

ラプラシアンはそう叫びながら、太陽光の光の焦点を変化させていく。

すると、水面への光の入射角と水中の光の屈折の角度の変化から、太陽の光がピンポイントでデルタ放った緑色の葉緑体細胞に当たっていく。

太陽光は凄まじい勢いで葉緑体細胞に吸い込まれていく。


そして、最後に能力を使ったのはナブラだった。

『バチバチバチバチ!』

水中の一点に凄まじい電流が流れ、

それはすぐにドーム状に広がった。

「ラプラシアン?

こうやって神経細胞を活性化させたらいいんだよね!?」

ナブラが作った巨大な磁界ドームはそれら不思議な生き物達をすっぽりととりこんでいた。

そして、磁界内部の不思議な生き物の神経細胞を素粒子レベルで激しく揺さぶっていく。


『ドドーン!!』

轟音と真っ白い光にみんなが視界を奪われたのはほぼ同時だった。


「!!!!???」


「な、何が起きたんだ?」

みんな一斉に驚き、蓮姫はつい口に出した。

三人の能力が合わさったその凄まじいエネルギーは知らず知らずのうちに空に雨雲を呼び寄せていて、ついに雷を落としていた。


「ねえ、みんな!

あのさっきの不思議な生き物、見て!」

ハルキは言った。


「え?」

デルタはハルキに言われて振り向くが、

すぐには気がつかない。


「あの不思議な生き物達さ、さっきまでと違って明るい太陽光の方に集まって行ってるじゃん!」


「ああ、確かにそうよね!

ねえ、ナブラやラプラシアンもそう思う?」


「……」


「え?」


「み、みんな消え……ちゃったね」


「う、うん……」

デルタの瞳からは涙は流れなかった。

もちろんハルキからも。

「カムっち……」

その現実を心で受け止め、悲しさを理解するのはもうちょっとだけ後の段階だったから。


その場にはデルタとハルキ二人だけが残されていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る