思い出作り

6億年前の山登り


「わぁぁ〜!」

「す、すげぇー!!」

二人の目の前には、広大なパノラマが広がっていた。

カンブリア紀の澄んだ空気の中、エメラルドグリーンの海がどこまでも続き、その彼方には、生命の息吹を感じさせる深い緑の大地が広がる。真夏の太陽が、雲ひとつない空から降り注ぎ、大地を黄金色に輝かせている。


「す、すごいっし……」

ハルキは、息をのんで見入っていた。

ハルキが生まれた水中の世界とは、全く異なる光景。生命があふれかえり、息づいている。


「だろ?ハルキ、お前が生まれた場所とは比べ物にならないだろう?」


「うん♪」

ハルキは、満面の笑みを浮かべて言った。


「ここも悪くないよな」

蓮姫は、ハルキの横顔を見ていると、かつて一緒に遊んだ親友のアミュリタの姿が重なった。


もし、あの時喧嘩別れをしていなくて、今も一緒に遊んでいたなら、今頃、二人はどんな未来を夢見ていたのだろう?

そんなことを考えながら、蓮姫は複雑な気持ちになった。


「カムっち、もしかして泣いてるっしか?」


「う、うっせぇ!

ちげえよ……」

蓮姫の涙は悲しみから出てきたわけではなかった。

ただ、新しい世界の奇跡を見て、未来への希望を感じている。そして、あの日アミュリタと交わした約束を思い出したのだ。


「カムっち、あの遠くに見えるのは、一体なんだっし?」

ハルキは、遠くの山脈を指さした。

「あれか?あれは、きっと私たちの新しい冒険が始まる場所さ!」

蓮姫は、そう言って、力強く拳を握りしめた。


二人は、山頂でしばらくの間、夕焼けを眺めた。

そこには、永遠に続くような、静かな時間が流れていた。

そして、二人は心に誓った。この新しい世界で、たくさんの思い出を作ろうと。




※ケアリー・ジョーブの「Healer」を聴きながら光景を想像してもらうと嬉しいです。

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