壁の向こう側

「小僧。この小さな穴に突き刺せる丈夫な棒か何か持ってはいないか?」


「ボクそんなの持ってないよ……。

あっ! 待って!」

少年は心当たりがあるようだ。


「ボク持ってるよ!」


「どれだ? 私に貸せ!」


「貸せないよ。

これはボクが両親からもらったものだし

貸したり出来ないものだから」



蓮姫は、片手を少年の手に添えて一緒に壁の穴を広げ、最奥を目指した。

「あ? 入った!」

少年がそう叫んだ瞬間、

蓮姫達は物凄い水圧とともに、

一瞬意識を失った。


蓮姫が意識を取り戻した時、

少年は既に意識を取り戻していて、

ぼろぼろになった先の尖った石灰石のナイフを

大事そうに見つめていた。

そして……、

蓮姫が前を向くと、

すぐ目の前には

いびつな形をした大きな煙突が噴煙をあげながらそびえ立っていた。




「小僧。この小さな穴に突き刺せる固くて丈夫ななものを持ってはいないか?」


「ボクそんなの持ってないよ……。

あっ! 待って!」

少年は心当たりがあるようだ。


「ボク持ってるよ!」


「どれだ? 私に貸せ!」


「貸せないよ。

これはボクが両親からもらったものだし

貸したり出来ないものだから」




一方その頃、マザー様は。


「遅いわねぇ~。

いくらなんでも、二人がわたしを訪ねて来てもいい時間なんだけど……。

そうだわ!

この聴き耳の玉をあのこ達の元に送ってみましょう。えい!

あら、いやねぇ~。狙い外れちゃったわ。

まあいいわ」


◆……だ……だよ! ……ぜだ?◆


「あら、もう届いたのね。

どれどれ?」


◆じゃあ、お前がやるんだ。

出来るか?◆


◆うん、やってみる!◆


◆すごい立派なものではないか!

お前ガキのくせして、見かけによらずいいモノ持ってるな!◆


「ブ、ブハァァァァァー!!」

※淑女が驚きのあまり、

勢い余ってジョジョ顔で鼻血を出しながら

口に含んだ飲みかけの紅茶を吹き出す音です。


◆見かけによらずは一言余計だよ!◆


◆ああ、すまんかった◆


◆お姉ちゃん?◆


◆何だ?◆


◆お姉ちゃんが屈んでくれないとの穴に入れにくいよ!◆


◆ああ、すまん。

これでいいか?◆


◆うん、大丈夫◆


「え? え?

ちょ、ちょっと何やってるの? あの二人……?」


◆どう? お姉ちゃん。

ちゃんと入ってるかな?◆


◆大丈夫だ!

お前、顔がきつそうだな?◆


◆穴が小さくてね、なかなか奥まで届かないんだ◆


◆諦めるな!

私も手伝うから泣き言言わず頑張れ!◆


◆うん!◆


「な、な、なんてハレンチな~!」


◆お姉ちゃん?

一番奥に届いたよ!◆


◆本当だ! やったじゃないか。

あとはな、何度も抜き差ししながら

穴を広げてくれ◆


◆お姉ちゃん、こうかな?◆


◆バカ! そんな乱暴に横に掻き回すな!

外壁を傷付けるだろうが!◆


◆ポコ!◆


◆痛っ!

ごめんなさ~い◆


◆あ~もう。らちが明かん。

私が手をかす!◆


「あ・い・つ・ら~!

こんな真っ昼間からどさくさに紛れて、

しかもあんな目立つところで……、

独り身で上とか下とかいろいろ寂しいわたしに

男女の夜の営み見せつけちゃってくれてるわけ~!?

全く信じられな~い!

ふん、もういいわ。

聴き耳の玉 戻ってらっしゃ~い!」




蓮姫達の場面に戻る。


蓮姫は、片手を少年の手に添えて一緒に壁の穴を広げ、最奥を目指した。

「あ? 入った!」

少年がそう叫んだ瞬間、

蓮姫達は物凄い水圧とともに、

一瞬意識を失った。


蓮姫が意識を取り戻した時、

少年は既に意識を取り戻していて、

ぼろぼろになった先の尖った石灰石のナイフを

大事そうに見つめていた。

そして……、

蓮姫が前を向くと、

すぐ目の前には

いびつな形をした大きな煙突が噴煙をあげながらそびえ立っていた。


——————————————————————

↑【登場人物】

蓮姫カムラ

•オイロス

•マザー様

擬人化の際の見た目は20代前半くらいの若い美人の女性ではあるが、実年齢は某吸血鬼の年齢をゆうに超える。


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