地下660kmの墓
「ボクが、ハムザとアマザの子孫?」
少年は驚きのあまり、呆然と立ちつくし
言葉を続けようとはしなかった。
◇驚くのも無理はありません。
あなたは二人の直系の子孫なのです。
この役目はあなた達二人にしか出来ません。
お願い出来ますか?◇
マザーは蓮姫達に頭を下げて頼んできた。
「わかった。
いろいろ時間がかかりそうだし、
小僧、早く行くぞ!」
「お姉ちゃん、待ってよ!」
◇最後に一つだけ……◇
「あ? 何だまだあるのか」
◇お二人ともまだ若いですし、
衝動が抑えられない気持ちはわかりますが、
TPOは考えてくださいね♪◇
「らしいぞ!小僧」
「うん……ん?
って他人事~!?」
「うるさい!
小僧早よせい。 置いていくぞ!」
「お姉ちゃん、待ってよ~!」
◇よろしくお願いしますね。
如来様。
どうか二人の道中をお守りください……◇
マザーと別れ、蓮姫達はまず来た道を村まで戻った。
村に帰ってきた蓮姫達はさっそくアマザを探すことにした。
「ねえ、お姉ちゃん?
マザー様はおばばに関係あるって言ってたよね?」
「ああ。
そう言えば言ってたな」
蓮姫達はおばばの家を訪ねた。
「ババア、居るか~? 入るぞ!」
蓮姫はお婆の返信を聞く前から
家に入りおばばの元に急いだ。
「お婆様、どうしたの? 大丈夫?」
お婆は横になり、うなされている様だった。
「あらま、二人とも戻って来たのかい?
あたしはもうこの年齢だ。
いつ死んでもおかしくないよ」
「ああ、そうだな」
「お姉ちゃん? そんな冷たい事言っちゃメー!」
蓮姫は年下の少年にお説教された。
「ごめんね、おばば。
マザー様の加護できっと元気になるよ!」
「ありがとね、オイロス」
「お婆……」
「小僧、早くアマザと話せ!」
「そうだったね。
え~と、確かこの玉を投げれば……」
「どうした小僧?
早く投げんか」
「出来ないよ!」
「はぁ~? この期に及んで出来ないだと~?
どうして?」
蓮姫は少年を問い詰めた。
「おばばに、しかも苦しんでるおばばに
玉を投げつけるなんて出来ないよ!」
「はぁー」
私はため息をついて続けた。
「小僧、お前なぁ~。
お前のこのみみくそがいっぱい詰まった汚ったねぇ耳は節穴か? おい!」
「お姉ちゃん痛い! 本当に痛いんだから
ボクの耳をつねらないでよ~!」
「ああ、悪い。
しっかし、マザーが言ってたよな?
これは時間を遡る玉だって。
遡る時間の長さはともかくとして、
少なくとも今寝てるババアには当たらんだろ?」
「それは……そうだけど……」
「じゃあ、はよやれ!」
「もう、わかったよ~!」
「ポン!」
少年は手加減をし、玉をゆっくりとおばばの体めがけてなげた。
「ピカー!」
次の瞬間、物凄い閃光で辺り一面真っ白になった。
しばらく経って目が慣れてくると、
目の前に一人の少女が立っているのがわかった。
「あなた達は誰?」
少女は目を丸くして蓮姫達にそう尋ねてきた。
「私は蓮姫。こいつは……キン玉を投げるのが好きなガキだ」
「お姉ちゃん、勝手にボクのこと悪く吹き込まないでよ~!」
「ああ、悪い」
「フフフ。
お二人とも本当に仲がいいんですね。
付き合っているんですか?」
「は! バ、バカを言うな!
誰がこんなキン玉とオナラしか取り柄の無いガキと……」
「ちょっとお姉ちゃん?
キン玉とオナラってどっちも勘違いだし、
それに取り柄どころかマイナスだよね?
ボクは取り柄全く無しそれ以下じゃん!」
「ああ、つまりそうだ」
「フフフ、面白い方達だこと」
少女は緊張を緩め笑ってくれたようだ。
「なあ?」
「何ですか?」
「さっそく聞くがお前がアマザか?」
「は、はい。
どうして私の名前をあなたが知っているんですか?」
「マザーというやつから聞いたんだ」
蓮姫は正直に答えた。
「そうだったんですか。
ところで、マザー様から聞いたってことは
私に何か特別な用があって来られたんですね?」
「おお! 察しがいいな。その通りだ」
「わかりました。マザー様からのご用とあれば何でも聞いてください」
「すまんな。
2つ用件があるんだ。
一つはあんたにある場所までついてきて欲しいんだ。
そして、もう一つはハムザって奴の居場所を知っていたら教えて欲しいんだ。
お願い出来るか?」
「う~ん、ちょっと待ってくださいね~」
アマザと言う少女は少し考えているようで
彼女が再び口を開くまで蓮姫達は待った。
「いいですよ」
「いいのか?
ハムザって奴の居場所もわかるのか?」
「はい、ハムザの居場所は多分……ですが」
「ハムザはどこにいるんだ?」
「私はハムザの帰りを待っているんです。
彼は今私達がいる場所よりも危険な場所に
移住先を探しに行ってくれているんです」
「その場所はどこだ?」
「この村の水流からはだいぶ距離が離れた
青くて固い岩の隙間です」
「青い岩の隙間?」
「私達は度重なる自然災害から逃げる為に
絶えず移住しながら暮らしています。
私達の仲間は最初は数が少なかったんですが、
ハムザのコピー達が無性生殖の増殖を繰り返している為に、
もうこの水域だけでは秩序の統制が出来ないんです。
だから、ハムザは私達の為に他に私達が住める地を探してもらっているんです」
「そうか~。すまん。難しくて全く意味が理解できん」
「お姉ちゃん、そんなはっきり言わなくてもいいんじゃない?」
「大丈夫ですよ。
そうですね。私の説明が下手でした。
つまり……」
「つまり、ハムザの元へは
この水域から離れて、
青い岩の隙間の水を泳いで行けばいいんですよね?」
「そうです!」
「ブイ!」
少年はどや顔でブイサインをした。
「調子に乗んな!」
「ポコ!」
「あ痛~! お姉ちゃん酷~い!」
「なあ、あんた。ええっと……」
「私ですか? アマザです」
「そう、アマザ。あんたもどっちにしろ
後で来てもらうことになるが
ハムザ探しについてきてもらってもいいか?」
「はい。私も丁度ハムザと話したいと思っていたところですし。一緒に行きます!」
「わかった」
こうして、蓮姫達三人は、村の水域を外れ、
ハムザを探しに向かった。
——————————————————————
↑【登場人物】
•
•オイロス
•マザー様
•おババ様
•アマザ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます