命の蛇口
「ハムザ!」
アマザが突然、洞窟の中でそう呼びかけた。
「へ? 私には見えんが。
小僧、お前には見えるか?」
「ねえ、マザー様からもらった玉を使ってみたら見えるんじゃないかな?」
「そうだな!……えーい、
どりゃー!!」
蓮姫は、見えない的に向かって全身全霊を込めて玉を投げた。
「ジャバーン!」
水があたり一面に激しく飛び散り、なんとハムザは気絶していた。
「ちょっとソレやりすぎでしょ!」
「すまんすまん」
オイロスは蓮姫の奇妙奇天烈な行動に驚きを隠せなかった。
蓮姫は少し反省の色を見せたが、すぐにいつもの調子に戻った。
「なあ小僧、一つ聞いてもいいか?玉がタマタマに当たったときってルールはアウトだよな?」
「ハァ~、違う。デッドボール!
それ、わざと言ってるでしょ」
オイロスは呆れてそう言った。
しばらくして、ハムザが目を覚ました。
「俺、さっき物凄い痛みで意識を失ってしまったみたいだな。何が起こったんだ?」
「実はな……えーっと、お前の頭上にお前よりも大きな岩の欠片が落ちて来そうになったんだ。そして、そこにちょうど私達が出くわしたんだ」
蓮姫は、少し大げさに説明した。
「俺が?」
「おう、そうだ」
「お、俺は大丈夫だったか?」
「お前は、大丈夫だったんだけどな……」
蓮姫は、わざと痛そうに右手を抱えた。
「あ、あ痛ぁ~イタタタ」
「おい、君!手 大丈夫か?」
「心配するなよ、私の善意でしたことだ」
「そうはいかない。俺は君の傷の手当てとお礼がしたい」
「そうか~、そこまで言うなら、私も本位では無いが、それではお前も気が収まらんだろう。
よしわかった!お前の家にある一番価値のあるものを貰っておくとしよう」
「ぐぃ~!」
少年は、蓮姫の頬をつねった。
「痛い痛い痛い痛い!なにすんじゃ~小僧!」
「よしわかった!……じゃないよ全く!ハムザさん、今この人が言ったのぜぇ〜んぶ嘘だからね」
オイロスは、蓮姫の嘘を暴露した。
「ところで、君たちは俺に何の用で来たの?」
ハムザは、二人の話を聞いて、ようやく状況を理解した。
「命の蛇口に行きたいんだ」
蓮姫は、率直に言った。
「成る程!命の蛇口に行きたいんだな?でも、君たち知ってるか?命の蛇口を開けようとすると、試されるんだ」
「試される?何をだ?」
「命の意味をらしいんだが。
悪い。俺もそれ以上は知らない。マザー様に少し聞いただけだからな」
「命の意味か……。少し前に誰かからその様な言葉を言われた気がするな。
まあ、よい。大丈夫だ!その命の蛇口とやらに私達を連れて行ってくれ!」
「覚悟はいいんだな?わかった。
俺の後に着いてこい!」
こうして、蓮姫達はハムザの案内で命の蛇口へと向かった。
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今から約39億年前、蓮姫が飛ばされてきた時代は冥王代とよばれています。
生き物の進化の歴史でまだ分かっていないことの多い時代です。
その頃、地球に原始の海が誕生しました。
そして、海の一番底
深海には熱水噴出孔が生まれました。
熱水噴出孔は、地球の地中深くにあるマントルの熱で温められた鉱物の成分を含んだ海水やマグマ水を吸い上げ、深海にもたらしました。
熱水噴出孔からもくもくとたちのぼる煙の中では、
まれに有機物やマグネシウムなどの生命の材料を結び付ける電気化学反応がおこりました。
こうして、熱に耐性のある最初の生命
古細菌が生まれたのです。
驚くべきことに、彼ら地球最初の細菌達は既に
言葉でコミュニケーションをする私達人間と同じように
化学物質を野球ボールのように投げ会話のキャッチボールをして社会を作っていたのでした。
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↑【登場人物】
•
•オイロス
•ハムザ
•アマザ
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