束の間の帰還

気が付くと、

蓮姫は小川の側の岩に腰かけて

光る石を見つめていた。


「私はまた夢をみていたのか……」


◇ワレノネムリヲメザメサセタノハダレダ?◇


「コノ声……誰だ?」

蓮姫は突然の話声に警戒して辺りを見渡したが

誰もいなかった。


◇ナルホド。

ソノイシヲツカッテキサマハワレヲメザメサセルカ◇


「その石……?

この赤く光る石のことか?」


◇ソウダ。

ソノイシヲワレニカエセ!◇


「??

今の声……、空からか?

お前は誰なんだ!?」

蓮姫はすぐに声のするはずの頭上の空を振り向いたが、

何者もみつけることは出来なかった。


「隠れていないで私に姿をみせろ!!」


「ワレハイマソノバニイテソバニハオラヌ」


「この場にいてこの場にはいないだと……?

どういうことだ?」


「ワレハシネンデオマエニコエヲオクッテイル」


「お前は一体誰なんだ?」


「ワレハジブンガナニモノカ、

カツテニンゲンニナニモノトイワレテイタカ

オボエテオラヌ」


「お前……、昔の記憶が無いのか?」


「ソウダ。

シカシ、ソレモムカシのコト。

ワレハイマ、コノトキノシハイシャ

フシノオウ、

マジン アノマロカリプス ナリ」


「不死の王、魔神か?

まて、今 時の支配者 って言ったな?

あんたが 時の主 ってことか?

時の主直々に会いに来てくれるなんて

話が早いな!」


「トキノヌシ?

ナンノコトダ?」


「違うのか?」


「…………」


「あ!そうだ!

てめえは薬師如来のジジイは知り合いか?」


「シラヌ……」


■姫様よ、わしの声が聞こえておるかな?■


「その声は、薬師如来のジジイ!

これは一体どういうことだ?

こんなチートな化け物がいるなんて私は聞いてないぞ!」


■姫様や。

緊急事態じゃ!

落ち着いて聞くのじゃ。

そいつはもう 時の主 ではない■


「《もう》とはどういうことだ?

気になる言い方しやがって!」


■文字通り、昔は 時の主 だったものだ■


「ちょっと待て、ジジイ!

今 この時代には 時の主 がいないってことか?」


■そうじゃ。

奴は 時の主 を体内に取り込んで一体化しておるんじゃ■


「じゃあ、私はこの化け物と話をつけて

時の主 を目覚めさせないといけないってことか?

なあ、ジジイ?」


■そうじゃ。

しかし、その透明の化け物はこの星の文明レベルでは到底太刀打ち出来ないくい相当強いぞ。

詳しいことは後で説明しよう。

それに、時の主 にアクセスする鍵は ハルキが持っておるはずじゃ■


「ハルキが……?」


■そうじゃ~!■


「ジジイ、さっきから余裕が無さそうだがどうした?」


■奴は今、姫様に攻撃をしかけておって、

わしが防いでいるのじゃ!■


「奴はジジイが苦戦するくらい

そんなに厄介なのか?」


■そうじゃ。

わしはそちらの世界に入ることは出来ないし、

奴はこの世界と密接に結びついておる。

この時代をわしの力で創り直せば奴はいなくなるんじゃが、未来の歴史にも矛盾や無理が出てくるし、

今いる姫様を含めて全てが無くなってしまうことにもなるんじゃ■


「あ~!

ジジイ、本当に使えない……」


■姫様、何かいいましたかな?■


「別にいい、こっちのことだ」


■姫様!

わしの体力ももうすぐ限界みたいですじゃ!

早く逃げてくだされ!■


「私はさっきから逃げてるじゃないか?」


■その石のペンダントを早く使うんじゃ!

姫様は 小川の外から光る石の光を照らさせてからずっと位相空間におるんじゃ。

だから、また石の光をあの小川の水面に反射させるのですじゃ!■


「小川の外から照らさせてたって、

もしかしたら、この赤い石を置いていった少女が……?

って今はここを逃げることが先か。

ジジイ、これでいいか?」


蓮姫は光る石の光を小川の水面に当てた。

すると、小さな小川に

ハルキと最後に別れた場所、

大きな池の水面が映し出された。


■姫様、それでいいんじゃ!

さ、早く中へ飛び込むんじゃ!■


「わかった!

おりゃ~!!」

蓮姫は近付けば近付くほど白く眩しくなる小川の水面の光に向かって思い切って眼を瞑って飛び込んだ。


『ピカー!!!』












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