命の蛇口
ハムザが探索の道中発した言葉のボールをアマザが拾う。
そして、その後を蓮姫達はついて行った。
思った程の距離は無く、すぐに目的の場所に着くことができた。
そこは、キラキラと輝く青い結晶達が壁一面にびっしりと
ちりばめられた
幻想的な巨大洞窟だった。
「ハムザ!」
アマザが前の方をみて叫んだ。
「へ? 私には見えんが。
小僧、お前には見えるか?」
「マザー様からもらった玉を使ってみて!」
「そうだな!
大きく振りかぶってー、すぅ~」
「ちょっとちょっと!
お姉ちゃん何しようとしてんの?」
「え? 蓮姫さんちょっと待ってください」
蓮姫は少年とアマザと言う少女の忠告は無視し、
豪速球のプロ野球投手の如く
闘魂の一球を見えない的に向けて全力で解き放った。
「どりゃ~!!」
「ジャバーン!」
辺り一面に水が物凄い勢いで弾け飛ぶ音がした。
「…………」
「…………」
「やったか?
音速を超えた……か?」
「やったか? じゃないでしょお姉ちゃん!
ハムザさん死んじゃうよ!」
「私らにとってはハムザって奴もアマザも二人とも幽霊みたいなもんだから死なんだろ?」
「まあ、そうかも知れないけど、
あんまりだよ~!」
「ハハハ、すまんすまん」
「全く、ハハハじゃないでしょ!」
ハムザは気絶し目を回し、アマザに介抱されていた。
「なあ小僧、一つ聞いてもいいか?」
「なに~?」
「玉がタマタマに当たったときってルールは
アウトだよな?」
「ハァ~、違う。デッドボ~ル!
それ、わざと言ってるでしょ」
少年は呆れてそう言った。
暫くして、ハムザという少年が目を覚ました。
「俺、さっき物凄い痛みで意識を失ってしまったみたいだな。
何が起こったんだ?
それに……君たちは一体誰だ?」
「ハムザ、あのね、実は……」
アマザが状況を説明しようとしたので、
蓮姫はその口を手でかくした。
「実はな……え~と、
お前の頭上にお前よりも大きな岩の欠片が落ちて来そうになったんだ。
そして、そこにちょうど私達が出くわしたんだ」
「俺が?」
「おう、そうだ」
「お、俺は大丈夫だったか?」
「お前は、大丈夫だったんだけどな……」
「俺は大丈夫だったが、その先何だよ。
気になるじゃないか?」
「お前を助けようとした私の右手に欠片の一部が当たってな。
あ、あ痛ぁ~イタタタ」
私はハムザに右手を庇い痛そうな姿を見せた」
「おい、君! 手 大丈夫か?」
「心配するなよ、私の善意でしたことだ。
お前が心配する必要はない」
「そうはいかない。
君は俺の命を助けようとしてくれて怪我をしたんだ。
俺は君の傷の手当てとお礼がしたい。
させてくれ!」
「そうか~、
そこまで言うなら、私も本位では無いが、
それではお前も気が収まらんだろう。
よしわかった!
お前の家にある一番価値のあるものを貰っておくとしよう」
「ぐぃ~!」
「痛い痛い痛い痛い!
なにすんじゃ~小僧!
キサマ、私の頬をつねるなバカ野郎!」
「よしわかった!
じゃないよ全く!
ハムザさん、今この人が言ったの嘘だからね」
「嘘?」
ハムザと言う男は嘘と聞いてキョトンとしていた。
私はブチ切れた少年からこっぴどく説教された。
切れた少年は恐ろしい。
少年は二重人格に違いなかった。
「ところで、君たちは俺に何の用で来たの?」
私の代わりに少年がハムザにことの一部始終を説明した。
「成る程!
命の蛇口に行きたいんだな?
でも、君たち知ってるか?
命の蛇口を開けようとすると、
試されるんだ」
「試される? 何をだ?」
私はハムザのその言葉に食いついた。
「命の意味をらしい。
悪い。俺もそれ以上は知らない。マザー様に少し聞いただけだからな」
「命の意味か……。
少し前に誰かからその様な言葉を言われた気がするな。
まあ、よい。
大丈夫だ!その命の蛇口とやらに私達を連れて行ってくれ!」
「覚悟はいいんだな?
わかった。着いてこい!」
蓮姫達はさっそく、ハムザの案内で命の蛇口に向かった。
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今から約39億年前、蓮姫が飛ばされてきた時代は冥王代とよばれています。
生き物の進化の歴史でまだ分かっていないことの多い時代です。
その頃、地球に原始の海が誕生しました。
そして、海の一番底
深海には熱水噴出孔が生まれました。
熱水噴出孔は、地球の地中深くにあるマントルの熱で温められた鉱物の成分を含んだ海水やマグマ水を吸い上げ、深海にもたらしました。
熱水噴出孔からもくもくとたちのぼる煙の中では、
まれに有機物やマグネシウムなどの生命の材料を結び付ける電気化学反応がおこりました。
こうして、熱に耐性のある最初の生命
古細菌が生まれたのです。
驚くべきことに、彼ら地球最初の細菌達は既に
言葉でコミュニケーションをする私達人間と同じように
化学物質を野球ボールのように投げ会話のキャッチボールをして社会を作っていたのでした。
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↑【登場人物】
•
•オイロス
•ハムザ
•アマザ
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