デルタ達の父親、そして明かされる様々な謎

「なあ、お前はデルタって呼んでいいか?」


「なによぉ〜!

あんた、まだあたしに言い足りないことがあるわけ!?」

デルタは涙でくしゃくしゃになった顔をこれ以上見られまいと、蓮姫に背を向け応えた。


「カムっち、ちょっと言い過ぎー!!

デルタが可愛そうじゃんかー!」


「ハルキ、いいかぁー?

これはとても重要なミッションで、お前にしかできないことだからよーく聞けよぉお!?」


「え!? でへ、でへへへへww

アタシにしかできないことぉ?

いいよ! 聞く聞く!

だから早く教えてー!」


「お前のその薄ら笑い、不気味で気持ち悪りぃーんだよ!

私に触れるな、さわるな、近寄るな。

そして、お前は黙ってろ!

いいか?」


「いいよ。ふーんだ!

さもアタシのものわかりが悪いから釘を刺しとくみたいなその態度マジあり得ないんすけどー!」


「なあ、デルタ?」


「アタシはムシかいっ!!」


「だから何よー!?」


『ほらっ!!』

蓮姫はそう言うと同時に、突然デルタの方向に向かってある光るペンダントを投げた。


『わっ! わっ! ちょっとー!』

デルタは自分の手元に狙いを定めて投げられたペンダントを、慌てつつもなんとかキャッチした。


「デルタ、ナイスキャッチ!」


「ナイスキャッチじゅないわよー!

何でいきなりペンダントなんてあたしに投げつけてくるのよー!?」


「そのペンダントにはな、博士がお前等三人に遺したビデオレターが入ってる」


「ビデオレター?

本当のパパの?

でも、どうしてあんたがそれを、そしてそのペンダント!

ナブラやラプラシアンが持っていたペンダントを持ってるのよ?」


「それはな、ネイピアっていう高飛車なゴスロリ女が私に預けたものなんだ。

デルタ、お前にあった時に渡せってな」


「どういう事!???」


「ゴスロリ女の事は私も知らん。

それよりそのビデオレター、早く観てみろよ?」


「ふん。あんたに言われなくてもわかってるわ!」


[[ナブラ、デルタ、ラプラシアン。

今まで訳あって話せなかったパパを許して欲しい。

実はね、ナブラとデルタは父さんと妻の姉弟じゃないんだ。

ラプラシアンくんも含めてお前達三人はこの星の連星にある研究所で私が研究員達と作り上げた分子生物学の遺伝子ロボットとして生まれたんだ。

これは、君たちが今生活している時代より先の未来の話なんだけどね。

私は研究所で君たちを作った時に不幸な事故で妻と娘、大切な家族を失ったんだけど、その原因を本当は関係の無い君たちに押し付けてしまったんだ。

そして、私は君たちを殺そうとした。

だけどね、ペンダントの量子タイムトラベルの力を使って君たちを過去の連星に逃し、君たちを殺そうとまでした私の気持ちに共感し励ましてくれた女性がいたんだ。

それは私の研究所の研究員の女性で、ナブラやデルタのママになってくれている人だよ。

妻は教えてくれたんだ。

過去の私が今の君たちの時代に現れて嫌がらせをすることを。

そして、恨みを買った私が君たちの誰かに殺される数パターンの悲しい結末もね。

それから、私は妻と一緒に考えたんだ。

みんなが幸せになれる結末をね。

それはね、今の私と妻が……]]


[[ちょっとあなたー!?]]


[[ごめん。 今妻が私を呼んでるみたいだ。

ただ、これだけは言わせてほしい。

ナブラ! デルタ! ラプラシアン!

今までお前達に酷いことをやってきて、本当に……すまん、すまん]]


「パパ……」

デルタはホログラムのビデオレターの中で

顔をくしゃくしゃにしながら泣き、頭を下げる父親の姿に驚きを隠せなかった。


「ほっんと、パパってサイテーよ!

今まであたし達三人がパパにやられたことを考えてよ! パパの為に絶対に泣いてやるもんですか!」


ビデオレターの再生が終わった後もなお、

デルタは父親の形見のペンダントを片手で包むように握り、そして嬉しそうにみつめ続けていた。


「なあ、デルタ?」

蓮姫からの問いかけによって、デルタはやっと我に返った。


「なに?」


「さっきはついカッ!っとなって殴ったりしてごめんな……」


「はぁー。

あたしだってわかってるわよ〜♪

あれは、あんたがワガママを言うときの幼い子供以上に聞き分けが無かったあたしの事を思ってしてくれたことなんでしょ?

そうなんでしょ?」


「おっ!

デルタ〜。お前けっこう人を見る目あんじゃん♪」


「ハ〜イ!

嘘松、嘘松〜!

違うよー!

カムっちはそんなこと考えないよー!

知能ゴリラだから、ただムカついたら殴る。

それだけだよー♪」


「ちょ、ハルキテメェェー!!

ツラ貸せ? このヤロー!!」


「カムっち痛い痛い痛い!」


「ねえハルキさん?

誰の知能がゴリラ並みだってぇ〜?

ねえええー!!??」


「カムっち目が怖い!

それに腕折れた! マジマジ! 本当に折れた〜!」


「クスクスww

ハハハ、ハハハハハハww」

蓮姫とハルキの茶番にデルタは腹を抱えて大声で笑いだした。


「なんだ、デルタ?

お前そんな笑顔で笑えるんじゃねーか」


「ハハハハハ、あ〜苦しー!」


「アハハ、アハハ!」


「ちょっと、カムっちまで笑いだしてぇ。

えーい、こうなったらアタシも負けずに笑うよー!

アハハ、ハハハ」


デルタは笑うようになった。

そのデルタの笑顔は、悲しみのどん底からでも幸せは必ずあることに気付けたからだ。

デルタが怒りに任せて父親を殺したことはデルタの世界線では紛れもない事実であり、デルタが歩む新しい世界線でも決して無くなること無い。

そして、ナブラとラプラシアンを死なせてしまった過去も巻き戻すことは出来ないのかもしれない。

それでも、デルタは救われたのだ。

喜びだけじゃない。悲しみだって大切な誰かと一緒に分かち合っていけるのだから。


「それで、デルタ?

お前はこれからどうする予定なんだ?」


「え〜と……」


「そのことなんだけどねー」


「ハ、ハルキ!!

お前、ハルキなのか??」


「そだよー!

カムっち半分正解。そして半分間違い」


ハルキの体は、機械のボディーに変わっていた。


「お前、その体……どうした??」


「アタシの本当の正体はねぇ〜、

デウス・エクスマキナ。

地球の歴史に悪影響を及ぼしかねないイレギュラー因子の一つ 超越因子 を追ってカンブリア紀の時代にやってきた未来特殊潜入調査機体のインターフェースの1体だよ」

















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