アマザとの約束


「そんな無謀な!」

アマザは、ハムザの提案に顔をしかめた。

「一人で行くなんて、とんでもないわ!」


「俺が一人で行って、安全か確認する。そうすれば、みんなも安心して行けるだろ?」

ハムザは必死だった。

「アマザには、大丈夫だって確信があるんだろ?だったら問題ないはずだ」


「そうだけど…でも、一番危険なのは私じゃないの?」

アマザは眉をひそめた。


「アマザは巫女だよな?

村の人たちはアマザの言葉に頼っている。もしアマザがいなくなったら、みんなが困るだろ?」

ハムザは、アマザの肩に手を置いた。

「だからお願いだ、アマザ。俺を助けてくれ」


「でも、私もマザー様の夢を見たよ!」


「俺はアマザみたいに村を救ってきた実績なんてない。俺の見たのはただの夢かもしれない。だけど、アマザは女の子だ。女の子を危険な場所に一人で行かせるわけにはいかない」

ハムザは、鋭い眼光でアマザを睨みつけた。


「ハムザ……」

アマザは、複雑な表情でハムザを見つめた。


「だからお願いだ、アマザ。俺を助けてくれ。

マザー様にお願いして、俺が無事に戻れるように」

ハムザは、再びアマザに懇願した。


「ハムザって、いつも自分勝手!誰かのためにって言いながら、結局は自分のことしか考えてないじゃない!」

アマザはつい感情的になり大きな声を上げた。


「ごめん…アマザ」

ハムザは、うつむいた。


「もう、知らない!」

アマザは、踵を返してその場を去って行った。


「アマザ……」

ハムザは、叫びそうになったが、すぐに言葉を飲み込んだ。



しかし、しばらくしてアマザは戻ってきた。

「…わかったわ。でも、絶対に無事に戻ってきてよね」


「絶対に戻ってくる。約束する」

ハムザは、安堵の表情を浮かべた。





一方その頃蓮姫は。


「マザーからの啓示だって!」

蓮姫は、老婆の言葉にハッと我に返った。


薄暗い部屋の中で、老婆の目は虚ろに輝いていた。

「どうしたんだ、ババア!?」

蓮姫は、老婆のそばに近づいた。


「みんなを集めて、マザー様のお言葉を伝えなきゃいけないんだ。旅の者さん、ごめんね。

この話はまた今度にするよ」

老婆は、かすれた声でそう告げた。


すぐに村人たちが集まってきた。

静まり返った部屋に、マザー様の澄んだ声が響き渡る。

「天上界への道が開かれた。私の夢を見た者は、明日正午、この場所に戻りなさい。私は、君たちを再び天上へと導く」


その夜、蓮姫は老婆の家で泊まることになった。

地下世界は、光も色もない静寂な空間だった。蓮姫は初めての場所で緊張しながらも、いつの間にか眠りについていた。



翌朝、蓮姫は異変に気づいた。


いつも穏やかに流れていた水が止まっている。


そして、老婆は動かなくなっていた。


冷たい体に触れ、蓮姫は絶望感に包まれた。

その時、蓮姫の耳に声が響いた。


◇蓮姫さん、私の声が聞こえますか?◇


「誰だ!?」

蓮姫は、直ぐに辺りを見回したが何も見えなかった。


◇私は、この時代の時の主、マザーです。あなたのことは、薬師如来から聞いています◇


「あのジジイか…」

蓮姫は眉をひそめた。


◇あなたにお願いがあります◇

マザー様の声は、優しく語りかけた。


「お願い?なんだ?」

蓮姫は警戒しながらも、マザー様の言葉に耳を傾けた。


◇オイロスと一緒に、私の元に来てください◇


「ジジイの条件か。そうすれば、元の時代に戻してくれるんだな」

蓮姫は条件を提示した。


◇はい。ただし、どの時代に帰るかは決められません◇


「わかった。どうやって行けばいい?」

蓮姫は既に決意を固めていた。


◇熱さに耐えながら、上を目指して進んでください。私は、ずっとあなたたちのことを待っています◇


「熱さ?どれくらいかかるのか?」

蓮姫は不安を感じた。


◇あなたについては薬師如来の加護があるので、大丈夫でしょう。

だから、オイロスのペースに合わせて進んでください◇


「私一人で行くわけにはいかないのか?」

蓮姫はもう一度確認した。


◇オイロスが必要です。彼らは、元々空が見える地上の世界に住んでいました。

しかし、灼熱の溶岩や火山ガスなどによって環境が激変して以来、

ずっとこの地下世界に逃げ込んで暮らしてきたのです。

しかし、今ようやく地上の環境は落ち着きました。

元の世界に戻れる時が来たのです。

だから、あの男の息子のオイロスに、上の世界がもう安全だということを知らせたいのです。

あなたと一緒に彼を連れてきてくれませんか?◇


「ったく、わかったよ。行くよ」

蓮姫は、深呼吸をして、未知の世界へと足を踏み出した。



——————————————————————

↑【登場人物】

•ハムザ

•アマザ

•マザー様


蓮姫カムラ

•オイロス

•おババ様

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