心層世界1

蓮姫達はハムザの案内で上へ上へと泳ぎ、

マザーのいた場所の近くまで戻ってきたところで

ハムザととに足を止めた。


「おい、お前はハムザと言ったよな?

命の蛇口ってのはそろそろじゃないのか?」



「命の蛇口は物じゃないんだ。

ここ深海の底で起こる自然現象なんだ」



「自然現象だと?」

蓮姫が腑に落ちず首をかしげていると……。



「し~、黙って前をみてみな! 始まったぞ!」


蓮姫がそう言われるままに前を見てみると、

海の底に真っ白な雪が降ってきた。



「ねえ見て、お姉ちゃん!

白くて綺麗だね!」

少年はそう言って無邪気にはしゃいでいた。



「これは、雪……なのか?」



「雪? 何のことだい?

この白い粒はみんな、マリンスノー。

プランクトンの死骸さ」



「プランクトンだと?」



「マザー様が言うには、プランクトンは俺たち

古細菌よりも後の未来に誕生した生物らしいんだ」



「じゃあ、私達はこの海に漂う未来の幽霊を見ているわけだな?」



「そういう事だ」


マリンスノーの雪は次第に勢いを増し、

蓮姫達の視覚を物凄いスピードで白一色に染めている。



「眠い……、すゃ~すゃ~」



「お姉ちゃん大丈夫? ねえ、……」


(私を呼ぶ少年の声が聞こえる)



蓮姫は、視覚が白一色に変わると同時に

意識が徐々に遠のいていくのを感じた。




「………」


「………ザ」



「なあ、アマザ! 大丈夫か? しっかりしろ?」


「ん? 今度は誰だ?

私は眠いからほっといてくれ」


◆ごめんなさい、ハムザ。

私、急に意識を失っちゃって……◆


(あれ? 私の意識とは関係なく身体が起きてしまったぞ。

それに、勝手に喋っている?


しかし何故だ。全く体が私の思う通りに動かん。

えいくそー!)



「アマザ。君がマザー様の巫女だから神託

を貰う為によく気を失うことは理解してる。

自分を責めるなよ」



◆ありがとう、ハムザ◆



(アマザだと? さっき出会った少女の名前ではないか?

どういうことだ?


どうやら私の意識がアマザという少女に乗り移っているらしい)



蓮姫はアマザの体を使って、少しずつではあるが、自分の意志で発言したり

行動したりできるようになった。

蓮姫はマザー様を祭る社の巫女アマザとして、神主のハムザと一緒に社で暮らす毎日を送っていた。



「あの~? ここでお祈りさせてもらっていいですか?」


ある日、

蓮姫が暮らす社へ

見るからに幼く、オイロスにそっくりな男の子が社にやってきた。


——————————————————————

↑【登場人物】

蓮姫カムラ

•オイロス

•ハムザ

•アマザ

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