【追憶】アミュリタとの出会い
•わたし=カムラ
•私=女の子
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「ねえ、カムラ?」
「な~に? おばあちゃん」
「森を抜けた畑に植えている瓜を2つ取ってきてくれるかい?」
「いいよ~!
そしたら今日もお話聞かせてくれる?」
「あ~、いいよ」
「やったー!
わたし行ってくる~!」
カムラは畑に向かう為にまずは森へと向かった。
『駄目だ!』
「あれ?
森の中で誰か人の声がする。
なんだろう」
カムラは声のする方向へ近づいた。
「あの男の人は司祭っていう身分の高い人かな?
一緒に女の子もいるわ。
何を話してるんだろう?」
『駄目だ!』
『どうして~?』
『父さんは今から大事な祭礼の仕事で村に行くんだ』
『じゃあ、私も連れて行ってくれてもいいじゃない!』
『儀式に女性は立ち会えないんだ。
だからおとなしく待っていてくれよ。
な? 賢いアミュリタなら
父さんの言ってる意味わかるよな?』
『ほんとにすぐに戻ってきてくれる?』
『ああ、約束する』
『じゃ~しょうがないかぁ』
『ありがとう、アミュリタ。
父さん行ってくるな……』
(司祭の男の人は女の子のお父さんだったんだ……。
あ、男の人がどっか行っちゃった!)
カムラは森に生えているぼてい樹を盾にして
音を立てないように女の子の様子を観察していた。
『バキバキ!』
カムラは、うっかり足元の小枝を足で踏み潰し折ってしまった。
『誰? そこに誰かいるの!?』
女の子は怯えた表情で辺りをみわたした。
「…………」
カムラは沈黙でなんとか誤魔化そうとした。
奴隷階級のカムラにとって、
司祭階級の人達は例え女の子であっても怖いのだ。
『おかし~な~?
確か、この辺から物音が聞こえたはずなんだけど……』
女の子はカムラのいる方へ、
一歩、また一歩と近づいてくる。
(神様~)
カムラは眼を瞑り、ただただ神に祈ることしかできなかった。
『み~つけた!
隠れていたの、あなたでしょ?』
「ば、ばれた……?」
カムラはすっかり観念し、
まずは眼を開き前を見据えた。
「は……?」
女の子がみつけたのはカムラではなかった。
それは……。
『チュイ?』
『わぁ~!
リスさんだぁ!』
(危なかったぁ~!
わたしてっきり見つかったのかと思ったわ……)
カムラはほっとして胸を撫で下ろした。
『ちょっと、リスさん逃げないで!
待ってよ~!
待ってったら~!』
「あ~あ。
あの女の子、リスを追いかけてどこかに行っちゃったわ。
あ!
今わたし。こんなところで道草喰ってる場合じゃないんだった?
早くおばあちゃんに頼まれた瓜を持って帰らなきゃ!」
カムラはそのまま、森を抜けた畑へと向かった。
「今年は瓜があんまり育ってないなぁ~。
あ! あった。
これとこれを持って帰ろうっ~と」
カムラは畑で瓜を2つ確保すると、
また森に戻り、おばあちゃんの待つ家の方へ向かった。
一一【一方その頃 】一一
「あれ? やっぱり違う。
確かに道はこっちだったような気がするんだけど……」
女の子は逃げるリスを追うことに夢中になるあまり
森道を外れ森の奥深くへ入り、
そして迷子になっていた。
「どうしよ~。
私、元来た場所がわからないよ~!
グスン、グスン、
わ~ん!わ~ん!」
女の子はとうとう泣き出してしまった。
「あれ? あっちの方で何か鳴いてる!
インコかな?」
丁度森道から家路を目指していたカムラは、
その声のする方へ行ってみることにした。
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