「こ、これ? さっきここに来る前にちょっと転んだだけだよ」



「嘘いえ!!」


少年は体中が擦り傷と打撲、あざだらけで、その姿を見ているだけで痛々しかった。



「お姉ちゃんには関係ないでしょ? 

僕、もう今日のお祈り済ませたから

もう帰るね! さよなら!」



「おい! ちょっと待て! 小僧!」

蓮姫の引き留めも聞かず、

逃げるように去っていく少年はもうみえなくなっていた。


(あいつの顔……、ただ事じゃないな、これは)






更に次の日


「おい、アマザ? どこかいくのか?」



「ハムザ悪い、ちょっと急用があってな、

夕方までには戻るから

それまで社の番、お願いできるか?」



「ああ、わかった」


私は社を出ると、家の外にいる大人に聞き込みをして少年の事を聞いて回った。



「少年の家はあそこか!


あそこが学校だな?」






『おい!アキア!

お前学校おわったらすぐに帰るし、

そういう態度がきにいらないんだよ!』


「ガキの声がする……、

あっちか?」

蓮姫は、みつからないようにそっと近づき、聞き耳をたてた。



『早くかえらなきゃ! お願い、早く帰してよ!』



『だからお前な~、ホントおうちが大好きだなぁ。

いい加減諦めろよ!」



『こいつ変ってるよな。

マザー様の祭りでもないのに毎日社でお祈りしてるらしいし~』



『え? それホントか? だっせぇ~!』



『ホントに僕、帰らなきゃいけないの!

そうしなきゃママが……』



『おい、みんな今の聞いたか!?

こいつ、ママだってよ~!

ママでちゅか~? ホントにアキアきゅんはおこちゃまでちゅね~?』



『違うよ! ボクはママのお手伝いをしなきゃいけないの!』



『こいつ何かにつけてママが、ママが~だってよ~?

だっせぇ~アハハ!アハハ!』




(小僧のあの必死な目……、

どうやらマジで母親を心配しているっぽいな。


あいつら~! 少年に対して一方的に好き放題言ってやがる!

私はああいうの一番すかん!)




『もう!』



『あ! こいつ……! 

みんな今見たよな?

こいつ今俺の胸ぐらつかんんできたよな?』



『あ……見た見た!』



『なにしやがる、この野郎!』

いじめっ子の大将が拳を振り上げると、

少年は目を瞑りみがまえた。



「痛っ……くない。あれ?」




「てめえらなぁ~!

さっきから遠目から大人しく見ておけば、

私の下僕になナメた真似してくれるじゃないか?」

蓮姫は拳の関節をならしながらいじめっ子連中全員を睨みつけた。



「……?」



「チミかぁ~? 大将は? はぁ~?」



「ブルブル」

大将らしき大柄な少年は無言で首を左右に振った。



「そっか~!

ウフフ。私はな、みんな悪いと思うんだ~。

それに、めんどくせぇ~の嫌いだし~!! 

お前らまとめて死ね!!


ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!


え~と、少年は悪くない……んだよな確か。

え~い、めんどくさい、

ゴン!」



「痛てぇ~!」



「なぁ~お前ら?

お前らにとって母親を敬って大切にしている奴はみんな、

母親依存マザコンと同類で

バカにしてもいいって言うことなのか?

言ってみ?」



「…………」



「は? ちゃんと答えろや!」



「い、いいえ……」



「そうだろ?

もし次も、お前らがこいつをバカにしたら、


私は今度は年下の子供だからって手加減なんてせん!

本気でぶちのめす!

いいか?」



「は、……はい。


お、覚えてろ~!」

いじめっ子達は去って行った。



「あの~お姉ちゃん?」



「ああ、小僧。いじめっ子共は追い払ったぞ。

よかったな!」



「え~と……」



「どうした? 

お前さっきからどうも釈然としない顔してんな?


あ、そっか! 私が下僕って言ったことだな?」



「違うよ~!!

ま~それも無くは無いけどさ、

どうして僕までげんこつ貰わなくちゃいけないのー!!」



「アハハ、わり~わり~!」



「まあ、助けてもらえたからいいんだけどね。

ありがとう! お姉ちゃん」



「おうよ!

ところでさ、

お前いろいろ家庭に事情あるんだな?

私に聞かせてくれないか?」



「う……うん」


——————————————————————

↑【登場人物】

•アマザ《蓮姫》

•ハムザ

•アキア

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る