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薄暗い洞窟の奥にひっそりと佇む古びた社。静寂に包まれた空間に響くのは、水滴が滴り落ちる音だけだった。
「こ、これ? さっきここに来る前にちょっと転んだだけだよ」
少年は体中が擦り傷と打撲、あざだらけで、その姿は痛々しかった。
蓮姫は少年の震える肩を抱き寄せて言った。「嘘言うな!!」
「お姉ちゃんには関係ないよ!!」
少年は蓮姫の手を振り払った。
「ごめんなさい。僕もう今日のお祈り済ませたから帰るね。さよなら」
「おい、ちょっと待て」
しかし、少年は振り返ることなく、ただ逃げるように社を出て行った。
(あいつの顔……、ただ事じゃないな、これは)
翌日、蓮姫は少年の家を訪ねた。そこには古ぼけた木造の家がひっそりと佇んでいた。近所の大人に話を聞くと、少年は学校でも孤立しているらしい。
学校の校庭。子供たちの笑い声が響く中、一人の少年がじっと壁にもたれていた。それが、蓮姫が探していた少年、アキアだった。
「おい!アキア!お前学校終わったらすぐに帰るし、お前のそういう態度が気にいらないんだよ!」
アキアは、いじめっ子たちに囲まれ、肩を震わせていた。
誰かが茂みの陰からその様子をじっと見つめていた。
「早く帰らなきゃ。お願い、早く帰してよ!」
「こいつ変ってるよな。マザー様の祭りでもないのに毎日社でお祈りしてるらしいし~」
「え?それホントか?だっせぇ~!」
「ホントに僕、帰らなきゃいけないの!そうしなきゃママが……」
「おい、みんな今の聞いたか!?こいつ、ママだってよ~!ママでちゅか~?ホントにアキアきゅんはおこちゃまでちゅね~?」
アキアの必死な声が、蓮姫の心を痛めた。
「もう!」
ついにアキアは堪え切れなくなり、いじめっ子の一人を突き飛ばしてしまった。
「あ!こいつ……!みんな今見たよな?こいつ今俺の胸ぐらつかんできたよな?」
いじめっ子たちは一斉にアキアを取り囲み、殴ろうとした。
まさにその瞬間だった。アキアの背中から聞き覚えのある声がしたのは。
「なぁ~お前ら?お前らにとって母親を敬って大切にしている奴はみんな、
いじめっ子たちは、蓮姫の迫力に押され、言葉を詰まらせた。
蓮姫は、いじめっ子たち一人ずつに軽いゲンコツをして追い払った。
「あの~お姉ちゃん?」
「ああ、小僧。いじめっ子共は追い払ったぞ。よかったな!」
「え~と……」
アキアは複雑な表情で蓮姫を見上げた。
「どうした?お前さっきからどうも釈然としない顔してんな?あ、そっか!私が下僕って言ったことだな?」
「違うよ~!!ま~それも無くは無いけどさ、どうして僕までげんこつ貰わなくちゃいけないのー!!」
「アハハ、わり~わり~♪」
蓮姫はアキアの言葉に笑い、頭を掻いた。
「まあ、助けてもらえたからいいんだけどね。ありがとう、お姉ちゃん」
「おうよ!ところでさ、お前いろいろ家庭に事情あるんだな?私に聞かせてくれないか?」
「う……うん」
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↑【登場人物】
•アマザ《蓮姫》
•ハムザ
•アキア
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