電心球
目の前のそのいびつで不気味な煙突から声が聞こえてきた。
◇ふ、ふたりとも、遠いところをはるばる
よく来てくれましたね、ハハハ。
あ、ありがとうございます◇
「ん……?
あんた、私達に動揺してないかぁ~?」
私は鋭い目付きでマザーをにらみ威嚇してみた。
◇動揺なんて、してしていませんよぉ~。
聞いただけで見てはいませんし……◇
「はぁ~……?
まあいい。
お前がじじいの言ってた時の主だな?」
「お姉ちゃん、マザー様にその言葉遣いは
マズいよ~!」
◇いいのですよ、オイロス。
わたし達は姿は違えどみな同じなんですから……。
わたしは貴方の言う通り、この時代の時の主です◇
「じゃあ、話は早い。私を早く先の時代に送ってくれ!」
◇もちろんそのつもりです。しかし、
その代わりとして貴方にお願いしたいことがあります◇
「お願いとはなんだ?」
◇貴方には閉じてしまったこの命の蛇口を開けることが出来る、アマザとハムザを呼んできて欲しいのです◇
「アマザとハムザって……どこかで聞いた名だな?」
「お姉ちゃん、オババが話してくれた昔話に出てくるひとだよ」
「そっか!
そいつらは今どこにいるんだ?」
◇アマザは二人ともよく知っているひとです。
それが誰であるか、訳あって私の口からは言えません。
村に帰ってよく探してみてください。
そして、ハムザ。彼は目に頼っていてはみつけることはできません◇
「じゃあ、どうすれば良いのだ?」
◇ハムザの居場所については、
アマザが知っているはずです。
彼女から聞いてください◇
「ボクとお姉ちゃんが良く知ってるって事はおばば一人しかいないよ!」
「確かにそうだな。
内容はわかった。
世話になった。
じゃあ、さっそくふたりを連れてくる!」
◇お待ちください◇
「なんだ?」
◇オイロス、貴方に渡しておくものがあります◇
マザーはそう言うと、煙突から蓮姫の
その玉は地を転がりオイロスの目の前に止まった。
「マザー様、これは何ですか?」
◇これは電気を帯びた電心球※です◇
「電心球?」
◇はい。この玉を相手に向かって投げてください。
「こいつを投げるとどうなるんだ?」
私がオイロスから玉を奪いとろうとすると、
透明なその玉はすり抜けてしまった。
「これはどういうことだ?」
◇そのテレパシーの玉は、本来アマザとハムザしか使えません。二人が連絡を取るために
作った玉なのです◇
「ボク達が普段会話している時投げてるクオラムの玉と同じですね」
「小僧、お前はキン玉を投げ合って仲間と話してたのか?」
「うん、……って違うよー!」
◇その玉は特別なんです。
時を、前世まで遡り会話できるのです◇
「前世まで遡る?」
◇そうです。
その玉には電子と陽電子が入っていて、
対生成と対消滅の作用で、
量子もつれ、量子間テレポートの原理を使って、
「そうかぁ〜、なるほどぉー!!」
オイロスの心の声
(お姉ちゃん、見た目は馬鹿で変態にしかみえないけど、勉強だけはできるのかな……)
蓮姫はオイロスのほうを振り向くとすぐに言葉を続けた。
「わからん」
『ズコー!!』』
蓮姫の予想の斜め下をいく言葉に、オイロスだけでなくマザー様まで盛大にズッコけた。
◇イタタ、やはりそうでしょうね。
少しでもあなたの知性に期待したわたしが馬鹿でした。
この時代とあなたが生まれた時代の言葉だけでは上手く意味を伝えられません。
だから、あなたよりずっと先の未来の言葉を用いさせてもらいました。
難解な説明をしてすみません◇
「それはもういい。
私がこの時代でしなければいけない要点だけ理解出来るように教えてくれ」
◇わかりました◇
「ところで、
さっきハマザとアマザと言ったな?
そのふたりは今はもうおらんのか?」
◇はい。死んだと言う表現は適切ではありませんが、いません。
命あるものはみな姿形を変えながら輪廻を繰り返していますから◇
「それにしても、どうしてアマザさんとハムザさんにしか扱えない玉をボクに渡すんですか?」
◇まずは、オイロス。
貴方にはその玉を拾うことができますか?◇
オイロスは私達の前で軽々とその玉を拾ってみせた。
「こうですか?」
◇そうです。
オイロス? 貴方はどうして自分がその玉を拾うことができたと思いますか?◇
「う~ん、ごめんなさい。わかりません」
◇貴方はふたりの間に授かった子供の子孫なのです◇
———————————————
↑【登場人物】
•
•オイロス
•マザー様
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