オートマタ〜時の番人
???
◇……!、 ……!◇
「だ、誰だ?」
???
◇パパ? 聞こえてる?◇
「その声は、娘のトレスか?」
???
「あなた、そろそろ起きてください?」
「妻の声まで聞こえる……」
「パパ何でさっきから目を瞑ったままブツブツ言ってるのー?」
「娘の言う通りですよ、あなた、
大丈夫ですか?」
「ハッ!?
ここは・・・?」
「ママ?
パパやっと目が覚めたみたいだよ」
「そうね、もうっ!あなたって人は!」
「なあ、おい!?」
目が覚めたばかりの博士はそう言いながら、大人の女性の両肩に手を載せ力を込める。
「痛い、肩が痛いわよ、あなた!
そんな余裕の無い顔をして、いったいどうしたと言うんですか?」
「力を入れてすまない。
だが教えてくれ!
どうしておまえが、
どうして、死んでしまって生きているはずの無いお前と娘がここにいるんだ!?」
博士はその時、再会の喜びより誰かに騙されているような疑心暗鬼に強くかられ気が動転していた。
「え!?
どうしてって不思議そうに言われても……、
あなたが理由を知らない筈無いでしょ?」
「私、私は確かに、検体の暴走事故でお前と娘を失ったはずだ。
お前達の葬式にも埋蔵にも立会ったはずなんだ!」
「知ってるわ。
だって私と娘はあなたが……、当時からすると遥か未来にあたるこの時代まで来て、最新の科学技術で完全なるコピーとして生き返らせてくれたじゃない!」
「そ、そうなのか!?」
「ねえ、パパ?
そんな話しつまんないよ〜!
この前約束したお菓子の家連れてってよー!」
「トレス、パパは今ママと大事な話をしているんだ。少し我慢しなさい」
「わからずやのパパなんて嫌い!
あっち向いてポイだよっ!」
「トレス?
パパに向かってなんて言い方するの!?
いい? ママの約束の方が先なの。
優しく頼り甲斐があって物分りのいいイケメンお手伝いさんをパパに作ってもらうの。
トレスだって、お菓子の家よりそっちのほうがいいでしょー?」
「うん」
「ママはお前にああ言ってるが、本当は悪気は無・・・!?
って、
コラコラコラコラコラコラコラ、
コラコラコラコラコラッッッ!」
博士の背後から見るからにたよりなく胡散臭そうなパチモンスタンドが現れると、妻の腹部にコラコララッシュを叩き込む。
「パパからなんか凄いのでたぁ〜♪」
「あ〜あなた?
これマッサージ? お腹気持ちがいいわ。
首と肩もお願いしていいかしら〜?」
博士は最初、妻と娘の完全なコピーとの関係にオリジナルでは無いと言う違和感を感じていた。
しかし、コピーではありつつも最愛の妻娘二人とまた過ごす時間の中で家族の愛を少しずつ感じ始めてきていた。
しかし現実は残酷だった。
それは夢だったのだから。
◆博士、やっとお目覚めですか?
私の目の前で突然眠られましたので、お客様のことながら差し出がましくも、どこかお体でも悪いのかもしれないなどと心配しておりました◆
「それはすまない。
あれは夢……だったのか」
◆残念そうな顔をされていますね。
無礼を承知でお伺いさせて頂きますが、
どんな夢を見られたのですか?◆
「未来の世界で死んだ妻と娘と再会する夢だ。
あー、これ以上他人のあんたに話したくは無い。
実験機材は知り合いのあてがあるんだ。
だから営業は不要だ。すまないが帰ってもらえるか?」
◆それは残念です。
しかし、私が博士にお持ちさせて頂きましたのは実験機材ではありません◆
「実験機材じゃなくてもいらないんだ。
諦めてくれ」
◆それが、遥か未来まで長生きできる不老不死の薬でも・・・ですか?◆
「ふざけたことを言うな!
常識から考えてそんなこと出来るはずがないだろ。
そんなこと、科学者でなくても誰だってわかる。
さては、そうやって私の心につけいって、高額な商品を買わせようと言うんだな?」
◆まあまあ、落ち着いて〜。
話を最後まで聞いてください◆
「まあ、聞いてはみよう。
で、それ以上何があると言うんだね?」
◆博士には私があるところから入手して来たこの日付の論文データの意味、
わかりますよね?◆
「なんだと!?
人間の完全な複製について……。
著者は・・・。
私は200年後の未来でもまだ生きていて、
この論文を書いたと言うのか!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一劫年のサイコロの力の影響で歴史は改変された。
デルタ・ナブラ・ラプラシアンの三人は試験管の中の分子状態に戻り存在は無くなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【蓮姫がサイコロで次の時代に旅立った為擬人化の魔法は解けた。
カンブリア紀も終りにさしかかっていた頃・・・】
『ぽちゃぽちゃ』
オゾン層が出来たばかりで未成熟だった古代。
そんな時代の強烈な太陽の日差しとは対照的に、
潮の引いた浜辺は眠気を誘うようにゆさゆさと波を運んでくる。
『ギギー、ギギー』
酷く老朽化した大人の熊程の大きさのロボットが甲高い機械音を響かせながらゆっくりと波打際に沿って歩いている。
錆びて赤茶色がかったその機械のボディーからはびっしりとコケや海藻を生やして。
ロボットの背中の肩と首の間からは
デウスエクスマキナというコードネームの刻印がされていた跡が僅かに読み取れる。
ロボットは時々不思議な動きをする。
海水面に手をつけ両手を水中の生き物たちに差し出すのだ。
水中の生き物達はロボットの硬く重厚な手のひらからボディー伝いに陸上を目指していく。
ロボットは時の番人として、
そうやって水中にいた生き物達の陸上への進出を助けていた。
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