【追憶】碧眼の少女

カムラは鳴き声のするところへ近づいて行くうちに、

その声が鳥の鳴き声では無いことにすぐに気が付いた。


それは……、

さっき森道でみかけた

少女が泣いている声だった。


(あの子、森の中でどうして一人で泣いてるのかな?

周りにお父さんとかいなさそうだし

迷子になったのかなぁ?)


「ね、ねえ、あなた大丈夫?」

まだ幼いカムラでさえも、

自分と年頃の近い小さな女の子が

目の前で泣いている姿を見過ごす

ことはできなかった。


「あ、あ、あなた……誰?」

泣いていた少女はいったん泣き止むと、目をパッチリと開き、驚いた表情でカムラを見回していた。


「わ、わたし?

わたしはカムラって言うの。

あなたの名前は?」


「私?

私はアミュリタ……」


カムラはおばあちゃんから言われていた決まりをこのとき破ってしまった。

カムラがおばあちゃんに言われたこと、それはこうだった。


『カムラ?

おばあちゃんの話聞いてくれるかい?』


『なあに、おばあちゃん?』


『実はね、今年から年に何回か

私達村人とは顔つきが違う白い肌の人達がこの村に来ることがあるらしいんだけど、

来た時には絶対に関わっちゃいけないよ。

見つからないように隠れるんだよ。

いいかい?』


『おばあちゃん?

それはどうして?

どうして関わっちゃいけないの?

ねえ?

どうして隠れなきゃいけないの?』


『いいかい、カムラ。

彼らはね、私達村人とは住む世界が違う人達なんだ』


『どうして?

同じ人間でしょ?

なのに、どうして関わっちゃいけないの?』


『それはね……、

カムラがもう少し大きくなったら

おばあちゃん教えてあげるね』


『うん、わたし覚えてるから

絶対教えてよー!』


『はいはい』


(わたし、おばあちゃんの言い付け破っちゃったな……)



「ねえ?

カムラちゃん?

聞いてる?」



「ご、ごめ~ん。

わたし考え事してた、アハハ」


カムラは改めて目の前の少女の姿を舐めるように見回した。

自分達村人の中にはいない

目鼻立ちがすっきりした綺麗な顔、

白い肌、綺麗な金髪の髪、

透き通るような青い碧眼の瞳、

幼いながらもスタイルのいい体型。


カムラがこの日出会った女の子は、

カムラが初めて感じた

不思議な印象の少女だった。


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